倍速だとか切り抜きだとかの話

コスパよりタコパしたい

　なんかこう、昔はコスパコスパと言ってて、今はタイパタイパと言ってる。
　そのうち感情を掛ける事のパフォーマンス＝エモパとか、思考を掛けるパフォーマンス＝ブレパとか言う言葉が出てきそうよね。

　メシにコスパを求めるのは一定の割合は良いけど、やっぱり美味さの為なら、ある程度コスト掛かっても体験優先すべきみたいな意識になって行ったし、多分、タイパも変わっていくのかなぁと言う仄かな期待はある。

　それはそれとして、昨今見掛ける「フリーレンを理解出来ない人」の話が、（例の批判がどういう文脈であれ）タイパの文脈で語られているきらいがある。
　或いは、思考のリソースを割いていないとか、様々な分析があって興味深い。

　しかし、「物語を理解する」ことをパフォーマンスと理解するのであれば、「理解できていない」はパフォーマンスがゼロの状態である。

　思考のリソースや時間を如何に上手く節約したところで、パフォーマンスがゼロであれば、タイパだのブレパだのと言うものはゼロと言える。
　そんな成果ゼロの状態を賢いとか思っているのは、何と言うか、損でしかないのだけど。つまり、倍速再生した時間分が丸損ではないだろうか？

　よく言われることだが、ファスト映画百本見るよりも、一本の映画を十回見た方がオタクとしての素養が磨かれるなんて話がある。
　まぁ、「オタクはなっていた」ものなので、一本の映画を十回見ようという意志で見ているのではなくて、好きなものに集中していたらそうなったと言う事かもしれない。

　と言うか、最近は「オタクになる」と言う事が重要視されている気がする。
　これ多分、全く興味ないのに教養を身に付けようって人と似ている。
　写真撮影可能な美術館に行くと、作品と説明の写真を一つずつ撮って碌々鑑賞もせずに帰っていくと言う人を、本当によく見る。
　或いは説明だけを読んでいて作品は流し見なんて人も多い。
　これは多分、ファスト映画を見る映画オタク（もどき）みたいなものだろう。

　そう言う意味で、息苦しい時代になったものだなと思う。
　取り敢えずの話題について行くために、倍速再生で人気作を追いかけていき、なんとなく薄っぺらいネタだけを消費して生きていくのだ。
　別に友達と話していてやってないゲームや、見てないアニメがあったっていいじゃないかと。

　ぶっちゃけ言えば、昔の「誰もが同じ番組を見ていた」と言う時代があまりにも長すぎたのだと思う。
　もっと個性を磨いて、自分の好きだと言えるものを見つけよう。

　ただ、そう言う話の中で、何かに特化すると、そのジャンルの中の流行りを追いかけてしまうようになるのだが……

　人間はつくづく社会的な生き物だ。

追記

　倍速再生してから等速再生するって話が出て来たけど、1/2n+m時間書けるなら、最初からmに絞り込んで、m時間見たほうがコスパよろしくないですか？

　倍速再生することで、真に見るべき作品を選別するって言うけど、例えばフリーレンがその候補から外れてしまったのなら、その選別方法が失敗だったって事だしなぁ。

　倍速再生一話見る時間しか、作品を選別する時間がないっていうのなら、僕は15分だけ等速で見るわってなるし。

　何でもかんでも時間がないって言って、ケチケチと毎日数分ばかりの時間をケチるけど、毎日本当に時間を有意義に使ってる？　さぞかし情報密度の高いコンテンツに触れてるし、それを余す所なく入手しているんだろうねと。

　これはもう愚痴だし、Youtubeに限らず、テレビやその他のあらゆる映像コンテンツ、もっと言えば論文発表や講演にも言えることだが、テキストより情報密度ののないコンテンツはそもそも存在意義がない。

　テキスト読めば五分で済む内容を、三十分のコンテンツにして、それを倍速再生して、挙げ句理解度三割って、もうマジで意味がわからん。
　タイパが倍になったんじゃなくて、三倍の時間掛けて三割のパフォーマンスしか出てないなら、タイパは六分の一なんだと。

　そもそもコスパって言葉が流行り始めてた時から言うのだが、なんで同じコストや時間でパフォーマンスを上げるって話にならないんだよ！
　ここの飯は不味いけど安いって言うのはコスパがいいんじゃなくて、金がかけられないってだけだ。コスパがいいってのは、倍の値段出す価値ある十倍グレードの高い飯の事だよ！

　コスパだタイパだって言って、単に時間を使えないだけ、単に金がないだけだろ。
　それを単に賢ぶって言ってるだけで、本質的に貧すれば鈍するってだけじゃないのか？

　賢く生きることを目的としているならともかく、賢いと言われてる生活様式取る事が目的になってない？
　それは君たちが嫌いな大人ぶった行儀のいい生き方より自由で幸せな生き方かい？