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メンタルヘルスと人材定着について

メンタル不調を原因とした離職者が増え続けています。メンタルヘルスケアの必要性は感じているが、目に見えない問題ゆえに対策に難航する経営者が多くみられます。メンタルヘルストラブルを予防するためにできることを知っておきましょう。この記事では、中小企業の経営者や管理職、人事部門の方向けにメンタルヘルスケアマネジメントの基本的な知識と対策をまとめています。

2 企業のメンタルヘルス問題

企業にとってメンタルヘルス問題が深刻な理由は、休職者や離職者が増え人手不足に陥ることです。また、経済産業省が推進する”健康経営”が浸透しつつあります。その中で、従業員の健康を大切にできるということは企業価値向上の要因に、逆に不健康な従業員が多くいるということは企業価値低下の要因になるということです。

従業員の健康対策に時間やコストを投資している企業は、離職率が下がると同時に、就職先候補になる確率も上がります。メンタルヘルスケアを手厚く行うことにより、人手不足の解消に寄与するのみならず、経営成績も上昇することが多くの労働関連調査から明らかになっています。

3 メンタルヘルスの保守が重要な理由

ストレスを抱える従業員が多いという状況は、従業員にとっても企業にとっても良いことはありません。業務中の事故リスク上昇や集中力低下によるペースダウンなどはよくあるトラブルです。しかし、なかなか第三者から見えるものではありません。メンタルヘルスの保守がうまくいかない場合、次のような問題が起こりえます。

・休職者や離職者の増加
・就職希望者の減少
・パフォーマンスの低下
・経営成績の悪化
・株価下落
・労災事故の増加
・医療費の増加
・自殺などによる訴訟

多くの企業が、メンタルヘルス問題を抱えていることは明らかです。これまでのように、精神的な問題を本人はもちろん周囲も気付かぬフリを続けていくような環境は、深刻な問題を引き起こし、企業は利害関係者からの信頼を失ってしまいます。

4 管理職や人事担当が知っておきたいメンタルヘルスの基本

職場におけるメンタルヘルスケアの基本的な考え方として「予防」があります。この章では、厚生労働省による指針を参考に、中小企業のマネジメントに携わる人に必要な情報を掲載します。(参考:厚生労働省,独立行政法人労働健康安全機構『職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針』)

メンタルヘルスケアの対策でもっとも有効なのが「予防」とされます。予防には次のステージがあります。

・一次予防…メンタルヘルス不調を未然に予防する
・二次予防…メンタルヘルス不調を早期発見・適切な対処をする
・三次予防…メンタルヘルス不調を患った従業員の職場復帰・支援を行う

これらの予防を効果的に推進するために次の4つのケアが重要とされています。

・セルフケア
セルフケアとは、従業員自身が心身の状態を理解し、良い状態を維持できるよう自ら行動することです。「電話が鳴ると動悸がする」「成果が不安で集中できない」など、心の変化に気づいたら、気のせいだと放置するのは危険信号です。

・ラインケア
ラインケアとは、管理職の立場で従業員のメンタルヘルスに関わる対策のことです。小規模事業主や管理職、人事担当者にとって、知識と理解が必要なのがこのラインケアです。従業員の様子に変化があれば面接などを行い、無理をしているようなら休ませるなどの対策をとります。施策として、職場環境の見直しや相談環境の整備、復帰支援などがあります。

・事業場内産業保健スタッフケア
事業場内の産業保健スタッフによる多様性のあるサポートです。上記のセルフケアとラインケアがしっかりと機能しているかを把握し、産業医らが専門的視点から助言やサポートを行います。

・事業場外資源によるケア
メンタルヘルスケアに特化した専門機関などと連携したサポートです。産業保健センターや労災病院、従業員支援プログラムなど幅広い領域で実施されます。

これらを継続的かつ計画的に、事業所の特性や従業員の意見を反映しながら実施していくことが、中小企業のメンタルヘルスケアに求められます。特に「セルフケア」「ラインケア」は、基本的かつ重要な課題です。

5 メンタルヘルスケアの実践方法

メンタルヘルスケアマネジメントでもっとも有効とされるのが「予防」です。定期的に健康教育を行うことにより、従業員それぞれの健康への意識を高めることが期待されます。 ”個人の健康”が”組織の健康”へ変化していくことで業績向上や企業評価につながっていくでしょう。企業が実践できる予防法には次のような方法があります。

・ストレスチェックアンケート
・不調への柔軟な対策
・メンタルヘルスについての研修
・労働時間の管理
・相談窓口のハードルを下げる
・新入社員へのメンター制度
・勤務スタイルの選択を増やす

このような対策が挙げられます。メンタルヘルスは少数派の問題ではなく、社会全体の問題であり隠すことではないということを周知しましょう。コミュニケーションを日常からとることが近道であり、もっとも大切な心掛けになります。

また、サービス残業が美化されない社風を維持することも重要です。管理職の人は特に、部下に残業をさせないために自分自身を犠牲にする傾向があります。経営陣に相談しにくい残業問題などは、相談窓口を利用すると良いです。相談窓口はメールや電話など多様な形態で設置されていることが望ましいです。

勤務スタイルの多様化が進み、在宅ワークの環境が整っている企業が増えています。しかし、家庭環境や住宅事情はそれぞれ違うことを忘れずに、本人の意向を確認しながら対応しましょう。従業員自身が選択することで、任されているという自己効力感も高まりモチベーションアップにもつながります。

6 まとめ

この記事では、職場におけるメンタルヘルスケアが、人材の離脱を防ぎ、経営戦略にも関連することをお伝えしました。しかし、対応が間に合っていない企業が多く存在するのが現実です。深刻な人手不足に陥っているからこそ、限界を感じても無理をせざるを得ない状況におかれている人が多くみられます。

企業に貢献している人ほど、燃え尽きていくという事実を受け入れなければなりません。仕事に対して真面目に取り組む人、優秀で成績を常に残す人、そういった生産性の高い人材ほどメンタルヘルス問題に直面している可能性が高いのです。几帳面、真面目、責任感が強いなど、仕事に取り組む上で欠かせない要素は、メンタルトラブルを引き起こす要素にも共通するからです。

この記事を読んでいる管理職や人事担当者の皆様も例外ではありません。バーンアウトを迎える前に、職場全体でメンタルヘルスについて講じる必要があるでしょう。

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