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健康経営とCSV

"健康経営"と"CSV"には深い関係性があることをご存知でしょうか?
多くの企業では健康経営の担当部署(人事部/健康保険組合など)とCSVの担当部署(広報部/経営企画部/事業開発部など)が異なっているため、健康経営とCSVを結び付けて考えている方は少ないと思います。

しかし、CSVのように本業を社会的価値とリンクさせることで、「自社にしかできない健康経営」に取り組むことができるということを本noteでお伝えします。

健康経営に関するお役立ち情報をお届けする「健康経営のすすめ」は、健康経営支援ツール"FairWork survey"をご提供する株式会社フェアワークが運営しています。フェアワークへのお問い合わせはこちら

健康経営とは

経済産業省は以下のように定義しています。分かりやすく言うと、企業の経営目的達成のために、企業で働く人たち一人ひとりの健康を大切にしよう。という取組です。

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことで、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される。

CSVとは

”CSV”とは「Creating Shared Value」の略語で、日本語に訳すと「共通価値の創造」という意味になります。「競争戦略論」で有名なアメリカの経営学者であるマイケル・ポーター博士が、2011年にハーバード・ビジネス・レビューで提供した概念です。

マイケル・ポーター博士はCSVを「企業が事業を営む地域社会や経済環境を改善しながら、自らの競争力を高める方針とその実行」と定義し、「社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるべき」と提唱しています。

CSVはCSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任)をベースとして生まれた概念です。「企業が社会的に存在する上で果たすべき責任」が起点となっているCSRは、国際的基準であるISO26000などを”遵守する”など、どちらかと言うと”本業の周辺領域”での活動が主でした。

一方でCSVは、本業によって事業価値だけでなく”社会的価値”をも産み出すことを通して、企業の競争力や持続的な成長力を高める一つのビジネスモデル手法です。

健康経営とCSVの関係

健康経営は自社の従業員を対象とする取組のため、社会に対しての価値提供を目指すCSVとの繋がりが薄いと思われる方もいると思いますが、一部企業では自社の本業を健康経営の取り組みとリンクさせることで「自社にしかできない健康経営」に取り組んでいます。

今回は日本水産の例を参考に健康経営とCSVの関係を見ていきます。

日本水産は水産事業やファインケミカル事業(EPA/エイコサペンタエン酸など水産資源由来の化成品供給事業)を営む企業で、健康経営銘柄2021を受賞しています。

経営方針「水産資源の持続的利用と地球環境の保全に配慮し、水産物をはじめとした資源から多様な価値を創造し続け、世界の人々のいきいきとした生活と希望ある未来に貢献する」をもとに「独自の技術を活かし、持続可能な水産資源から世界の人々の健康をお届けする」ことを基本的な考え方としています

本業である「水産資源からの価値創造」を健康経営の取り組みと連携させており、従業員のEPA摂取を促進する「EPAチャレンジ」や、魚を食べることによる健康づくり「おさかな食推進」などに取り組んでいます。これらの取組は他社には真似できない取組であり、健康経営銘柄の認定に加点されるのは勿論、健康ブランドの構築や、自社サービスの利用で自身の健康を実感することによる従業員エンゲージメントの向上など様々なメリットがあります。

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健康経営とCSVを結び付けた例

対外的に健康経営とCSVを結び付けている企業の例を紹介します。

<事例1:キリンホールディングス>

健康経営の実現
キリングループでは、お客様に「健康」をお届けする企業として、従業員が積極的に健康づくりを行い、一人ひとりが明るくいきいきと働ける環境や機会をつくっていきます。従来実施している安全衛生活動(定期健診・ストレスチェック・長時間労働健康障害防止策など)に加え、キリングループならではの強みである「ヘルスサイエンス領域」の取り組みも活かし、一歩踏み込んだ活動を展開していきます。
2017年には、従業員に向けてキリンホールディングス社長による「健康宣言」を発信し、従業員の安全衛生・健康に関わる重要な課題と捉えている「生活習慣病」「メンタルヘルス」「働く環境」「お酒との付き合い方」を4つの柱として、取り組んでいます。
キリンホールディングス・協和キリンは、2017年より5年連続で「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を受けています。
(出典:キリンホールディングスHP/CSV活動/健康/健康経営の実現

<事例2:住友生命>

当社はこれまで、「本業である保険事業の健全な運営とその発展を通じて、豊かで明るい長寿社会の実現に貢献する」という方針の基で、企業の社会的責任を果たすCSRの取組みを推進してきました。
中期経営計画2019においては、こうしたCSR経営をベースとして、健康増進型保険“住友生命「Vitality」”を軸に、社会全体への健康増進の働きかけや、健康経営の推進を行うことで、「健康寿命の延伸」という社会的課題
の解決に取り組んでいます
。この取組みを「CSVプロジェクト」と位置づけ、「お客さま」・「社会」・「会社・職員」とともに、健康増進という新しい共有価値を創造することで、「日本の健康寿命の延伸」を目指していきます。
(出典:住友生命/経営基本方針/健康増進を軸としたCSVプロジェクトへの取組み

まとめ

CSV経営という言葉はまだまだスタンダードではないかもしれませんが、本質は「本業と社会的価値を繋げることで競争優位を生み出す」ことです。そして、社会的価値の中には当然、従業なステークホルダーである従業員の方の心身の健康も含まれます。健康に関連する事業を本業にしている企業は、社外に対してその価値を発信するだけでなく、社内(自社の社員)に対しても発信/活用してみては如何でしょうか。

自社のサービスやノウハウを積極的に活用して取り組む健康経営は、他の会社に真似できない”唯一無二の健康経営”になります。これまでは健康経営優良法人の認定を受ければ一定の社会的評価が得られたため、横並びの取組でも良かったですが、今後は経産省による偏差値開示など更に一歩踏み込んだ取組が求められます。本業を活かした唯一無二の健康経営に取り組むことで、社員の健康だけでなく、自社ブランドの構築やサービスの効果実証など様々なメリット/リターンが得られるのではないかと思います。

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