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健康経営の表彰制度(健康経営銘柄)

健康経営に関するお役立ち情報をお届けする「健康経営のすすめ」は、健康経営支援ツール"FairWork survey"をご提供する株式会社フェアワークが運営しています。(弊社HPはこちら

健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」するために各種公的機関が認定制度を設けています。なぜ健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」するのでしょうか。それは健康経営に取り組む企業が「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として適切な社会的評価を受けることができる環境を整備するためです。

全国規模の表彰制度である「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」が有名ですが、それ以外にも地方自治体などで表彰制度を設けているところもあります。今回のnoteでは数ある表彰制度の中から「健康経営銘柄」についてご紹介します。

健康経営銘柄とは

経済産業省と東京証券取引所が共同して、健康経営に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定・公表しています。2014年度(2015年3月)に第1回の発表が行われ、以降毎年1~3月頃に選定企業が発表されています。本表彰制度の目的は以下の通りです。

東京証券取引所の上場会社の中から「健康経営」に優れた企業を選定し、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介をすることを通じ、企業による「健康経営」の取り組みを促進することを目指す。(出典:経済産業省HP

健康経営銘柄企業に期待される役割

こちらのnote「健康経営と日本の成長戦略」でご紹介しているように、健康経営は国を挙げて推進されている取組です。健康経営を普及していくためには健康経営の具体的取組やそのメリットを様々な形で情報発信していく必要があります。

このため、健康経営銘柄企業に対しては、健康経営を普及拡大していく「アンバサダー」的な役割が求められています。また、健康経営を行うことでいかに生産性や企業価値に効果があるかを分析し、それを様々ステークホルダー(従業員・投資家・地域など)に対して積極的に発信していくことも求められています。この「アンバサダー」的な役割を健康経営銘柄は期待されているのです。その健康経営銘柄がどのように選定されているか知るために2021年の認定プロセスをご紹介します。

健康経営銘柄2021の選定プロセス

東京証券取引所上場会社を応募対象として、以下のステップを経て選定されました。
<2020年8月~10月>
①経済産業省による「健康経営度調査(従業員の健康管理に関する取組やその成果についての調査)」への回答
<2020年10月~11月>
②①回答結果を元に、健康経営度が上位20%かつ必須項目をすべて満たしている企業を選定企業候補に選定
<2020年11月~2021年3月>
③財務指標スクリーニング(※)を経て「健康経営銘柄2021」を選定
※ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上の企業が対象
 加点要素:ROEが高い企業、前年度回答企業、社外への情報開示状況
 33業種毎原則1社の選定を予定(業種内に該当企業がない場合は非選定)
 各業種最高順位企業の平均より優れている企業についても選定

健康経営銘柄2021の選定要件・評価モデル

選定要件は大きく5つのフレームワークに分かれています。健康経営の実践度合いを「①経営理念・方針」「②組織体制」「③制度・施策実行」「④評価・改善」「⑤法令順守・リスクマネジメント」の側面から評価する評価モデルとなっており、各側面に対して配点ウェイトが定められています。

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健康経営銘柄2021の評価ポイント

PDCAサイクルの確立を重視しており、選定要件4「評価・改善」の評価ウェイトが高くなっています。また、加点要素にある「経年での成果や企業経営への影響などを具体的指標で検証し、社外へ発信・情報開示していること」も評価ポイントとされました。

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健康経営銘柄2021の選定企業

2021年は29業種48社が選定されました。健康経営度調査に回答した企業の中で健康経営銘柄の対象となる上場企業は970社であったため、受賞率5%と非常に狭き門となっています。実際の受賞企業はこちら(経済産業省HP)をご覧ください。

過去の選定企業

健康経営銘柄はこれまで7回(年)選定されてきました。どのような企業が選定されてきたのか、いくつかの視点で振り返ってみます。

1.選定業種数と選定企業数
選定業種数は第1回目(2015年)が22業種だったものが第7回目(2021年)には29業種と健康経営が幅広い業種業界に浸透していっている様子が伺えます。選定企業数も同じく2015年の22社から2021年の48社へと増加しています。2018年まで業種数と企業数が一致していたものが2019年から差が広がっているのは「1業種1社」の条件が緩和され、業種で最高順位でなくても、「各業種の最高順位企業の平均より優れていれば」選定されるようになったためです。

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2.選定回数
これまでに7回発表されてきた健康経営銘柄ですが選定回数が多いのはどのような企業でしょうか。皆さまのイメージ通りの企業が選定されているでしょうか?それとも意外な企業が選定されているでしょうか?

<7回:6社(全ての回で選定)>
 花王、TOTO、テルモ、東急、SCSK、大和証券グループ本社
<6回:3社>
 ワコールHD、コニカミノルタ、東京海上HD
<5回:2社>
 味の素、リコーリース
<4回:9社>
 アサヒビールHD、塩野義製薬、バンドー化学、リンナイ、ブラザー工業、
 デンソー、ローソン、丸井グループ、みずほFG
<3回:10社>
<2回:21社>
<1回:42社>

3.激戦業種・独占業種(平均受賞回数)
2019年から1業種1社の縛りが緩和されたものの基本的には業種内で最高順位になる必要があります。連続受賞している企業は目立ちますが、一方で毎回受賞企業が入れ替わる業種は「業種内での競争が激しい=健康経営への取組が盛んな」激戦業種とも言えるのではないでしょうか。各業種ごとの平均受賞回数を「激戦度」として調べてみました。(そもそも業種ごとに所属企業数が違うという点には目をつむってください。)

<NO1激戦業種:卸売業>
卸売業では7年で延べ8社が受賞していますが、受賞企業は6社とほぼ毎年入れ替わりが起きている1番の激戦区です。過去受賞企業は双日、TOKAI HD、伊藤忠商事、丸紅、豊田通商、キャノンマーケティングジャパンです。

<No1”独占”業種:ガラス・土石製品業、陸運業、証券・商品先物取引業>
No1と言いながら3業種もありますが、この3業種は1社が7年間の間ずっと業種内最高順位が”独占”されています。ガラス・土石製品業はTOTO、陸運業は東急、証券・商品先物取引業は大和証券グループ本社です。勿論この3社は健康経営に取り組んでいる特に優れた企業になりますが、この3社の地位を脅かすような企業が同業種内ででてくると、更にお互い切磋琢磨して取組に磨きがかかるのではないかと思います。
 
4.リベンジ企業
健康経営銘柄の受賞は狭き門です。更に健康経営の取組は単発で終わるものではなく、健康経営を通じた経営課題の解決のためにPDCAを回し続けなければなりません。このため、一度受賞してもその後選外となってしまう企業も多くあります。そんな中、不断の努力で健康経営銘柄2021に見事返り咲いた”リベンジ企業”を調べてみました。

バンドー化学(2019年以来)
凸版印刷(2018年以来)
ローソン(2017以来)
ベネフィット・ワン(2018年以来)

リベンジ企業は4社ありましたが、この中でもローソンは表彰制度の2015年から2017年まで3年連続で受賞していたものの、その後3年間は選外でした。きっとその選外の間も弛まぬ健康経営の取組を続けたからこそ、2021年の受賞につながったのではないかと思います。

おわりに

今回は健康経営銘柄について詳しく解説しました。知っている企業・知らない企業があったとは思いますが、いずれも日本を代表する素晴らしい企業です。このような健康経営銘柄の企業が牽引していく形で、日本の健康経営がより良い方向へと向かっていくことを期待しています。

最後に1点だけお伝えしたいことがあります。上の一文と矛盾するような内容になりますが、「健康経営銘柄に選定されていない、あるいは選定されなくなった企業が従業員を軽視しているということではありません」。健康経営銘柄には形式要件もあるため一部でも要件を満たしていなければ選外になってしまいますし、逆に形式要件さえ満たしていれば従業員の方々の実感がないまま健康経営銘柄に選定される可能性もあります。。本当に大切なことは、それぞれの企業がそれぞれの経営課題を解決し、それぞれの経営目標を達成するために健康経営に取り組むことです。そして、結果として従業員がみな健康で活き活きと働くことができるようになることです。この原則をぶらさず健康経営に取り組めば、いずれ従業員の方の目に見える形で成果が出てくるのではないかと思います。

健康経営銘柄の過去受賞企業一覧をこちらにアップロードしておきますので、どのような企業が受賞しているのかや業種内での争い(笑)など、興味がある方はいろんな角度から眺めていただければと思います。


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