見出し画像

健康経営を実現するための組織変革

健康経営は企業における1施策ではなく、その言葉に”経営”とついているように会社の経営戦略の一部です。施策であれば社内の一部主要関係者の協力が得られれば実現できますが、経営戦略となると全社を巻き込んだ大規模な組織変革が必要になります。

従来の「従業員の健康は管理するもの」という企業文化を、「従業員の健康に投資して組織パフォーマンスを向上させ、企業の持続的な成長を実現する」という企業文化に180度変えていくためには、変革のアプローチが有効なのではないでしょうか。

今回のnoteでは組織変革の有名なフレームワークである”変革の8段階プロセス”をご紹介します。

1.変革の8段階プロセス

リーダーシップ論の権威であるジョン・コッターが提唱した企業の組織変革推進のためのプロセスです。プロセスは8段階からなり、コッターはこのプロセスを第1段階から順番に進めることが重要だと指摘しています。途中のプロセスを飛ばしたり、前の段階が不十分なままで次の段階に進んでしまうと、”つまずきの石”により変革が頓挫してしまいます。

<変革の8段階プロセス>
1.危機意識を生み出す
2.変革推進のためのチームを築く
3.ビジョンと戦略を生み出す
4.変革のためのビジョンを周知徹底させる
5.従業員の自発を促す
6.短期的成果を実現する
7.成功を活かし更なる変革を推進する
8.企業文化として定着させる
<つまずきの石>
内向きの企業文化、官僚主義、社内派閥、信頼感の欠如、不活発なチームワーク、傲慢な態度、中間管理職のリーダーシップ欠如、不確実に対する恐れ

2.健康経営のための組織変革

コッターの8段階プロセスを健康経営に当てはめてみます。「社内で健康経営が浸透しない。。」と悩まれている推進担当者の方は、どこかのステップを飛ばしたり不十分なままになっている可能性がありますので、自社の取組と見比べていただくと新たな気づきがあるかもしれません。

(1)危機意識を生み出す
社内データを用いて従業員の不調が業績などに与えるインパクトを示し、現在の会社や組織に対する危機意識を生み出します。

・健康を理由にした離職者の増加やメンタル不調者の増加による採用・育成コストへの影響
・エンゲージメントやモチベーションの低下による生産性への影響
・健康診断結果の悪化による医療費への影響

(2)変革推進のためのチームを築く
組織変革を推進するためには十分にパワーを備えたチームが必要です。変革を主導していくためには、スキル・人脈・信頼・評判・権限などがあるとよりスムーズに進みます。

・既存の人事労務担当者に任せるのではなく、健康経営推進委員会を立ち上げる。
・委員会メンバーは社長/役員(信頼・権限)、産業医や産業保健師(スキル・信頼)、人事部(スキル・人脈・権限)、経営企画部(人脈・権限)、次世代リーダー(人脈・信頼・評判)、現場メンバー(人脈・信頼)、などから選定する。

(3)ビジョンと戦略を生み出す
組織変革のためには、将来のあるべき姿を示す「ビジョン」と、ビジョンを実現するための「戦略」が必要です。優れたビジョンは、①目に見えやすい、②実現が望まれる、③実現が可能である、④明確な方向が示されている、⑤柔軟である、⑥5分以内で説明可能である、の6つの特長があると指摘されています。

・健康経営宣言をする(ビジョン)
・経済産業省の「戦略マップ」などを活用して、自社に合わせた健康経営戦略を策定する(戦略)

(4)変革のためのビジョンを周知徹底させる
ビジョンや戦略を様々なチャネルを通して継続的に伝えることが重要です。また変革推進チームのメンバー自身が行動モデルとなることも大切です。組織や従業員によって琴線に触れるメッセージやアクションは異なるため、1つの方法で全社を巻き込めるわけではありません。地道な取り組みが求められます。

・経営トップからメッセージを伝える。
・健康経営の取り組みを社内報で取り上げる。
・健康経営の取り組みを社外に対して発信する。
・健康施策を実施する。ウォーキングイベント(アクティブ向け)、Webコンテンツ(手軽にできる)、外部ジム補助(周りに知られたくない)、食セミナー(グルメ向け)、チームでの取組(無関心層を強制的に巻き込む)など。

(5)従業員の自発を促す
ビジョンが浸透してくると自発的に行動する従業員が増えてきます。自発的な行動をサポートするために、変革を阻害する障害を取り除くことが重要です。

・管理職向けの健康経営研修(部下が健康活動に取り組むことへの理解向上)
・業務効率化や残業時間の削減(健康活動に取り組む時間の確保)
・子育てや介護の支援(健康活動に取り組む時間の確保)
・オンライン施策の導入(テレワークでもできる健康活動)

(6)短期的成果を実現する
”業績上で”目に見える短期的成果を実現し、短期的成果に貢献した人々を認知、報酬を与えることが大切です。健康経営は従業員個人の健康改善が目的ではありませんので、、会社の業績や経営課題解決にどうポジティブに影響したのかを見える化することが重要です。

・生産性が向上し残業時間及び残業コストが減少。
・コミュニケーションが改善し人間関係を理由とした離職が減少。
・健康施策で意気投合したメンバーと部署を超えて業務改善を実現。
・食事セミナー参加者の健康診断有所見率が低下し健康関連コスト(再診費用)が減少。

(7)成功を活かし更なる変革を推進する
短期的な成果を基に変革の勢いをつけます。ビジョンに馴染まない社内制度などを変革するとともに、ビジョン推進に貢献できる人材の採用や能力開発を行い、変革を定着させていきます。

・健康やウェルビーイングの観点を評価制度に盛り込む。
・新卒採用の際に健康経営をPRする。
・新入社員研修、若手研修、管理職研修などに健康経営をテーマとした研修を盛り込む。
・健康経営を推進する社内システムを導入する。

(8)企業文化として定着させる
ビジョンに基づいた新しい取組と企業の成功の関係を明確に見える化し、各階層のリーダーに変革を根付かせる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?