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モチベーションの高め方~ハーズバーグの二要因論から~

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1_はじめに

モチベーションの高い従業員の多くいる会社とそうでない会社には、どのような違いがあるのでしょうか。さまざまな業界で顧客のニーズが多様化し、経営マネジメント手法も多彩になってきています。
今回のコラムでは、モチベーションに関連する「二要因論」を紹介します。モチベーションを高めるための経営マネジメントにおいて、基礎となる理論の一つです。

2_モチベーションと経営


モチベーションとは、人が動くきっかけになる「動機」や「やる気」のことです。
人生の多くを仕事に費やす現代人にとって、良い職場に必要な要件を模索することは、生き方を考えることでもあります。一人一人が立場に関わらず、知見を深めていくことが現代社会には必要でしょう。
モチベーションが高いと、作業効率や集中力などが上がります。生産性が上がり業績アップにつながる可能性、離職率低下など企業にとってのメリットがあります。人手不足をカバーしつつも成果を上げていくには、モチベーションを維持・向上させることが有効なマネジメント手法となります。
従業員がどのような環境で、どのような状態であれば、モチベーションが高まるのかを調査した研究が数多く存在します。その中でも特に知名度が高いのが「二要因論」です。

3_ハーズバーグの研究

二要因論とは、職務満足に関する理論で、モチベーションを高めるには「衛生要因」と「動機付け要因」をそれぞれ分離して考慮することが重要であるという考え方です。
この理論は、アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ(Herzberg,F.1959)が提唱したもので、アメリカのピッツバーグにおいて、エンジニアや経理職など200人を対象に、職務満足感の調査を行い導き出したものです。
産業化が進むにつれ、個人の生産能力がより一層求められていた当時、何がモチベーションとなるのかが研究課題でした。仕事を遂行するやる気や職場に対して抱く思いなどを調査した結果、二要因論を提唱しました。
この研究に際し ”メンタルヘルスは時代の中核課題である” というハーズバーグが掲げてきた信念を、さらに証明することになり、ハーズバーグの研究の中で最もメジャーなものとなりました。
モチベーションマネジメントは、いつの時代にもあらゆる分野で大きな課題となります。大変シンプルかつ重要な主張であるハーズバーグの理論は時代を超えて、新しい研究結果などと組み合わせながら、多くの場で取り入れられています。

4_二要因論について

 二要因論は 「衛生要因」 と 「動機づけ要因」 から構成されます。詳しくみてみましょう。

◇衛生要因
衛生要因とは、作業条件や給与などのことで、物理的な報酬です。
・仕事環境に関するもの
・満たされてもモチベーションアップ自体にはつながらないもの
衛生要因は満たされていないと職場に対する不満足度が上昇しますが、満足度を高めるわけではありません。

◇動機づけ要因
動機付け要因とは、責任や達成感、仕事そのものの内容に対する充実度のことで、心理的な報酬です。
・仕事そのものに関するもの
・満たされるとモチベーションアップにつながるもの
動機付け要因が満たされていなくても、不満足度が高まるわけではありません。

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◇満足の反対≠不満足
上記をまとめると
「衛生要因は動機づけの前提条件であり、十分な条件にはならない」
ということです。
“満足の反対が不満足とイコールではない”とはどのような状況でしょうか。職場での出来事に置き換えてイメージすると良いでしょう。
〈事例〉悩んだ末、提案した企画が採用されたので、ホッとしてコーヒーを入れに行ったら給湯室がとても汚れていた。
→この場面に置かれたとき、給湯室が想定外の不衛生状態であったとしても、それが案件に対するモチベーションを下げる因子にはならないということです。


このように、二要因論では、職務に対しての満足要因と不満要因は、対局にあるものではなく、別のものであると考えます。満足要因を構成する達成感や仕事の責任など「やりがい」こそ、モチベーションを高めるために必要であるという点が特徴です。

 5_ハーズバーグ理論の活かし方

二要因論が全ての業種にマッチするとは限りませんが、経営マネジメント手法の一つとして、良い変化を起こすヒントになる可能性は十分にあるでしょう。
従業員のモチベーションを上げるには、衛生要因と動機づけ要因を組み合わせながら、心理的な満足度を充足させる手法が求められます。
たとえば、下記のような工夫が挙げられます。

・仕事の一部ではなく、全体を任せることでやりがいや達成感をより多く感じさせる
・仕事上の役割にかかわらず、その人自身の存在を尊重し、必要であることを伝える
・フレックスタイム制やリモートワークを組み合わせ、勤怠管理を本人主導にする

このように、自己効力感を高め、自己決定欲求を満たせるような仕組みを労務管理に取り入れることが効果的です。業種や人材によって変える必要もあるでしょう。しかし、共通することは、物質的な報酬でやる気を引き出そうとするのではなく、心理的な働きかけでやる気を引き出すという点です。
また、バランスが取れていることも大切です。動機づけ要因が高すぎ、衛生要因が低すぎるといった状況は、やりがい搾取企業の典型でもあります。やりがいのみを高めることに注力するのではなく、やる気を高めるための衛生要因を整える事が前提であることを忘れてはなりません。

6_まとめ

ハーズバーグの研究では、職務満足度には、さまざまな要因が関与していることが示されました。モチベーションマネジメントでは、報酬や条件だけでなく、個人差など多次元の要因が影響し合うことの理解が重要です。
一方で、各部門のデータ収集やPDCAの見直し、職場環境の整備など、あらゆる方面で努力と工夫を重ね、考え続けた結果、70点の時もあれば120点の時もあるでしょう。モチベーションを高める要素は、研究データやマネジメント手法の実践だけでは捉えきれない人間同士の交流から生じるものも存在するでしょう (阿吽の呼吸によるミスフォローや言葉がけのタイミングなど)。
常に、企業も人間も発展途上であり正解は一つではありません。それでも、どうしたらより良い業績を上げられるか、どうしたらよりよく生きられるかを考え続けること自体に価値があるのでしょう。その基礎理論として 「二要因論」 は時代を超えて欠かせない役割を果たしているのです。

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