健康日本21「栄養・食生活」に関する目標と成果について
日本の直近20-30年間の健康政策に関してまとめ読みする機会がありましたので、うち印象深かったトピックをご紹介したいと思います。
厚生労働省の健康日本21では「新世紀の道標となる健康施策、すなわち、21世紀において日本に住む一人ひとりの健康を実現するための、新しい考え方による国民健康づくり運動である。これは、自らの健康観に基づく一人ひとりの取り組みを社会の様々な健康関連グループが支援し、健康を実現することを理念としている。この理念に基づいて、疾病による死亡、罹患、生活習慣上の危険因子などの健康に関わる具体的な目標を設定し、十分な情報提供を行い、自己選択に基づいた生活習慣の改善および健康づくりに必要な環境整備を進めることにより、一人ひとりが稔り豊かで満足できる人生を全うできるようにし、併せて持続可能な社会の実現を図るものである」と高らかに謳われています。
うち「栄養・食生活」の項目では、栄養・食生活は、人々が生命を維持し子どもたちが健やかに成長し、健康で幸福な生活を送るために欠くことのできない営みであるとされ、かつ身体的な健康という点からは、栄養状態を適正に保つために必要な栄養素等を摂取することが求められ、その一方で食生活は社会的、文化的な営みであり、人々の生活の質(QOL)との関わりも深い、と指摘されています。
戦後、日本人の食生活は高塩分・高炭水化物・低動物性たんぱく質という旧来の食事パターンから、動物性たんぱく質や脂質の増加等、大きな変化を遂げたことは、感染症や脳出血などの減少の一因ととなったものの、一方でがん、心疾患、脳卒中、糖尿病など生活習慣病の増加が深刻な問題となったことには、栄養・食生活の関連がみられるものも多いため、栄養対策も従来の戦前の「栄養欠乏」から現代の「過剰栄養」に焦点をあてたものへと転換を図ることが求められました。
また、食生活を取り巻く社会環境の変化に伴い、朝食欠食率の増加、加工食品や特定食品への過度の依存、過度のダイエット志向、食卓を中心とした家族の団らんの喪失などが見受けられ、身体的・精神的な健康への影響が懸念される現状が指摘され、人々の健康で良好な食生活の実現のためには、個人の行動変容とともに、それを支援する環境づくりを含めた総合的な取り組みが求められる、とされました。
労働損失「プレゼンティーズム」とも関連が深い朝食の欠食
とくに朝食欠食率に関しては、体調不良による労働損失「プレゼンティーズム」とも関連が深く、国民栄養調査結果の分析でも、朝食の欠食が栄養素摂取の偏りのリスクを高める要因であることが確認されています。
「健康日本21」の公表当時は、20歳男性の朝食欠食率が32.9%、また30歳代男性では20.5%へと増加傾向が著しかったため、20~30歳代男性の朝食欠食率を15%以下にすることが目標とされました。また、平成9年国民栄養調査結果において、欠食の始まりが「中学・高校生頃から」という者が多くみられたことから、若年者の朝食の欠食をなくすことも目標とされました。このあたりが、のちに続く「食育」政策へと繋がったものと考えられます。
さて、果たしてこれら国民的キャンペーンの結果、日本人の朝食欠食率はどの程度増加したのでしょうか・・・!
朝食欠食率の高さは、この20年でほぼ変化なし
厚生労働省の「平成29年 国民健康・栄養調査」によると、成人男性の朝食欠食率は平均15.0%、うち20歳代は30.6%、30歳代は23.3%。また成人女性の平均欠食率10.2%に対し20歳代は23.6%、30歳代は15.1%と報告されており、行政や産業界を巻き込んだキャンペーンにも関わらず、朝食欠食率はこの20年間でほぼ改善しなかった、と言わざるを得ません。
この健康日本21政策は平成24年に「第二次」へと受け継がれ、現在の厚生労働省「データヘルス・コラボヘルス」、経済産業省「健康経営」「健康投資」の大きな流れへと結びついていくのですが、こと若年者の栄養・食育分野に関しては農林水産省も巻き込んだ流れとなっています。
次回もまた、健康日本21政策や日本健康会議の話題を中心に振り返ってみたいと思います。
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