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教えて吉田先生!これからの健康経営を考える! 1. なぜ今、健康経営か?

今回から20回ほどのシリーズでお伝えする「これからの健康経営を考える」。第1回は「なぜ今、健康経営か?」です。

インタビューは2020年4月6日に都内にて行われました。

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健康経営のプロフェッショナル

――― まずは、自己紹介をお願いします。

株式会社フェアワーク 代表取締役社長の吉田 健一です。約20年前に千葉大学を卒業し、東京医科歯科大学の精神科に入局して都立の総合病院や単科精神病院、クリニックの外来などを経験してきました。

開業前の数年間は千葉県の精神科医療センターとがんセンター緩和医療科の医長を併任していたのですが、そこで患者さんの社会復帰や社会参加の困難さを目の当たりにしたことで、11年前に職場復帰支援を一つの目的として、メンタルクリニック(りんかい月島クリニック、りんかい豊洲クリニック)を開業しました。

その後、産業医として企業の中に入り込んで仕事をすることに面白みを感じたので、資格を取り、東証一部に株式上場する大企業や中央省庁などの産業医を続けてきました。2019年9月に株式会社フェアワークを設立し、パルスサーベイの普及や「健康かつ幸福に社会参加すること」の実現を目指しています。

パルスサーベイとは?

――― パルスサーベイとは具体的に、歴史も含めて教えてください。

「パルス」と言うぐらいですので、1週間や1ヶ月程度の短い間隔で5問から10問程度の質問を繰り返していくことで、従業員の心身のコンディションや仕事に対する姿勢などを調査するものです。

これは概ね2010年代、主に欧米から、ICT技術の発達に伴い新しい組織管理の手法として発生してきたと認識しています。私が始めてこの言葉を知ったのがウォールストリート・ジャーナルの2014年12月の記事ですが、日本でも数年前からサービス提供する事業者が出てきた印象です。

ロビーを走るフリーランス

「健康経営」の概念と歴史

――― 最近、健康経営という言葉をよく耳にしますが、健康経営とはどのようなものでしょうか?

概念としては、アメリカから出てきたと考えて良いと思います。アメリカは公的な国民皆保険制度がなく、従業員の健康保険料は企業側が多くを負担して民間保険会社に支払います。その場合、現在、新型コロナウイルス問題でも報道されているように、失業イコール無保険になるというリスクがあるので、労働者にとっては雇用と健康の維持はまさに死活問題となっています。

企業側からすると、決して安くない保険料を負担しているのだから、従業員には健康かつパフォーマンス高く働いてもらいたいという思いがあり、社員に健康プログラムを積極的に提供して、そのコストパフォーマンスをモニターする必要があるのです。

――― 日本ではどうでしょうか?

日本では、大阪ガスの統括産業医でいらっしゃった岡田先生を中心に、2006年に「健康経営研究会」が大阪で設立されています。西日本にはメーカーや工場が多く立地することもあり、カイゼン運動やQCサークルのような活動が、以前から盛んだったことと関連していると思われます。

その後、経済産業省が音頭を取って、少子高齢化に伴う労働人口減少など、このままでは日本が立ちゆかないから健康経営を国策的に推進していきましょうという流れが出てきました。

健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践し、そのコストパフォーマンスや業績へのアウトカムを見ていく、これが基本的な考え方になります。

――― 健康投資という言葉もよく耳にするようになりました。健康投資とはどのようなものでしょうか?

従来から経営資源としてヒト、モノ、カネ、あるいは、それプラス情報と言われてきましたが、企業にとっての根本的な経営基盤となる資源は、やはり従業員の健康である、との考え方から、健康経営を実践するための具体的な取り組みや投資、そして、それぞれに目標値、KPI(Key Performance Indicator ; 重要業績評価指標)を設定して投資対効果も見ていこう、という考え方が健康投資になります。

【参考資料はこちら:経済産業省ヘルスケア産業課資料】https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jisedai_health/kenko_toshi/pdf/021_02_00.pdf

そもそも健康って何でしょう?

――― 健康経営、健康投資と説明していただきましたが、そもそも健康とは何でしょうか?

「健康」とは単に、病気でないとか弱っていないということを指すものではありません。1946年のWHO憲章では、それに加えて「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた(well-beimg)状態にあること」としています。じつはこの定義、1998年のWHO執行理事会にて、新定義として「dynamic」と「spiritual」の用語を追加する旨、総会提案とすることが採択されたのですが、実際には審議入りしないままとなっています。興味ある方は日本WHO協会のサイトをご覧ください。

ところで「健康」という熟語には「健やか」と「康(やすし)」と2つの漢字が使われていますが、やはり「健やかな身体に、安らかな心」と心身共に良い状態である、と読み解けると思います。

WHOや厚生労働省が依って立つwell-beingと似た用語に「wellness ; ウェルネス」がありますが、こちらは1960年代に作られた造語で、健康を基盤にして自らより良い人生をデザインしていく生き方、を指しています。いずれにしても、「心身共に良い状態・善き人生」への指向は、人類普遍の価値観と言えるでしょう。

善き人生のための健康経営

――― 健康経営、健康投資は「働く」という言葉に紐づいていると思いますが、健康的に働くとはどのようなことでしょうか?

「働く」を、賃金労働という意味だけで捉えるのではなく、社会を構成する一員としてその社会に参加し、価値を交換する営み、と考えたいですね。弊社は経営理念に「全ての人々が 健康かつ幸福に社会参加する世界を創る」を掲げているのですが、金銭的報酬を得ることだけが「働く」ではなく、自らの意思と能力で社会参加して世の中に価値を提供していく、そして、その対価として報酬を受け取る、という状況を「働く」と捉えています。ですので、私は「身体が健康なだけでなく、心も満たされた状態での社会参加」が健康的な働き方ではないかと思います。

――― では改めて、なぜ今、健康経営が求められているのでしょうか?

歴史を振り返ると、南北の経済格差や東西の政治的対立は、ひと世代前に比べて小さくなったと言えるでしょう。例えば比較的単純な工場労働は発展途上国に任せておけばよく、西側先進国は知的労働を担う、といった色分けは曖昧となり、フラットになってきています。そもそも西側先進国、という用語もあまり意味を持たなくなってきました。

また、昭和20年代後半には男性の平均寿命は60歳だったのが、現在は80歳を超えて「人生100年時代」と言われるほどですから、60歳定年どころか、あと20年は働きましょう、先ほどの言い方ですと、できる限り社会参加して幸せに世の中に価値を提供していきましょう、という世の中になりました。

クラウドワーカーやギグワーカーと呼ばれる労働者のように、企業に所属しない働き方も近年では増えてきています。個人の働き方や働く期間、それに働く人と組織の関係性が変化していく中で、個人と組織はお互いに相手に何を求めるのか。双方が「良き人生」や「良い組織」の価値や意味を再確認しながら、社会的価値を生み出して行くことが不可欠な時代だからこそ、今、健康経営が求められていると思います。

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(聞き手:株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介)



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<編集後記>
ここまで読んで下さりありがとうございました。株式会社フェアワーク代表取締役社長の吉田 健一です。
弊社では随時、無料トライアル・キャンペーンを実施しています。以下は現在、実施中のキャンペーンの詳細です。
お問い合わせや「○○業界でもキャンペーンして欲しい!」などのご連絡は、どうぞお気軽にいただければと存じます。
 ⇒⇒⇒ sales@fairwork.jp


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