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神様、お願い。

白い薔薇が赤い薔薇に恋をしました。

赤い薔薇のあざやかで目を引く美しさに心を奪われたのです。

白い薔薇はなんとかして赤い薔薇に近づこうと毎日少しずつ、赤い薔薇に向かって体を伸ばしていきました。ほんの数ミリだけど、毎日必死に茎を伸ばしていきました。

でも赤い薔薇は少しも気づかず気まぐれに体をくねらせています。

白い薔薇は一生懸命茎を伸ばして、花も開いて、少しでも赤い薔薇に気づいてもらおうと香りも強くしました。

けれど赤い薔薇はのんびりと、その日の気分で腰を右に左にとくねらせているだけで、白い薔薇を見向きもしません。


白い薔薇は赤い薔薇ばかりを見ていましたが、ある日、ピンクの薔薇の存在に気づきました。

ピンクの薔薇が自分と赤い薔薇の間にいるんです。

そのことに気づいてから、ピンクの薔薇の成長がとても気がかりになりました。

なんとなく、ピンクの薔薇は赤い薔薇に近づいていっているように感じます。

もしかしたらピンクの薔薇も赤い薔薇が好きなんじゃないかと不安な気持ちが浮かびます。

赤い薔薇はあんなに魅力的なんだから、ピンクの薔薇が彼女に心を奪われないはずはありません。


ピンクの薔薇は少し挑戦的にこちらを見ています。

上のほうのピンクの薔薇がこちらを警戒しながらも、下のほうのピンクの薔薇は赤い薔薇と今にも繋がろうとしています。

どうしてもどうしてもピンクの薔薇と赤い薔薇には繋がってほしくありません。


白い薔薇は思います。自分が赤い薔薇に届くのにあと何ヶ月かかるんだろうと。

絶望的な気分になりました。

きっと数日のうちにピンクの薔薇は赤い薔薇と手を繋いでしまうでしょう。

だから神様に祈りました。

どうか、どうか、とても強い風を吹かせてください。

僕の花をいくつか、赤い薔薇に触れられるところまで飛ばしてください。


それから数日の間に、嵐がきました。

白い薔薇は赤い薔薇のところまで飛んでいけたでしょうか。


えぇ、きっと飛んでいけたと思いますよ。


#短編小説 #超短編小説 #薔薇 #ピンク #恋


お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨