出会えてよかったなんて。

「あなたに出会えてよかった」

そんなハッシュタグを目にするたびに「出会えてよかった」あなたはあなたなんだろうかって考える。でもね、出会えてよかったなんて思えない。だってまだ終わりにできないんだから。

「出会えてよかった」はぜんぶ終わってからの言葉。私にはそう見える。

あのとき出会えたから私はこんなふうに成長できましたとかそういうのだろう。別れの苦しさも寂しさも切なさも、ぜんぶどこかに消えてからのふりかえりみたいなものだ。

あなたがいなくなってから私の心はどこにも行けなくて、ぼんやりしてる。こんな楽しいことがあったとか、あんなうれしいことがあったとか、小さな日々の変化を伝える人がいない人生なんて、ぼんやりしているだけなんだ。

きれいだよね。明るい空も元気な花も、シャワーから生まれる虹も。自然が見せてくれる姿はとてもきれい。ちゃんと色はあるし、あたたかさも感じるんだ。

だけどそれを伝えるあなたがいない。

心のなかでつぶやく。ねぇ、きれいだよって。あなたもそっちで見てるかなって尋ねるんだよ。誰にも聞こえない声で、誰にも伝わらない声で、あなたにだけ届けたい声で。

「あなたに出会えてよかった」なんて言える日はいつ来るんだろう。

ねぇ、「やっぱり戻ってきちゃった。君が泣いてるからさ」って明日突然、私のドアをあなたがノックしてくれないかな。そしたらたくさんの小さな出来事を伝えるよ。止まらないおしゃべりにあなたが「戻ってきてよかったのかな」って不安になるくらいたくさんね。

会えなかった時間を埋めるためにね。

覚悟して戻ってきてね。

私はさ、「あなたに出会ってよかった」はこの先もずっと言いたくない。

もうあなたはこの世界にはいないのに、あなたへの想いはふくらんでいく。

ずっと待っている。

明日会いたい。

いますぐ会いたい。

会いにきてって空に叫んだ。


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