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ゆきやなぎ

恋が終わって、残ったのはこの1枚の写真だけでした。

あなたが旅先で撮ってくれたお花の写真。白色のゆきやなぎ。あなたはお花の写真なんて撮ったことがなかったのに、気まぐれで撮ったその1枚を私に送ってくれた。「君がよく花の写真を送ってくれるから」って書いてくれてたね。あなたの目を通して撮られたお花はほかのどのお花よりも愛おしかった。毎日その写真を眺めていたんだよ。

あなたはずっと私のそばにいてくれると思ってたけど、小さな心のすれ違いが重なって終わってしまった。すれ違うたびに話し合ったり、気持ちを確かめ合ったりして大切にしてきたつもりだったけど、離れてしまったあなたの心はもう戻ってこなかったね。

あなたと出会って恋をして、愛し合って、そして別れて、私のなかには何が残ったんだろう。あなたのなかには何が残ったんだろう。形の見えない何か大切なものは残ったのかな。

あなたがくれた優しい言葉はきっと毎日少しずつ薄れていく。あのとき感じた幸せな気持ちもいつの間にか消えてしまう。あなたのぬくもりも忘れてしまう。いまはまだとても寂しくて、あなたのすべてを心のなかで抱きしめていたい。

ねぇ、あれからあなたはどうしてる?

ちゃんと笑ってるんだよね?

私はね、まだ全然笑えてないんだ。よく泣いてるしね。あの写真もいまは見れない。あなたを感じるから。涙がもっと出ちゃうから。

スマホからそれを削除できる日はいつくるんだろう。その日を想像するとまた泣いてしまう。

忘れなきゃ。でも忘れたくない。

会いたいよ。でも会えない。

もう終わったんだ。


#短編小説 #掌編小説 #写真 #別れ



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