まさかね。

「ちょっと寒いね」って私が言ったら、あなたは私の手を取って自分のポケットに入れてくれた。ポケットのなかはあったかい。もう冬が近いな。

付き合ったばかりの冬は、ポケットに一緒に手を入れたことなんてなかったね。繋いだ手が冷たい空気に触れて寒かったのを覚えてる。ポケットに手を入れてほしいって思ったけど、自分からは言えなかった。

でもその寒さも大切な思い出だよ。

手を繋げるだけでとってもドキドキしてたからね。

あれからもうすぐ３度目の冬が来る。いまはこうして、あなたは自然に私の手をあなたのポケットに導いてくれる。照れることもなく、当たり前のように私の手を、私の心をあたためてくれるね。

ポケットに入れた手はしっかり握りあっている。体もとってもくっついてるから気持ちが落ち着くよ。

あれ？　ポケットのなかに何かある。

何だろう。

小さな四角いケース。

まさかね。

まさかだよね。

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