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風の誘い

やわらかな日の光とともに、カーテンをさわさわと揺らすような風が窓から吹き込んだ。さぁ外に出ておいで、と風に誘われる。私はキッチンにいるあなたに声をかけた。

「ねぇ、外がとっても暖かそうだから、一緒に出ようよ」

ウッドデッキに置かれたテーブルとチェアたちが私たちを待っている。

「いいよ、ジュース入れる?」

あなたの明るい声が届く。

「うん、オレンジがいいな」

フレッシュなオレンジを絞ってくれるのに少し時間がかかるって分かってるから、先に少しだけ窓から顔を出して外のおいしい空気を吸いたくなった。ちょっとだけつまみ食い。

「うーーんっ」

さわやかな空気を胸いっぱいに吸い込んで、両手を広げた。いいお天気だ。穏やかな土曜日。

「できたよー」

「はーい」

パタパタとスリッパの音を立てて、あなたのいるキッチンに向かった。

グラスの上のほうには絞りたてを感じさせる細かい泡が見える。この泡って、飲むとビールの泡みたいに唇にちょっとつくんだよね。でも口の中ではシュワッとしておいしいから、とっても好き。

私は2つのグラスを手に持って、窓のほうにまた戻った。テーブルに並べて置くと、グラスがキラキラと輝いた。

「ねぇ、ナッツとかも食べるー?」

「うん、ちょうだーい」


今日も風が私たちを誘う。

二人で一緒に日の光に包まれながら、このあとの予定を話そうね。



#短編小説 #掌編小説 #窓 #風 #恋人



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