内緒だけどね。

「はい」と笑顔であなたが私に手を差し出してくれた。あなたの大きな手が春の光を浴びて、とてもやわらかな表情を見せている。

あなたはドキドキしてないのかな。すごく自然に手を出してくれたけど。だって手を繋ぐの初めてだよ。私はドキドキし始めて、すぐに手を出せなくて、その宙に浮いた手を見つめたまま躊躇ってしまった。すごく緊張するじゃない。

そしたらあなたがこう言った。

「ほら、ドキドキするから早くっ」

その言葉に驚いて顔を上げてあなたを見たら、あなたの耳が少し赤くなっていた。寒い冬はもう過ぎて、チューリップが咲きほこる暖かな季節だから、その耳の赤さは冷たい風のせいじゃないよね。あなたの照れくさそうな表情を初めて見たよ。

早くしないとね、ごめんね。

慌てて手を出したら、力強くグッと握ってくれた。でも繋いだ手の感触に二人して照れちゃってドキドキも加速したのか無言になる。歩く速度もわずかに速くなったよね。

ねぇ、

大好き。

そんな気持ちがふわっと心に湧いてきた。まさかそんなの恥ずかしくて口に出しては言えないんだけどね。だってまだ初めて手を繋いだ私たちで、それだけで照れちゃう二人だもん。だけどいつか言いたいな。あなたの目を見つめながら、大好きって。

春風が私たちの繋いだ手の間を優しく通り過ぎた。

あのね、内緒だけど、風さえも通れないくらい近くに寄り添える日を想像して、もっとドキドキしちゃってる。

大好きだよ。