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今年のイブは

「ねぇ、イブは予定あるの?」
「いや特にないけど、お前は?」
「うーん、まだない」
「まだ・・・そっか、俺もどうしよっかなぁ」

「太一とかと会えばいいじゃん?」
「あー、太一はたぶん無理そう。なんかどっか行くとか言ってた」
「そうなんだー。私もどうしよっかなぁ」

「お前こそ、サークルのあいつとか、えっと、誰だっけ、お前に気があるやつ。そいつとかからは誘われてないの?」
「佐々木くんね、うん、まぁ、予定聞かれた」
「あ、やっぱり聞かれたんだ。なんて答えたの?」
「まだ決まってないって。とりあえず」
「その気ないなら早めに断ってやれよ。あっちもなんか落ち着かないだろうから」

「うん、分かってる」
「ん」

手が触れそうで触れない距離で私と圭吾は歩いていた。暖冬だなんて予想されながらも今日はすごく寒い。空気がキーンとしてて、耳も鼻も手も冷える。

坂道を登ったら、圭吾は右に曲がって私は左に曲がる。二人で何回この道を歩いて帰っただろう。幼稚園からの付き合いだから、年数にしたら15年くらいになる。その間、本当によくこの道を歩いた。

そういえば幼稚園のころは母たちの前を二人で手を繋いで小走りに坂を駆け上がったよね。冬は圭吾と手を繋ぐとあったかかった。いつから手を繋がなくなったんだろう。同じ小学校にも一緒に通ったけど手は繋がなくなった。二人ともポケットに手を入れて歩くようになった。

そんなことをなぜか思い出しながら歩いていたら、一瞬、圭吾の左手が私の右手に触れた。ほんの一瞬。ドキッとした。こんなに寒い日なのに、圭吾はポケットに手を入れていない。私も今日はポケットから手が出てる。

偶然?

どうだろう。

坂の上に着いたとき、いつものようにお互いに「じゃあ」と言い合ってそれぞれの道を向いて歩き出した。

あー、寒いな。手をポケットに入れようかな。

そう思って手を入れようとした瞬間、後ろから手を掴まれた。右手も左手も大きな手にグッと掴まれて、一緒にポケットに押し込まれた。びっくりして立ち止まった私の耳元に圭吾の声が聞こえた。

「イブ、会おうか?」

ずるいよ。

こんな突然。

ドキドキさせられちゃう。圭吾のくせに。



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