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パブリックアフェアーズって何だろう

はじめに

『“パブリックアフェアーズ”でビジネスと社会の成長を加速させる』
株式会社Next Relation代表の小野寺です。
こちらでは、ニューノーマル時代の経営戦略を考える上での必修科目となりつつあるパブリックアフェアーズに関するトピックをお伝えしていく予定です。
是非、お付き合いいただければ幸いです。

そもそもパブリックアフェアーズとは

私たちが定義するパブリックアフェアーズとは、「イノベーションの社会的受容性を高める活動」です。

テクノロジーの進化が加速する中、価値観/生活様式/働き方なども多様化し、ユーザーたる生活者が求める新しいプロダクト、サービス、ビジネスモデルが次々に誕生しています。
こうしたものは既存の法制度が想定していない、つまり法律とテクノロジーの進化との間にギャップが生じる事態が発生します。
このギャップを埋めるためには、前述のイノベーション(新しいプロダクト、サービス、ビジネスモデル)の社会的受容性を高め、外部環境をアップデートする必要があります。
飽和した既存市場の拡大、あるいは新市場創出というブレイクスルーを起こすためにこそ、パブリックアフェアーズの重要性が増大しています。

また、パブリックアフェアーズを語る際、よくロビイングとの違いについて質問いただきますが、パブリックアフェアーズはGovernment Relations(GR)Public Relations(PR)、2つの活動領域で構成されています。
つまりロビイングはGRにおける戦術の一つとなります。

これまで、法律、慣習、市場、価値観といった外部環境は不変の前提であり、この環境下で事業を展開する必要がありました。
しかし、従来のPR戦略に、パブリックアフェアーズ最大の特徴であるGR戦略を組み合わせることで、外部環境を可変の対象に変えることができるのです。

パブリックアフェアーズに出会った議員秘書時代

ここで軽く、私の経歴について触れさせていただきます。
大学時代に国会議員事務所で2年間インターンシップを経験。
卒業後、金融機関勤務を経て、その後は正式に国会議員秘書に転身します。

政府与党内には、様々な会議体や議員連盟と呼ばれる特定の政策実現を目的とした国会議員の連合体などが存在して、個別政策のアジェンダセッティング、規制改革、それに伴う予算の見直しなどに取り組んでいます。
私もいくつかの議員連盟の事務局運営を経験させていただきました。
当時は“FinTech”や“シェアリングエコノミー”などといった概念が登場した時代でしたが、こうしたドメインで新規ビジネスに挑戦される、多くのスタートアップにヒアリングをさせていただいたり、共同で勉強会などを企画しました。

そこで目の当たりにしたことは、例えば社会課題解決に繋がる素晴らしいプロダクトやサービスが存在していても、アナログな規制が障壁となり社会実装に至らず埋もれてしまっているケースが少なくないということです。
前述した通り、法律とテクノロジーの進化との間にギャップが生じ、スマートフォンが登場する前、DXという概念が登場する前に作られたレギュレーションが果たして今の時代に即しているかと問われれば、疑問符が浮かぶ性質のものが数多く存在しているのです。
もちろん、ただただ規制を緩和すれば解決ということではなく、それに伴う規律やガバナンスなど論点は沢山ありますし、急激な社会構造の変化は、また新たな課題を生み出してしまい本末転倒です。
外部環境をアップデートするためには自社のためだけに恣意的な動くのではなく、様々なステークホルダーとの最適値を探り合意形成を図る、すなわち社会的受容性を高める必要があります。
そこには、パブリックアフェアーズをフロントで担う各社の政府渉外担当者や業界団体など、多くの方々の努力が存在しており、実際にこうした活動を推進した企業こそ、社会に新たな価値を創出して急成長を遂げています。

日本の現状と世界の潮流

ところが、永田町から民間に戻った際、大きなギャップを感じました。
民間から政策決定者にリーチする手法が、一般にあまり知られていない。
そもそも規制を緩和するなど、自らが外部環境構築の場へ参画するという発想に至らない。
あるいはそうした役割を担う人材が圧倒的に不足しているのです。
もちろん、業界団体と呼ばれる多くの団体もドメインごとに存在して積極的に政策提言などを行なってたり、公共政策部門を設置したり政府渉外担当者をアサインする企業も増えているのですが、その手法やロジックを理解している企業の方が少数派です。

以下は、先ほども引用した経済産業省のレポートからです。

新市場を創出し、イノベーションを社会実装するには、当該市場に適合した外部環境(規制・基準・規範・人々の共通認識等)を構築することが必要です。一方、多くの日本企業は、こうした「外部環境の構築」を苦手としており、革新的なプロダクト・サービスが思うように普及しないといった課題に直面しています。

経済産業省 ​イノベーションの社会実装を支援するサービス産業に関する調査報告
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220527009/20220527009.html

一方で、世界の潮流に目を向けてみると、アメリカではロビイング開示法(LDA)という法律に基づき、約3万人がロビイスト登録をしています。
ブリュッセルのEU本部にも、世界中のグローバル企業がロビー担当者を常駐させています。
彼らにしてみれば、憲法に保障されている「政府に請願する権利」を当然に行使しているだけであり、そもそも外部環境を自ら構築していかなければ、その国の市場から締め出されてしまうという強い危機感も伴い、国境を越えて展開されているのです。
世界の経済ヘゲモニーを握るビッグ・テックは、このような巨額な活動費を投じた熾烈な活動を繰り広げており、まさにルールを制すものが市場を制すると言えます。

アマゾン・ドット・コムなど米テクノロジー大手のロビー活動費が2022年に過去最高を更新したことが分かった。主要5社の合計は前の年より約7%多い7300万ドル(約95億円)規模に達し、反トラスト法(独占禁止法)の改正などを警戒して活動を強化したことを浮き彫りにした。

日本経済新聞「米テック主要5社のロビー活動費、過去最高」

これらを裏付けるように、取り組みの定量的なインパクトも示されており、以下は2022年5月に経済産業省が発表したレポートからの抜粋です。

新たな市場創出を目的としてルール形成に取り組んでいる企業の売上高年平均成長率(CAGR)は、平均的な日本企業と比べて5倍程度になっていることが分かっています。

経済産業省 ​イノベーションの社会実装を支援するサービス産業に関する調査報告https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220527009/20220527009.html

おわりに

今、不確実性の高いかつてないパラダイムシフトの渦中だからこそ、国内外問わずパブリックアフェアーズの社会的要請が高まりつつあります。
せっかく社会課題解決や新市場創出に繋がる素晴らしいテクノロジーが存在していても、社会実装の方法論がわからずに埋もれてしまっているとしたら、日本経済にとって大きな損失です。

だからこそ私は、パブリックアフェアーズにより外部環境が適切にアップデートできる社会を目指して、Next Relationを設立しました。
noteでの発信が、その一助となれば幸いです。

■プロフィール
小野寺 浩太 (Onodera Kota)
大手金融機関を経て、国会議員公設秘書に転身。主にテック領域のスタートアップのカウンターパートとして議員連盟や勉強会の事務局に従事し、法律とテクノロジーの進化との間のギャップを痛感。その後、東証プライム上場企業の公共戦略部門立ち上げを担い、最年少役員に就任。複数の業界団体の事務局を運営。これらの経験からパブリックアフェアーズにより外部環境が適切にアップデートされる社会を目指してNext Relationを設立。現役のカーリング選手でもあり、CNIA2019日本代表。明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科修了

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