「本」

仙台で小さな美容室を経営してます。

2020年の11月にオープンして1年半以上たちました。

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2階です…もっといい写真あったはずなんですが…。(笑)

正直、経営の勉強もせず、独立の心構えもない状態で過ごしてたのですが、突然のチャンスを逃したくない!という半ば突発的な気持ちで、「独立」に飛び込んだのがキッカケです。

「同エリアで長く働いて、顧客様もそれなりにいる」という慢心と「仲間がいるから大丈夫」という油断が、今まで経験したことの無い「焦り」を招き、「現実」が重くのしかかってくることなど、想像もせず11月に開業。従業員は僕とスタイリスト1名、アシスタント2名の4人。アシスタントの2人は4月頃にはスタイリストになる予定でいました。

幸い、12月は業界的にも繁忙期でしたので売り上げは良かったのですが、【スタイリスト2人の売り上げで人件費と固定費(家賃、光熱費、材料費など)をまかなう】。今考えると無謀すぎる経営です。案の定、余裕ある融資を受けたのですが、あっという間に減っていきました。

2月の時点で【5月には底を尽きる】という現実を突きつけられました。経営者という立場上、従業員の生活を優先しないといけないので、ほぼ無給で過ごした記憶があります。毎日、予約表と通帳と睨めっこ。なぜ予約が増えないのか、どうしたらいいのか…毎日が苦痛でした。耳が聞こえなくなり、お酒に逃げて…  お酒を飲んでも現実を変えることは出来ないことも気づかず。一種の現実逃避でしたね。今まで、自分の「感覚」や「経験」で物事を判断してきたので「固定概念」が強くて、周りの意見も聞かないで生きてきた結果だったと思います。会社所属でどれだけ自分が守られていたのか、痛感させられました。

逃げ場なく、現実逃避するお酒も美味しく飲めない。目の前の世界は濁っていて、うまく笑えない。そんな日が1か月ほど続いてたある日、「本」についてお客様との話が盛り上がったんです。現実逃避にもなるし、自分の知らない世界にトリップできる最善の方法だよ。と。

その日、Instagramのストーリーで顧客様へアンケートを取ってみました。(世の中すごく便利ですよね)

僕の生活を支えてくださってる、そしてサロンの基盤を作ってくれたお客様の声を聞けて、お客様の見えなかった側面が見える貴重な体験になれば、と思ってました。

アンケートでは、「松浦弥太郎さん」「原田マハさん」「東野圭吾さん」「江國香織さん」「伊坂幸太郎さん」「太宰治さん」「湊かなえさん」「三浦しをんさん」など、あとは、新書や経営学、自己啓発からタレントさんのエッセイなど。本当にたくさんのお声を頂き、あの時の嬉しい感覚はこの先もずっと忘れないです。

もちろん、全部はまだ見きれてないですが、中でも原田マハさんの「アートミステリー」と呼ばれるジャンルに引き込まれ、あっという間に何冊も読破。

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絵画と呼ばれる嗜みは、なんとなく足を踏み入れてましたが、画家の生涯や、画家を取り巻く人間模様などは想像したことが無く…

原田マハさんの作品は、実際に存命した画家や画商の史実をもとに構成されたフィクションで、「もしも、この画家とあの画商が繋がっていたら…」というストーリーなんですよね。そして、原田マハさんの言葉の表現がすごく綺麗。というか、情景が浮かぶんですよね。もっと言えば、ストーリーの中に自分が入り込んだ感覚。目の前でゴッホが絵を描き、ゴーギャンがヤキモチをやき、2人は喧嘩をして…というような、、

原田マハさんの小説を見て、「ゴッホ」という画家をちゃんと理解しました。

【リボルバー】

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【たゆたえとも沈まず】

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【リボルバー】はゴッホが主役。

【たゆたえども沈まず】はキーマン的役割。

と言ったところでしょうか。

そこから、ゴッホについて学び、画集を買い、もっと好きになって…

気づけば「ゴッホ」という画家の波瀾万丈な人生と、その浮き沈みに翻弄されながら描いた作品に虜になり、ゴッホを知って、絵画に興味を持ち、いつのまにかネガティブな自分の感情は消えて毎日が色とりどりな世界が広がり、「5月には…」と思っていた壁もみんなで乗り越え、美容師を続けていける喜びを感じてました。

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本を読む時間は、通勤と帰宅の15分ほど。無理なく生活の一部に取り入れることで、マイペースに読み進められる。そして、その人が丁寧に時間をかけた文章を、丁寧に読み解く。相手の気持ちを考えて読む。登場人物になりきって読む。登場人物の恋人や家族になりきってみる。一冊の本が何通りもの楽しみ方を教えてくれる。


オープンしてから今日まで、スタッフの入れ替わりなどもありましたが、おかげさまで現在は何事もなく、スタッフみんなでたくさんのお客様のヘアライフを楽しむお手伝いをさせて頂いてます。

「本」を知らなかった僕は「井の中の蛙大海を知らず」がぴったりでした。こんなに素晴らしい文化を知らなかったことが、どれだけ世界を狭くしていたのか… 

でもこのことわざ、「されど空の青さ(深さ)を知る」という続きがあるそうです。狭い世界で自分の道を突き詰めたからこそ、その世界の深いところまで知ることができる」という意味である。

お客様から教えていただく素敵な文化をもっと吸収して、美容師という職を突き詰めて、美容の素晴らしさをもっと深いところまで理解していけるように頑張ります◎

次回もまた、自分の好きなことを書きます◎


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