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スキー場で漫画のようなことが起きた話

今回は小娘が大学の実習の講師側として参加したエピソードについて綴りたい。

実習のお手伝い

小娘は物心がついた頃にはスキーの板を履いて、滑っていたこともあり、中学1年生の時にSAJ1級を取得していた。

そんなこんなで大学の部活もスキー部に所属して活動していた。そのスキー部の先輩で、なんとハンドボール部とスキー部を兼部する先輩がいた。この先輩、もともとアルペンスキーをやっていた事もあり、滑りがとても上手なのだ。

その先輩が所属するハンド部の監督(教授)が、毎年冬休みになると、実習で生徒を引き連れてスキー場で滑りを教えるのだが、インストラクターが足りないという訳で、先輩からの推薦で、私はインストラクターとして実習のお手伝いをすることになった。

ちょうどその先輩はその時に体調を崩してしまい、小娘が代わりに先輩が受け持つはずだった一番上のクラスを担当した。その時にとんでもないことが起きてしまった。

実習のグループ分け

私が受け持ったクラスの受講生(小娘の同級生)は、みんなスキー経験者で、ある程度滑る事ができる人たちだった。一番教えやすいところを監督が、小娘に預けてくれたのである。

今回のこのグループ決めは、自己申告スタイルだった。年にどのくらいスキーに行くか、これまでどのくらいスキーをしたか。

  • スキーをしたことがなく、一からの初心者である。
    ↑教授担当

  • 何度かスキーをしたことがあるが、まだ自信を持てるほどではない。
    ↑ハンド部の先輩①担当

  • プルークボーゲン(ハの字滑り)をすることができる。
    ↑ハンド部の先輩②担当

  • パラレルターン(板を平行にして滑る)をすることができる。
    ↑小娘担当

大きく分けてこんなふうにグループ分けされていたと記憶している。

なんかおかしいぞ

レッスンの内容は、基本的にはたくさん滑ることを目標として、様々な練習方法を提示するような形で行った。

人数はおそらく13人くらいはいたのかなと思ったが、そのうちの1人の様子がどうもおかしい。明らかにスキー慣れしていない。

1人だけ、ブーツや板を履くのに一際時間がかかり、リフトに乗る時もなんだかおぼつかない。しまいには、リフトから降りると転倒し、リフトの動きを止めてしまう始末。

とりあえず、班員全員をリフトから降りたちょっといったところに整列させ、これからの実習期間にどんなことをするのかを話そうと思っていた。

あろうことか、彼は一度もスキーをしたことがないに等しいレベルであるのに、自己申告で一番上のコースを選択したんだそうだ。大学生にもなって、そんなことをして周りに迷惑をかける人がいるなんて、小娘は予想もしていなかった。

地獄のマンツーマンレッスン

リフトに乗り、上まで来てしまったわけで、もう後戻りはできない。彼を下まで運ぶことを決意した。

申し訳ないが、他の班員には、ゆっくり自分のペースで下まで降りるように指示をして、私は彼を下まで補助しながら降りることに決めた。

スキー場でアルバイトしていたこともあり、子どもを補助をしながら滑ることはしてきたが、成人男性を補助した経験はない。その上、彼はなかなか身体が大きく、小娘の1.5倍ぐらいの体重があったのではないかと推定される。

小娘は、彼が履くスキー板のトップを手で押さえ、後ろ向きになりながら滑った。初心者は自分の体重をスキーの板に分散させることがまだできないため、ハの字滑りをしても、抑えきれず直滑降になってしまう傾向がある。

彼もまた、自分の体重を支えきれていなかった。自分の体重以上の巨体を支えるのも、当時の小娘には限度があり、こちらも休みながら滑らないと、手がもたない状況だった。

最初は緩やかな斜面だったが、初心者にとっては少し急斜面になるところがある。ただそこを通らないと、下にはいけない。板を外して歩かせるという方法もあったが、それでは日が暮れてしまう。とりあえず、補助滑りを継続して向かうことにしたのだが、これが災いを呼ぶことになるとは…

漫画のようなことが起きた

そのまま彼をなんとなくターンさせながら、補助滑りを続けていた。ターンの際、一時的に彼の板のトップが真下になる瞬間があるのだが、ここが本当に重くてしんどい。

1本目でしかも、上からずっと彼の体重を支えながら後ろ滑りをしてきた小娘にも、自分の手の握力が弱まっていることがわかった。

小娘のもともと20キロ程しかない握力も虚しく、耐えきれなくなり、ツルッと板のトップが滑り、巨体が小娘めがけてスルーと滑り始めた。やばいっ!!!と思った時には、彼が自分の身体の上に覆い被さるように倒れ、小娘自身は身体を起き上がらせることができなかった。

下で受講生(同級生)たちが見守る中、インストラクターである小娘は、ゲレンデのど真ん中で受講生の下敷きになってしまったのだ。

当時19歳だった小娘。
ゲレンデマジックなるゲレンデで恋が実る的な理想を膨らませるようなお年頃なのに、なぜ私はこんな巨体の下敷きになっているんだと、青空を眺めながら、ボーッとしてしまった。

彼を無理矢理起こし、もうそこから小娘の集中力も切れ、「歩け!」と言ってゲレンデの端を歩かせた。なんとか、緩やかな斜面となり、そこはまた補助をしながらなんとか下まで、彼を連行することに成功。教授に事情を説明して、引き取ってもらうことになった。その後、彼は教授にこっぴどく怒られたことだろう。

その後、彼を抜いた班員と平和にレッスンが始められたのだった。今となっては笑い話と化しているが、当時は他の班員への申し訳なさで居た堪れなかった。

もう成人男性の初心者の面倒は見たくないと、心に誓った日だったのでした。


写真は年末に訪れたスコットランドの夜景🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿
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