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現実世界で「もののけ姫」のアシタカに出逢った話。

満員電車に揺られ、人工的に作られた、自然とは無縁の世界で、当たり前のように生きる。

自分が使っているモノ、食べているモノ、依存しているモノの起源を知らず、いつから人間はこんなにも機械的に生きるようになってしまったんだろうか。

ORIYAMAKEから空港に向かう帰りの車の中で、そんなことを考えていた。

"鶏をはやす"

ここの地域の人は「鶏を絞める」ことを「鶏を生やす」というらしい。動物の命を頂戴することは、生きていく上で自然の摂理で、避けられないこと。だからこそ、命を頂く感謝の意も込めて、あえて「生やす」という言葉を使うらしい。

小娘の希望で、今回は秋田名物の比内地鶏を自分たちで生やし、比内地鶏のきりたんぽ鍋を作った。この地域では、来客への最上級のおもてなしとして、来客が来る前に鶏を生やし、その生やした鶏を使った料理を振る舞う文化があるんだとか。

今回は私たちゲスト側が体験アクティビティとして、鶏を生やした。自らの手で、生きている動物の命を頂戴するということが初めてだった小娘。重い空気が漂った。鶏の足をくくり、動けないようにした後、雌鶏の命を頂戴した。

最初は自分でやろうと心に決めていたけど、鶏の顔を正面から見た時に身体が動かなくなった。結局友人と2人でおこなう形になったのだが、ほとんど自分は何もできなかった。

自分が日々頂く全ての食べ物は、誰かがこうして生き物の命を頂戴している。当たり前のことを、しっかりと当たり前のこととして認識できるている人は、そんなに多くない。小娘も以前はそうだった。

命を頂いた後の鶏の体はまだ温かくて、柔らかくて、生きていた証に包まれていた。その温かさが、また自分がこの鶏を生やした事実であり、罪悪感と感謝とが入り混ざり、複雑な気持ちにさせた。その後、体が冷たくなる前に脱羽をしなくてはならず、その複雑な気持ちをかき消すかのように無心になって、羽を抜いた。

その後、脱羽しきれなかった産毛を藁を焚いた火にかけて燃やした。常に鶏の体を持っての作業だったが、包丁を入れるまで、鶏の体は温かかった。

その後各部位に捌いていき、よくスーパーで見るような鶏肉となった。捌く中で、手が血で染まった。全て終わる頃には2〜3時間が経過していた。

動物特有のきつい臭みはほとんどなかったのだが、自分の手は、鶏の臭いが残っていた。不思議なのは、その臭いを嗅いでも嫌な気分にならなかったこと。むしろ、ふとした時に、手に鼻をつけ、何かを抱きしめたくなるような自分がいた。今回頂いた命は、私の一部となって生きる。だから、私はこの与えられた自分の命を大切に、これからも生きていきたい。

誤解されるマタギ文化

この地域は狩猟文化が残る。最近はアニマルライツを訴えたり、ベジタリアンやビーガン文化が流行り、狩猟文化は批難の的になったりするらしい。

織山さんや知り合った狩猟免許を持つ方も、SNSで狩猟に関して批難の言葉をよくもらうと言う。批難する方の気持ちもわかるが、マタギ体験を通して、それは違うなと思った。

マタギは山に入る前にお祈りや儀式をする。もろびを焚き、その煙を身体にふり、人間のにおいを取るんだとか。また、山に入る前に、神様にお祈りをしてから入山する。

もちろん狩猟だから、動物の命を頂くわけだが、狩猟して良い動物は時期によって定められ、やたらめったら狩ることはできない。山の主たちの頭数管理をしながら、時には怪我している動物を癒しながら、山と向き合う。それがマタギなのだ。また、熊が里に降りてこないように、あえてマタギが山に入り、熊が人間との一定の距離を保てるように熊の訓練もするのだとか。

動物を獲えて、喜ぶのではなく、代わりに儀式をする。それも獲えたマタギだけで行わず、その地域の住人たちと全員で行うんだそうだ。それだけ、命を頂戴した動物たちに感謝を込めている証だ。人間にお葬式があるように、頂いた動物の魂を山に返す、マタギは山の動物たちに敬意を持って接していた。動物の住処や命に関わる仕事だからか、一つ一つの所作や儀式がとても丁寧なのだ。

そんな人たちを批難することがどうしてできようか、そんな気持ちになった。

そんな風に、山の動物たちと里にいる人間が共存するこの集落で過ごすことで、まるで宮崎駿監督が描くジブリ映画の中にいるかのようだった。

このORIYAMAKEのオーナーの織山さんが、私の大好きなジブリ映画「もののけ姫」の主人公、アシタカに見えてたまらない。

どうかこれからも、
根森田集落と山の架け橋でいてください。


写真は現代版アシタカの織山さん✨
以前のORIYAMAKEに関する記事はこちらから💁🏻‍♀️

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