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他者といっしょに考える「集合知」、「ストロングタイズ:強い結びつき」と「ウィークタイズ:弱い結びつき」


”言葉”とは、
自分の考えを相手に伝え、
相手の考えを自分が知る、
そして
お互いの考えをやりとりしながら
いっしょに考えていくための
ものになります。


科学は「みんなで考える」
ということをすごく大事に
してきました。
もちろん、科学研究のテーマは
たくさんありますから、
何十万人もの科学者が
みんな同じ問題に取り組んでいる
ということはないですが、
それでも、同じ問いをけっこう
たくさんの科学者が考えて
いると思います。


単純に考えても、
一つの脳で考えるより、
いくつもの脳でやったほうが
正しい答えを思いつきやすいのだとか、
だから、こんなに発展して
きたのではないか、と思います。


よく
「三人寄れば文殊の知恵」
ということわざを聞きますが、
文殊というのは文殊菩薩のこと。
文殊菩薩は「智慧」、
すなわち、悟りを開くはたらきを
つかさどる菩薩です。


仏像に刻まれているときは
獅子に乗っていることが多く、
とにかく、とても賢いわけです。
一人で考えていてもダメだけど
複数で考えれば文殊菩薩レベルの
賢さになれる、ということを
言っています。


科学はこのことわざを”地”で
行っているといえますが、
科学の「みんなで考える」は
たんに複数の頭を使う、
ということにはとどまらず、
「みんなで手分けして考える」
つまり、分業です。


みんなで考えることによって、
人類は一人ひとりの愚かさを
克服し、科学はそれをすごく
うまく利用して発展してきました。
一匹ずつをとるとたいして賢くは
ないけれど、集団になると
一匹にはない賢さが現れる、
こういう現象は
「集合知」とか「群知能」と
呼ばれています。


情報社会になり、ビッグデータが
トピックスになっていますが、
そこには人々の知識や知恵など
多くの情報が集まり、
「集合知」という言葉が
用いられるようになりました。


広義には
「生命体の群れのなかに宿る知」
のこと、見ず知らずの他人同士が
知恵を出し合って構築する
知のことを意味しています。 


これは人間にかぎらず、
アリやハチが集団で生きて
いくために、駆使している
知恵のようなものも含まれます。
たとえば、そのアリですが、
一匹ではそんなに賢くはない、
だけど群になると、
すごいことをやってのける。


よく知られているのは、
エサ運びです。
一匹では運びきれない量のエサが
見つかった場合、最初に見つけた
一匹はその一部を巣穴に
持ち帰るのですが、フェロモンという
物質を地面になすりつけながら
帰ってきます。


アリは目が弱いので、
そのフェロモンの匂いが
頼りになります。
他のアリたちもフェロモンの
濃いほうに濃いほうに進むことで
その道をたどっていきます。


そして、エサにたどりついて
もって帰ります。
そのときにそのアリたちも
フェロモンを分泌します。
こうして、フェロモンの匂いで
「見えない道」みたいなものが
できてくるというわけです。


何よりもすごいのは
何匹ものアリがこの道を
行ったり来たりして、さらに
フェロモンをなすりつけているうちに
この道がだんだんエサと巣穴の
最短経路に近づいているという
ことです。


しかしながら、
この”最短経路を見つけろ”
という問題は実はすごい難問で、
コンピュータ学者たちは
知恵を絞って、良い答え方を
見つけようと苦労してきましたが、
アリはたくさん集まることによって
この問題を解いているわけです。


だから、最近はアリの真似をして
最短経路を見つけるアルゴリズムを
つくろうという研究も盛んに
なってきました。
アリですらやっているのだから
私たちも「集合知」を目指そう、
自分の抱える問題をいっしょに
考えてくれる仲間をつくること。


「集合知」は、
オープンソース・ソフトウェア、
web2.0、wiki、クラウドソーシング
などで典型的に用いられる概念、
単純化すれば
「個人の知より集団の知のほうが勝る」
という考え方です。


しかしながら、
知恵はいくら机にかじりついて
勉強しても身につきません、
日々の実践の中で養われていくものです。
アリは「集合知」を実現するために
フェロモンというコミュニケーション
手段を使っていましたが、
人は「集合知」を実現するために
文章を使ったコミュニケーションに
頼る、現場で人とのコミュニケーション
を通して「知恵」を磨くことに
力を注ぎます。


そんな時代に求められるのは
どんな力なのでしょうか。
より高度で幅広い専門知識を
身につけることが必要だと
考える人もいるかもしれませんが、
一人が習得できる専門知識には
限界がありますし、


AI、ディープラーニングが
もっと進化すれば、人間の
知識蓄積能力など、何の
価値もなくなってきます。
であれば、自分にはない知識や
専門性はその分野の専門家を頼る、
これができる人脈を持っている人こそ、
これからの時代の
「仕事を続けられる人」では
ないかと思っています。


だからといって
この人たちは、自分自身は
突出した専門性を持っている
わけではありません。
けれども、各分野の専門家を
コーディネートするための
インデックスとなる幅広い
知識は持っています。
目の前の課題を分析し、
その解決にどんな「専門性」が
求められるかを判断することが
できるのです。


そして、
手持ちの人脈を活かして
解決にあたります。
いわば、プロデューサー的な
役割です。
現実の問題解決に対して、
専門家がフルに力を発揮できるのも
このようなプロデューサーが
いてこそのこと。


一人の専門家が高度化・複雑化
した課題に向かったとしても
課題の一部にしか対応できない
ことが多いですが、
プロデューサーが各分野の専門家を
集めることで、チームとしての
課題解決力は格段にアップし、
隙がなくなります。


このような役割は、
人材育成や組織開発、
コミュニケーション
エンジニアリングといった
領域のコンサルティングや
研修を中心に事業活動を
展開していますが、
これからは
「個人のビジネスパーソン」
にも求められるようになって
くると思いますし、
各分野の突出した専門家は
今後も求められ続けますから、


社内のリソースで解決が
難しい課題に直面したときでも
各分野の専門家とのネットワーク
を「社外」に持っていれば、
適宜意見を聞くことができますし、
”自分以外”、”自社以外”の専門性を
動員できる力は、これからの時代、
一つの分野の高度な専門性を
凌ぐ力になると思います。


知識の幅を広げること、
そして、パーソナルな出会いを
きっかけに、頼りにできる人脈を
広げることの積み重ねが
「プロデューサー」としての
力を養っていきます。
もちろん、自ら刺激を求めて
アクションを起こすのもいい
と思いますが、


イノベーションが求められる今、
一人ひとりの教養や感性がより
問われるようになっています。
常に自分の好みで取捨選択するうちは
教養・感性の幅は広がっていきません。
そこに磨きをかけるためには、
プライベートでの多様なインプットが
大切なんですね。


とくに
初対面のメンバーが含まれている
誘いは、新たな出会いの機会になる
と思いますし、意外なきっかけで
意外なつながりが深まることも
ありますから、せっかくの機会は
大切にするに越したことはないと
思います。


「ストロングタイズ:強い結びつき」
「ウィークタイズ:弱い結びつき」
という分類を1973年に提案した
「マーク・グラノヴェッター」氏は
米国の有名な社会学者ですが、
ホワイトカラーの転職活動を
調査した結果、自分とまったく違う
コミュニティーにいる人と
つながった方が大きな価値が
生まれるという事実を発見し、
そのつながりを「ウィークタイズ」
(弱い結びつき)と称しました。


どちらかというと
「遠い」関係にあることこそが
特徴で、
住んでいる地域も違えば、
就いている職業も違う、
これまで経験してきたことも
異なっているので、会って話をすると、
「なんのことか、よくわからない」
ということもあります。
このような自分の日常とは違う世界に
生きている友人からもたらされる情報は、
ときに思いがけない新鮮さをもって
自分に迫ってくることがありますし、
自分にとって新しい情報が
得られる可能性が高いわけです。


つまり、
毎日顔を合わせるくらい強い絆で
つながる人間関係よりも、適度に
顔を合わせる程度の人間関係の方が
有益な情報をもたらしてくれる
といいます。
実際、84%の人が
「稀にしか顔を合わせない人の方が
有益な情報をくれた」と答えています。


こうしたことから、
真のビジネスチャンスは
薄い関係によって繋がれた
「ウィークタイズ」によって
もたらされることが多くあると
マーク・グラノヴェッター氏は
示しています。
自分が興味、関心のある場所に
足を運びましょうというのは、
まさに、このウィークタイズの
構築のためともいえると思います。


一方、
ウィークタイズの反対の
「ストロングタイズ」は、
親友や両親、家族、パートナーなど
深いつながりや絆を持った
人間関係のこと。
本来なら「ストロングタイズ」こそ、
最も信頼でき、頼りになる存在
ですが、時には近しいからこそ
知られたくない問題もあるはず。
そうしたとき、プライバシーが
守られ、信頼もできる
「ウィークタイズ」をたくさん
持っている人は、心が折れずに
すむ傾向があるといいます。


「ウィークタイズ」をたくさん
持っている人というのは、
「まず、あの人に相談してみよう」
と頼りにもされるものです。
たとえば、
専門外の相談を受けたときなど、
「知り合いの医者を紹介しますよ」
「弁護士の知り合いに連絡を
取りましょうか?」
「詳しい大学の教員に聞いて
みましょうか?」というと
喜ばれたりします。


そうして築いた関係を
細く長く続けていくと、
お互いの困りごとを
相談するようにもなり、
「それならいい人を知っているから
紹介しましょうか」と
さらに「ウィークタイズ」が
広がることもあります。


また頻繁に顔を合わせなくても
メールやSNSなどを活用し、
「ウィークタイズ」とつながって
いれば、いざというときに
助けになってくれると思います。
どんな形であれ、人から信頼され、
頼りにされている人には
大きな安心感があり、自然に
人が集まってくるはずです。


何が「キャリアの転機」に
つながるかわかりません。
日頃から仕事に向き合う
姿勢はもちろん、人との
つながりを何よりも大切に
したいものですね。


あなたをいつでも応援しています!
ありがとうございます。


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