父と愛犬の夜の散歩。

小学校4年生の誕生日。
念願の子犬を両親からプレゼントしてもらいました。
シーズー犬の男の子。
名前は「ポピー」
なんとも言えない愛くるしさで
毎日が楽しくて仕方ありませんでした。

待ちに待ったお散歩デビューの日。
短い足とコロコロの体で一生懸命付いてくる姿が
とても可愛かったのを覚えています。

犬の成長は早くあっという間に
成犬になりました。
いつも私が夕方に散歩に連れて行っていたのですが、
習い事を始めたのをきっかけに
父の経営する理容店の営業時間が終わってから
父が私の代わりにポピーのお散歩に行くことになりました。
お店は自宅の一階にあり、
リビングとお店はドア一枚で仕切られていました。

ある夏の夜。
いつもの様に散歩が待ちきれない様子のポピー。
お店から部屋に入ってきた父を
待ってましたと言わんばかりの勢いで
足にしがみつき全力で尻尾をふり
お散歩アピール!!
ですがその日は最後のお客さんが閉店間近に駆け込み
かなり閉店時間が遅くなっていました。
疲れている様子の父に
これまた猛アピール‼
それを見た父は片付けもまだ残る中
ポピーにリードを付け家を出ました。
母が今日は早目に切り上げて帰るように言って見送っていたので
時刻は夜の11時を過ぎた頃だったと思います。

一時間程経っていたでしょうか
店の扉が開いた感覚がありました。
私はいつもの様にポピーの足を拭くタオルを手に
店に出ました。

すると・・・

そこには全身ずぶ濡れで、
雫が床に落ちている状態の父。
その腕に抱きかかえられて小刻みに震えているポピーの姿。
父の肘や膝からは出血していて
ポピーもまた、ずぶ濡れでした。

外は全く雨は降っておらず
どうしても考え付かない状態でした。

何があった⁈


私の声にびっくりした様子の母は
店に立ちすくむ父を見て慌ててバスタオルを手に
駆け寄っていきました。
そして父はポピーを抱きかかえたまま
黙ってお風呂に入りに行きました。
しばらくして私はポピーを受け取り
店に出て乾かしていました。
すっかり元の姿を取り戻したポピーは
何事も無かったかの様に
お気に入りのおもちゃをくわえて
投げて♪
と尻尾を振りながら催促してきました。
その頃には父も落ち着いた様子で
少しずつ何があったのか話しだしました。

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