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終わらない夏

「今日も暑いなー」と後方にいる 吾郎 から声が飛んできた。
僕も「ああ。暑いな」とその言葉をかわすように発した。

8月下旬ということもあり、滝のように汗が流れる。

何して遊ぶかも決めていない僕と吾郎は、いつもの公園にいた。

「そうだ!久しぶりに〇〇池に行こうや!」と吾郎が言った。
僕は、あまり乗り気ではなかったが、特にすることもなかったので一緒に行くことにした。

いつもの公園から、自転車で30分かかる○○池は、ブラックバスが大量に繁殖しており、2年程前からよくバス釣に行っていた。

そういえば、「〇〇池ってなんか人の名前みたいだよな」と吾郎が言った。
「〇〇っていう人が作った池なのかもな」と僕は根拠のない返しをした。

猛暑の中、○○池へ無事に到着した僕達は、いつものようにブラックバス釣りを始めた。

「先に3匹釣った方が勝ちな。」と吾郎は言った。

僕は「今回も勝ってやるよ。」と余裕な表情で言葉を返した。

いつものごとく、僕が順調に1匹、2匹と釣り上げ早くもリーチとなったが、
久しぶりの勝負ということもあり、吾郎の気合いの入り方が凄まじかった。

そんな調子でバス釣りを続けていると、吾郎から「うわぁ!!」と大きな声が聞こえた。

僕は驚きながら、隣を見ると吾郎がいなくなっていた。

僕は、現状を理解することができず、数秒間動けないままでいた。そして、気がついたら僕は自転車を漕いでいた。

その日の夕方から、○○池を中心に吾郎の捜査が始まった。

1週間、1ヶ月経っても吾郎は見つからなかった。

遂に吾郎は見つからないまま、捜査は終了し、未解決事件となった。

吾郎との思い出が薄れてしまった僕は、社会人となった。

久しぶりに実家に帰省していた僕は、思い出の場所を散歩していた。

いつもの公園には、小学校高学年くらいの子供たちが遊んでおり、吾郎との記憶を懐かしいと感じながら思い出していた。

子供たちの「今日何して遊ぶ?」、「スマホゲーム!」という声が飛び交っていた。

小学生からスマホかと思いながら、少し残念になりがらいつもの公園を通りすぎた。

「〇〇池に行こう!」、「いいね!」、「〇〇池の前って吾郎池って呼ばれてたみたいだよ」という会話が飛び交ったのは、僕が通り過ぎた後だった。


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