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うどんサイクリング部(明日香村編)

7月某日。

朝から、もう暑い真夏の日。

集合場所の、近鉄新田辺駅前に、早めに到着した羊好大尉。友人のひうらー伍長はまだ来てないようだ。

待ってるついでに、駅前のなか卯で、朝メシ食おう。ざるうどんにしましょう。

冷やしざるうどんが、生姜効いてて美味すぎる!

店内も涼しいし、お腹も満たされた。
もう暑いので、外に出たくなくなっちゃったし、このまま帰りたいな・・・。

やってきたひうらー伍長に、そう提案したら、
「朝も早よから、オンドレがどっか行こうと呼び出しておいて、帰りたい?アタマおかしいんか!💢」
と、キレられる。

ヒーーー!?

というわけで、新田辺駅から近鉄電車を乗り換え、乗り換えして、橿原神宮前駅にやって来た。

奈良県・明日香村近辺の古いお寺を巡りながら、サイクリングするのです。
うどんサイクリング部活の一環だ。うどんは、もうさっき食べちゃったけど。

早速、駅前でレンタサイクルの手続きをする。
今日は、電動サポ付き自転車にしよかな。

「ええ?電動自転車なん?そんなん、サイクリングの意味ある?健康のために運動すんやろ?」
と、ひうらー伍長が、ヨコから文句を言う。

どうやら、普通の自転車でのんびりサイクリングするつもりだったらしい。

哀しいけど、そんな体力が、今の我々にあるワケないやろ。
秋冬ならともかく、こんな真夏のカンカン照りの中、明日香村の丘を越え坂を下ってはまた上り、と自転車漕いでたら、途中でバテて、熱中症で死に至るわ。

と、明日香村の起伏をなめた発言を封殺し、電動自転車を2台レンタルする。

では、橿原神宮前駅前から、うどんサイクリング、スターートです!

うっとおしいマスクを外し、ご機嫌で鼻唄歌い、口笛を吹きながら、電動自転車をぐんぐん漕ぐ。

暑いはずなのに、自転車乗って進んでいると、風も当たってとても快適だ!
ヤッハー!!

奈良ののどかな田園風景が広がり、道路には車も人もほとんど見当たらず。

うどんサイクリング、サイコー!!
いつまでたっても漕いでいたいーなーー。
と、ルンルン気分でぶっ飛ばしてたら。

「あ、ちょっと停止して。道の脇に寄せて。」
と、交通課の白バイよろしく、ひうらー伍長が突然停止を命じてきた。どうしました?

「道、わからんよーになった。あの寺がコッチで?川があっちで右手に曲がり?ぐぬぬ・・・」
とか、スマホ片手に苦悶している。

羊好大尉にとって、楽しいサイクリング自体が目的なので、行く先の寺なんて、正直どーでもいい。

それより自転車止まると暑いし、汗もダラダラ流れてくるし。早く進みましょうよ?

・・・まーーだーーー?

「うっさい!まだや!えーと?川を渡るまえに右折?左折?どっちや?ぐぬぬ・・・」

もう、どっちでもいーじゃん、右でも左でも。
奈良やねんから、どっかの寺にはたどり着くって。
早く行きましょーよー。

「うっさい!どの寺でもええワケないやろ!?アホなんか?ゔーん、ぐぬぬ・・・」

とか、この調子で進んでは止まり、止まっては進み。
スマホのGoogleマップとにらめっこしながら、ちょっとずつ進む。
もっと、スイスイ行きましょうよー。

「うっさい!!宗教心の欠如したうどんバカは黙ってろよ。コッチやコッチ!!行くぞーー!」

とか、飛鳥寺に向かって自転車で右往左往してたら、道の向こうに大きな鳥居が見えた。

あっちに鳥居⛩みえますよー、と飛鳥寺への道標になるかと思ってひうらー伍長に注意喚起したら。

ひうらー伍長はキラリ、と目を光らせ、
「たまにはいい事言うやないか、羊好オタクくん。そうか、そんなにもそこの神社にも行きたいのんか。ヨシヨシ」

と、独り合点し、自転車のハンドルをグイッと曲げ、神社の方にグングン進み出した。

え!?い、いや、ちゃいまんねん、神社行きたいなんて私、ひっとことも言ってない。
道標になる思て言うただけで。ねえ、ちょっと聞いてます?ねえってば!?
と、慌てて訂正するが、全然聞いてない。

あー、もー、いらんことゆうたー( ;  ; )

鳥居⛩のふもとに到着。
『飛鳥坐神社』とかいう神社を、急遽参拝するハメになった。

駐輪場に自転車置いて、神社へと歩き出す。
真夏なので、地獄のように暑い!

しかも、そのナントカ神社はちょっとした小山の上に建ってやがり、このクソ暑いのに階段を上ってかなあかんやないの。

「いやあ、感心かんしん。これからも、この調子でアンテナ張って、神社仏閣みたら報告するよーに!」
と、ご機嫌なひうらーが、石段を上りながら、勝手な事を言うてる。

階段、のぼんの、しんどい!!
アンテナはしまっとこう!
私は、楽しい、サイクリングしに、きた、のに!

かいだん、キライ!( ;  ; )

飛鳥坐神社に無駄に寄り道し、余計に体力を消耗したので、最初の目的地『飛鳥寺』に到着した時には、暑さとも相まって、グッタリしていた。

フラフラになって自転車を降り、金星の表面みたいな日光に突き刺されつつ、ふらふらと飛鳥寺本堂前にたどり着く。

「御朱印ーー!」
と叫び、ひうらー伍長はどこかに走り去って行った。

この灼熱の中、なんでアイツはあんなに元気でいられるんだ?

高い参拝料を払って、ぬるいクーラーが効いた寺の本堂に入場し、ようやくひと心地。

ふはあー、暑さで死ぬかと思った。

見上げれば、本堂中央に、飛鳥大仏が涼しそうに座っておられる。
いいですねー、ここは涼しくて。うらやましいです。

やがて住職自ら語る、飛鳥寺の縁起話が始まった。

「・・・この飛鳥大仏は、見上げる角度によって、喜怒哀楽のかたちが違って見えます。よろしければ、みなさんも、いろんな位置から大仏さまを拝んでみてください」

ほおー、と参拝客たちは、あちこちに移動しては、しげしげと大仏を見ている。

が、羊好大尉は、本堂の扇風機の風がもっとも当たるベスト・ポジションから、一歩も動かず。

ひうらー伍長が、「逆から見る大仏は表情が違ってみえるよ。ありがたいから見てみなよ!」とか言ってくるが、シッシッ!と追っ払う。

我こそは仏を守る、不動羊王なり!
ここを一歩たりとも動くわけにはいかんのだ。(涼しいから)

堂内を観覧するわけでもなく、扇風機の前に長時間立ち尽くしてたら、住職から不審な目で見られだし、仕方なく寺を出る。

守護神・不動羊王を追い出すなんて、この寺も終わったな。

天空の太陽はいよいよ燃え盛り、暑さはおそらくピークに達している中。

次の目的地、岡寺を目指し、電動自転車を走らせる。

はーー、涼しい!自転車を乗ってると🚴‍♀️、風切って気持ちいいねん!
サイクリングはサイコーやね!

もう、岡寺なんて行かんでよろしやん!どーせ、寺名のごとく、岡の上に建っとんやろ?
しんどいがな!暑いがな!!

「宗教心欠落野郎のノータリンは黙ってろよ。何しに明日香村くんだりまで来てんねん。寝言は寝てゆえ。あッ、止まって!また道わからんようになった!」

と、またもや白バイのごとく停止を命じ、スマホとにらめっこしだす、ひうらー伍長。

・・・なかなかスムーズにサイクリング、できないものですねー。

電動自転車で行きつ戻りつし、岡の上にある、岡寺に到着でござる。

乗ってた自転車は、岡の裾もすその駐輪場に停めておき、岡寺への参道坂を上りはじめる。

シンドい!坂キツい!アッツい!
上り坂、キライ( ;  ; )!

不平と不満をゲロみたいに吐きまくりながら、トボトボと参道をあがっていく。

ひうらーは伍長は、オーストリア山岳歩兵のようにスイスイと坂を上がって行く。堂内に着くや、
「御朱印ーー!」
と叫んで、境内に消えていった。

なんであんなに元気なんだ?
ヤツには、なにかしらの仏の加護がついてるに違いない。

さっきの飛鳥寺の3倍くらい広めの本堂は、4倍くらいクーラーの効きが悪く、しかも扇風機がない。飛鳥寺には2台もあったのに。

不便な岡の上に建てといて、どうゆう寺やねん。
ダイキンの業務用冷房機を、10台は導入しとくべきやろ!
それだけのカネは、信者の善男善女からまきあげとるやろ!(根拠なし)


けしからん!と腹を立てた羊好大尉は、1ペソも賽銭箱に入れる事なく、ドスドス!と足音荒く岡寺本堂を退去した。

その後、お堂そばの休憩所で、扇風機の風が当たりまくる場所から、でん!と腰を落ち着け、ビタひとつ動かず。

信心深いひうらー伍長が岡寺境内をウロチョロし、参拝し、奥之院に詣で、写真を撮りまくってた小1時間。

羊好大尉は、休憩所の警備員として、保安にあたっていた。(あー、涼しい)

「・・・そこでなにしてんの??はあ?せっかく岡寺来たのに、ここで1時間、ずーっと扇風機にあたってベンチに座ってただあ?アホにつける薬はねーな。」

と、ひうらー伍長に吐き捨てられる。

御朱印その他をゲットし、ホクホク顔のひうらー伍長をよそに、ほうほうの体で岡寺を退去する、かわいそうな羊好大尉なのでした。

寺の裾のすそに置いてた、電動自転車『3代目タクちゃん』号(勝手に命名)に乗り込み、明日香村サイクリング、再開だ!

羊好大尉にとって、その辺のお寺は『サイクリング休憩所』の位置づけであり、おそらくひうらー伍長にとっては、『御朱印販売所』なのではなかろうか。

サイクリング再開して、スイスイ気持ち良く走ってる途中で、そういう意味合いの事を、ひうらー伍長に言ってみたら、顔を真っ赤にして、

「この罰当たり!今に仏罰がてきめんに当たるから、悔い改めよ!!」と叱責された。

えー、そうかなー、的を得た発言ちゃうかなあー。

次の目的地、橘寺に到着。
緑に囲まれた、とても優雅な良いお寺だ。(平地にあるので)

お寺(休憩所)はこーでなくちゃ、と内心思いながら自転車を停め、橘寺の境内をゆっくりと散歩する。

ひうらー伍長は、寺の御朱印販売所の方と、血相を変えてお話し中。

橘寺は、施設の一部が改修工事中のようだ。

ここも本堂内の冷房がまったく効いてない。
てゆーか、堂内を開けっぱなしにして、解放しておられる。
でも、これはこれで風が通って、気持ちいいね。

本堂内を適当にグルリ一周した後は、風通しの良い外廊下で、思う存分涼風を楽しむ。

あー、涼し。気持ち良き。

「あ、また、涼しげポイントを探して、目敏いなあ。さすがですな」
と、通りかかったひうらー伍長が、イヤミったらしく声をかけてきた。

ほっといてちょーだい。
こうして自然の風を通じ、仏の縁(えにし)を感じとっとんねん。

アンタみたいに、仏像の前で這いつくばらんばかりに拝み倒すだけが、信仰のカタチやないねん。

「美しい仏像に出会い、たんと功徳を積んで、心の平穏を得るわけやねん。それに比べて、功徳の足らん愚かな羊はといえば・・・」
などと、功徳くどく、とクドクド言いはじめたので、うるさいからシッシッ、と、ひうらー伍長を追っ払った。

御朱印オタクは、思い込みが強いから、困ったものだ。

お堂に吹く涼風に身を委ね、いつまでだってここにいたかったが、とても名残惜しい思いで橘寺を出発。
ホントにいいお寺だった。(平地にあるので)

サイクリングの最終目的地は、地元の温泉銭湯。
『太子の湯』へ、レッツゴー!

少し曇ってきたのもあり、気温もややマシとなる。

『太子の湯』の大浴場で、たっぷりとかいた汗を洗い流し、スッキリサッパリ。

存分に湯浴みを楽しんだ後は、涼しい休憩所で寝っ転がり、プチ仮眠。
キンキンに冷えたカルピスソーダを飲んで、羊リラックス。
うはーー、生き返りますう・・・。

暑くてしんどかったけど、明日香村サイクリング、最高でした!

ひうらー伍長は、各寺の御朱印を山ほどゲットしたり、寺院の撮影にも成功したせいか、ホクホク顔だ。

暑かったけど、それでも楽しき明日香村サイクリングだったよね。

近鉄飛鳥駅でレンタサイクルを返却した後、スパークリング・アクエリアスで乾杯。おつかれっした!

帰りは京都駅前の焼き肉屋で、打ち上げ。
運動した後は、焼肉と生ビール🍺やね!

今度は、涼しい季節に行きましょう!

帰宅後、恒例の体重測定。
なぜか、あれだけ暑い中をギャンギャンサイクリングしたのに、多少重くなったような・・・。

功徳を積んだ分、体重に加算されとるな。

【おしまい】

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