見出し画像

『スティール・ホィールズ』 ザ・ローリング・ストーンズ

 18年前に書いたブログ。
この時既に60歳を超えたロックンロールバンドを讃えている。
それがどうだ、今も同じように書くことができるなんて。
チャーリーは鬼籍に入ったが、80歳のミック・ジャガーは背筋をピンと伸ばしてロックンロールしている。奇跡。
2005年のブログだが、今でも同じ気持ち。
2023年11月


 現在のメンバーはミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツのオリジナルメンバーと3代目のギタリストとしてロン・ウッドがいる。ブライアン・ジョーンズは死に、ミック・テイラー、ビル・ワイマンは脱退した。バンドの長い歴史の1ページに記されるに過ぎないこと。
 今年もワールドツアーを恒例のシカゴから開始し、まだまだ現役をアピールした60歳代のバンド・・・ザ・ローリング・ストーンズである。

 41年もバンドを続けると、ともすると親や嫁さんよりも長い時間、バンドメンバーと過ごしている計算になっても不思議ではない。
 ストーンズは常に山あり谷ありのバンドで、数十枚のシングルやアルバムは必ず評論家やファンの格好の的となり、常に注目される。そしてワールドツアーの規模やミックやキースの作る作品はもとより、いつ解散するのかまで、話題が絶えることがない。
過激なメンバーには過激な視線が送られるのだ。

 『スティール・ホイールズ』(1989)は好きか嫌いかと言う問題ではなく、ストーンズにとって重要な作品のひとつだ。それは、多分日本人が1番多く耳にしたストーンズ作品がこの作品かもしれないからだ。古くは「サティスファクション」や「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」「ギミー・シェルター」「アンジー」などストーンズには多くのヒット曲があるが、一般の茶の間にストーンズが入り込んできた作品として『スティール・ホイールズ』の中の「ロック・アンド・ア・ハード・プレイス」をおいて他はないのではないか。これは、ストーンズの初来日で日本中が熱狂し、時を合わせてポカリスウェットのCMで使われていたからだ。1990年の2月のテレビはストーンズ一色だったといっても過言ではない。テレビジャックだ。だから、ストーンズなんて気にもしていなかった若い子も「ポカリスウェットのおじさんたち」と呼んでいた。
テレビCMの影響力は計り知れないのだ。

ストーンズの初来日騒動。
僕も当然、東京ドームへ足を運び大規模なコンサートを堪能した。バブル全盛のお祭に沸いていた日本は誰もが浮かれ、普段コンサートに足を運ばなさそうなオヤジも声援を送っていた。
コンサートは『スティール~』のツアーということもあり、新旧取り混ぜた内容で、非常に見ごたえのあるものだった。あれほどの大掛かりなステージセットを日本人は生で見たことが無かったのではないだろうか!
 前年の1989年にミック・ジャガーは単独で来日し、東京ドームでコンサートを開いていた。東京ドームの外国人アーティストの“こけらおとし公演”で、話題性もあったが、ストーンズナンバーを数曲演奏してもどこか偽物のような気がして、盛り上がりは今一だった。また、ジェフ・ベックがサポートギターで来日するという発表がなされたあと、直ぐにキャンセルになったことも、盛り下がる要因だったかもしれない。(僕はドラムがサイモン・フィリップスというだけで大興奮であったが・・・)
 そんなわけで、ストーンズの初来日は、盛り上がらないわけが無かったのだ。

 60年代、70年代を突っ走ってきたストーンズはR&Bに根ざした音楽でR&Rをいかに進化させていくかをテーマに名作を発表し続けた。そして80年代に入るとミックはソロアルバムを発表する。ストーンズでは表現できない音を追及するために下した決断だ。『シーズ・ザ・ボス』(1985)はナイル・ロジャースと組んだダンサブルなビートミュージックで、時代の音を追求したロックだった。そんなミックの活動をキースは冷やかに受け、辛らつな言葉を投げかけていた。ストーンズの解散説は毎年あがっていたが、今回ばかりは本物と誰もが思った。なぜなら、ミックのソロのあとにキースもソロアルバムを発表し、その内容がストレートすぎるR&Rだったからだ。ストーンズよりもストレートと言っても良いくらいのサウンドはミックに対する呼び戻しのアピールか、それとも決別の叫びか論議を呼んだ。
 ミックはそれでも『プリミティブ・クール』(1987)を発表。AOR的な部分が強調され、商業的な成功は見えなかった。その後ミックは尻つぼみのまま“もとさや”に戻ったということが大方の見方だ。
そして、突然のアルバム『スティール・ホイールズ』の発表と大々的なワールドツアーが僕達を驚かせたのだ。
 ライブでのストーンズに迷いは無い。
 ステージを縦横無尽に駆け抜けるミックや、一つ一つのステージアクションがロックンローラーのアイコンとなるキース。
来日のステージを見ながらそんな二人が肩を組んでコーラスをしていると「なんだ、仲いいじゃん」なんて思ったものだった。

 『スティール・ホイールズ』の作品はミックとキースの合作曲が60年代の挑戦的だった頃の作風に近く、非常に尖がっている。勢い、音圧もあり、ヘビメタ以上にやかましい曲もある。しかし、ヴォーカルはあくまでもミックのストレートなR&R。元気なアルバムという印象で一気に聴くことが出来るアルバムだ。
 そういえば、チャーリー・ワッツは今でも3点セットでワールドツアーをこなしている。馬鹿でかいステージにドラムの3点セットは不釣合いだが、出てくる音はR&Rだ。ツーバスやメロタムやロートタムなどきっと姑息な手段と思っているのかもしれない。
いつの世もスタイルを変えないチャーリーが一番ストーンズの中で過激な人かもしれない。

2005年11月25日
花形

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?