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「Don't Look Back in Anger」 oasis

 兄弟の仲が悪く、喧嘩が絶えないバンドだったオアシスが再結成する。
1990年~2000年あたりのブリットポップブームはオアシスを筆頭にブラーやレディオヘッド、プライマル・スクリーム、スーパー・ファーリー・アニマルズなど次々とバンドが登場し、それはあたかもビートルズが世に出た後のブリティシュポップブームの再来と言われた。
そして、60年代のリバプールサウンドやマージ―ビート同様、90年代のそれもバンド数のデフレーションを起してブームは終息していった。
 オアシスにしてもブラーにしてもここ数年はバンド活動がない。
しかし今年に入り、この2大ブリットポップバンドが復活するというニュースが入った。
そして、特に兄弟仲の悪いオアシスの再結成にイギリスは湧いている。
ラジオやテレビからは彼らのヒット曲「Don't Look Back in Anger」(1996)が頻繁に流れる様になり、日本でも40代のオアシス世代がこの歌を聴いて盛り上がっていると聞く。
 私もオアシスやブラーなど当時のブリットポップは一通り聴いてきたのだが、世代というかなんというか、私が歳を取り過ぎていたのか、当時あまり心には響かなかった。アルバムの1曲、2曲で満足してしまうような有様。イントロや曲調はビートルズで唄になるとディランみたい、なんて声を聞くとそんなもんかね、なんて感じで冷めていた。

 例えば、オアシスの代表曲「Don't Look Back in Anger」を聴いて、キャッチーなメロディーだなと感心しながら聴いていたが、歌詞の内容が難解すぎてよくわからず、モヤモヤしてしまっていた。それは、ピンクフロイドやラッシュのような難解な世界観ではなく、どちらかというとボブ・ディランのような難解さ。しかもディランより始末が悪いのは、製作者のノエル・ギャラガーが「特に歌詞に意味はない」と言い切ってしまうところで、感覚で歌っているのか?という事。
確かに歌詞のセンテンス毎に意味はありそうだし、韻を踏むことは意識しているようだが、全体的な意味が通らない。なんだかなぁと思いつつ聞き流しているとあることに気づく。
「それにしても、この歌、とてもパワーがある」歌なのである。
プレミアリーグのサッカーの試合ではサポーターたちが大声で合唱することは日常茶飯事だし、イギリス国歌を国民投票するなら選ばれても不思議ではない歌と言われるほどの評価を得ているのだ。意味の無い歌詞と言っても様々な解釈を行ない、感傷的な歌と捉える人も多いという。そんな歌を国歌としたい若いイギリス人、やはり一癖も二癖もある。

 国歌「God Save The King」は、若い世代には響かないという事か。
ちなみに現在の国歌は日本語訳で
「伏兵や暗殺者らの手から 神よ我らが国王を守りたまえ
国家のため、汝の御手により 我等が父、君主、そして友
神よ我らが国王を守りたまえ」
というような歌詞が6番もある。そう考えたら、若い世代にはオアシスなのだろう。特にオアシスは労働者階級に人気があるという事も頷ける。
そんな若いイギリス人の心に入り込んでいる歌「Don't Look Back in Anger」。
そのオチとなるサビの最後のフレーズ。

1番
So Sally can wait, she knows its too late as we're walking on by
サリーは待ってくれる、並んで歩くには遅すぎるのを知ってるから
Her soul slides away, but don't look back in anger I heard you say
彼女の心は離れてく、でも「怒って過去をふりからないで」って君が言ったのを聞いたんだ

2番
So Sally can wait, she knows its too late as we're walking on by
サリーは待ってくれる、並んで歩くには遅すぎるのを知ってるから
My soul slides away, but don't look back in anger I heard you say
俺の心は離れてく、でも「怒って過去をふりからないで」って君が言ったのを聞いたんだ

 タイトルにもなっている「Don't Look Back in Anger」。
このフレーズは共生する上で重要なキーワード。
今思うと、ギャラガー兄弟が一番心に留めておかなければならないフレーズだし、兄であるノエルは弟に言い聞かせるように歌ったんじゃないかと思ってしまう。
この言葉だけを言いたくて。

今回の再結成が長続きすることだけを祈りつつ、「Don't Look Back in Anger」。

2024年9月11日
花形

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