見出し画像

時間の闇の中で / ジャン=リュック・ゴダール

  1. 我々はどこから来て今どこにいるのか
    先進各国の人は、近代化以降の歴史の中で、その記憶に大きな傷をつけた。それ以来の世代は、残らずその醜悪な歴史と「隠された記憶」を時効なく肩に背負い、この世に生れる。

  2. _の最後の瞬間
    映画は寿命を迎え、ジャズもまた然り。残るのものの多くはそれらしき残滓ばかり。60年代を終え、その後のカオスも終わり、90年代の鬱屈も通り過ぎ、終わりなき日常が続く。

  3. 自分の価値
    ない。そんなものはもとからない。ただ関係がある。関係においてのみ、ひとは価値を見出し得るだろう。我と汝はその時生まれる。

  4. 魅力
    魅力とは。Dancing for your pleasure。己をさらして踊ったとき、ひとは輝く。ジャズとアステアが教えてくれたことだ。スポットライトに照らし出され、素肌と空気の、己とその外との焼け付くような摩擦が見える。そこは燃えるようにあつい。燃ゆる肌は、輝く。

  5. つまらなさ
    関係の中で、傷つくことをおそれたとき、コストを払うことをやめたとき、身体性を、自分という血肉と精神の塊の存在を忘れたとき、人は贈与の中の我と汝から貸借の中のそれとそれになる。そしてつまらなさは増殖する。

  6. その狭間で
    狭間にいるとき、ひとは不安に苛まれよう。しかし不安は糧だ、苦痛は芽である。己をさらせ、時間の闇の中で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?