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キタダヒロヒコ詩歌集 76


冬の街に似合うことばを
いくつか用意してあたためておく


綿のような 鳥の羽のような
私の指ではうまく扱えないことばたちを。


やはりだ
私は羽を何枚も足もとに落としてしまう


まるで何ヶ月もかけて
こぼしてしまう砂のように。

風が吹き雪が降りやがて
この砂の一粒一粒が一顆の石になり


そこに淡い小春の陽がさす日にも
きっとあなたを思っていようとおもう


どこを歩いていても
なにを読んでいても


ちぎれ雲が額のはるか上あたりにいて
北の街のほうへと 流れていこうとする


ならば私は さそわれるままに
精いっぱいの歌声でちぎれ雲を追いかけよう


こんな気持ちは
ひさしぶりだ。




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