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【散文詩小説】時代遅れの寵児⑨挑戦

四ヶ月もかかったのか、
四ヶ月で済んだのか…。

兎にも角にも、再就職活動にその時間を費やした。

視点を少し変えれば、
長い社会人人生においては
1、2年程休んでもバチは
当たらないだろうし、
もう少し広い視野で社会を
見渡す事もできたかも…と、思うとやや残念に思う。

だが、そもそもが「休むため」ではなく、「這い上がるため」の時間なのだから、
そんな発想は浮かぶ訳が
なかったし、そんな悠長な
ことを言えるほど、生活にも余裕はなかった。

それでも四ヶ月かかったのには理由があった。

幸いなのか、あいにくなのかわからなかったが、俺は最大手の最終選考まで残った。

書類選考に一ヶ月かかり、
二次試験は一ヶ月後。

課題を提出して、その場で
プレゼンテーション。

加えて、面接。

2次試験通過の連絡は2週間を要し、結果的に最終役員面接は三ヶ月後に。

最後はあっけなく不採用の
通知が送られてきた。

再就職活動四ヶ月目にして、
俺はあっさりと振り出しに
戻された。

その間内定をもらっていた
会社に、本命を理由に断りを入れていただけに、正直、
これはきつかった…。

ただ、それが業界の約束事
なのかは定かではないが、
その後一斉にと言わんばかりに、追随する中堅企業が中途採用の公募がはじまった。

最大手の最終まで進んだことも、自信になった。

俺は改めて、新たな挑戦に
邁進し、そこそこ名の通った大手グループ企業に滑り込んだ。

その間、わずか一ヶ月。

それまでに比べると何とも皮肉な気もするが、ひょっとしたら、俺にとってはその時間は、必要な登竜門だったのかもしれないとも思う。

裸一貫で挑んだ戦いだけに、
ある程度の覚悟もあったし、
そんな簡単に事が運ぶのは、少々虫の良い話だと考えれば、結果的に相応の努力も要するのが世の常だ。

いずれにしても、そんなこんなで、四ヶ月に渡る俺の再就職活動は幕を閉じる事になった。

(続く)





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