令和5年予備試験論文式の成績を自分なりに分析してみた

前回の記事で晒した通り、令和5年予備試験論文式の成績は以下の通りです。

憲法   B
行政法  C
民法   B
商法   C
民訴法  A
刑法   B
刑訴法  E
労働法  E
実務基礎 E
総合得点 239,53点
順位   582位

今回は、なぜ上記のような成績になったのか、自分なりに分析してみました。

憲法

Xの立場
・目的手段審査ではなく、「職業の秘密」に当たるかという枠組みで論じたかった。もっとも、証言拒絶を認めないことが問題となるいうこと自体の理解は示せている。
・Xは、フリージャーナリストに過ぎず、取材の機会が限定的であり、個人に対する将来の取材の自由の確保がいかに重要か論じることができている。

反論
・不十分ではあるが、最低限問題点を抽出できている。

私見
・証言拒絶を認めるべきか、比較衡量で決するという判断枠組みを出せている。
・比較衡量の当てはめはOK。事実を拾って、評価できている。

まとめ
・「職業の秘密」に当たるかという枠組みで論じることができれば、理想的だった。
・もっとも、Xがフリージャーナリストであること、甲社はSDGsを推進しているが、一家具メーカーに過ぎず、公益性は高くないこと、本問の民事訴訟が、私人間の損害賠償訴訟に過ぎず、公益性が高くないことなどを指摘した上で、評価を加えていた。この点が評価されてBになったのではないか。

行政法


設問1(1)
・本来は、設問のヒントをもとに原告適格ありの方向で論じたかった。
・ただ、ヒントの意味を理解できなかった受験生も多いと思われる。ヒントを使わなくても、理屈の通った説明はできていたと思われる。

設問1(2)
・法7条を使った当てはめができておらず、内容が薄くなってしまっているが、問題の所在に気づけただけでも良かったのでは?

設問2
・2号と3号で、主張を書き分けたかった。
・ただ、計画の内容がおかしいこと、Dの能力が不十分であることなど、最低限の指摘はできていたと思われる。

まとめ
・全体的に内容が薄くなってしまっている箇所はあった。もっとも、理屈は通っていたし、最低限触れるべきところには、触れることができていた。したがって、Cだったと思われる。

民法


設問1
・原則である請負契約そのものから、請求が認められるかは検討できていない。
・412の2、536条2項など拾うべきところは拾えている。
・金額の認定は、怪しい面もあるが、Aの反論を踏まえた上で、個別具体的に検討する姿勢は見てとれる。

設問2
・原則として、Bに処分権限がなく、Bから承継取得することはない旨、指摘できている。
・即時取得を指摘できていないのは、かなり痛いと思われる。
・(2)についても、本来は、112条1項で検討するべきだったぽい。ただ、即時取得が成立しない旨の当てはめがしっかりしていたから、評価されたのか。

まとめ
・設問1は、まだ良かったとして、設問2は占有改定に即時取得を認めるなどの致命的なミスをしていた。それでも、Bという評価をもらえたのは、他の受験生も似たようなミスをしている人が多かったのか、誤りの筋ではあったが、事実を拾って評価しようという姿勢が評価されたのかもしれない。

商法


設問1
・裁量棄却の検討を失念してしまっているものの、他の論点は拾えているし、事実を拾って評価できている。

設問2
・不公正発行については、差し止め事由の中で検討しているが、漏れなく検討できている。特に、丙社との資本関係を強化し、経営の安定化を図ることが建前であることを指摘できている。
・有利発行の検討も丁寧。

まとめ
・おおむね論点を拾えているが、設問1で裁量棄却の検討を失念したのが大きかったか。裁量棄却の検討は、ほとんどの受験生ができていたものと思われる。

民訴法


設問1
・訴えの交換的取り下げについて指摘できていなかった。ただ、この論点を指摘できた受験生はかなり少なかったのではないか。そのため、この論点を落としても、致命傷になっていないと思われる。
・262条2項を確実に指摘できている。
・当てはめ箇所で、Xの再度の訴えはYの主張に対応したものであること、Yの主張は矛盾挙動であり、信義に悖ることをしっかり指摘できている。

設問2
・触れるべき論点を漏れなく拾えており、当てはめも問題なさそう。

まとめ
・総じて漏れなく論点を拾えている。

刑法


設問1
・「監禁」の定義を示せていない。
・構成要件的故意の認定を失念している。
・監禁罪の説の対立は、漏れなく検討できている。

設問2
・器物損壊罪の検討を、加藤ゼミナールの解答ではしているが、ここまで検討できた受験生がいるのかは、かなり疑問。書いていなくても、大した失点にならなそう。
・殺人罪の箇所は、首締め行為と崖下に落とす行為で、一体とするか別個とするか一言触れたほうが良かったかも。また、崖下に落とす行為は、重過失致死になる認定をしたかった。ただ、因果関係の論述はかなり良かったかも。
・他の論点はOK。

まとめ
・全体的な流れはOK。他の受験生もそこそこ書けたことと、殺人罪の箇所で当然にお一体の行為として論じてしまったのが、Aにならなかった要因か。

刑訴法


設問1
・逮捕前置主義の箇所で、207条1項に言及できていない。関連条文はできるだけ触れたい。
・事件単位説に触れておらず、その結果、事件が同一であるかも論じられていない。ここは、ある程度事情があっただけに痛い。
・全体の流れ自体はOK。

設問2
・勾留の理由・必要性の検討が抜けている。問題文の事情が多くあっただけに痛い。
・再勾留の可否の検討については、強盗致傷罪の法定刑が重いこと、前回の勾留時に満期まで、身柄拘束されたことまで指摘できており、オーケー。

まとめ
・事情が多くある箇所の検討が抜けてしまったのが痛手であった。
・それでも、Fを回避できたのは、他の受験生でも似たような箇所の検討を落とした人が一定数いたからか。

労働法


設問1
・そもそも論点知らないので、不十分な論述しかできない。
・だとしても、何らの条文も指摘しないのは、問題。
・頑張って規範を立てて、当てはめもそれなりにできているが、Bがテーマを任意に選択したこと、基本的に留学中は、職務に従事しなくてよいことなどは、指摘できていない。

設問2
・契約関係にあっただから、不法行為ではなく、まずは、債務不履行で検討するべき。
・不法行為で論じるときは、最初にいかなる義務が問題となるのか明確にしたい。
・A社への責任追求については、義務を明確にできている。

まとめ
・論じるべき論点は外している。それでも、Fを回避することができたのは、自分ないなりに何とか規範を立てて、できる限り問題文の事情を拾って、論じることができたからか。

実務基礎


◯民事実務基礎o
設問1
・保証債務履行請求権の請求原因事実を正確に理解できていない。
・(5)については、他の受験生もできていないと思われるから、ここでは差がついていないと思われる。
設問2
・(2)で権利抗弁である旨を指摘できていない。
設問3
・民法125条あたりを指摘できていない。知識不足。
設問4
・全体的に、成立の真成が認められる文書を使いながら、論述を組み立てられている。
・本件契約書が処分証書であることに言及したかった。
・Yの押印が意思に基づいてなされているかが主要事実であり、主要事実に向かって間接事実を積み上げるような論述をする必要がある。
まとめ
・準備書面問題の論述は、決して悪くないものの、要件事実などの細かい知識の漏れで他の受験生に差をつけられる結果となったと思われる。また、要件事実の問題は、抗弁、再抗弁の枠組みに沿って、論述できるようにしたい。

◯刑事実務基礎
設問1
・(1)は、近接所持の法理も指摘できており、OK。
・(2)は、Aが弁解している内容も拾いたかったが、それ以外は、説得的に論じることができている。
設問2
・勾留の理由開示は、83条ではなく、82条である。それ以外は、OK。
設問3
・「暴行」に関する論述は、かなり説得的。
・「暴行」と「傷害」の間に因果関係がないことを、指摘したかった。
設問4
・(1)について、298条1項という条文も指摘できると良かったが、それ以外は、説得的。
・(2)について、証拠調べが不要である旨を指摘できている。規則205条の6についても、指摘できており、良かった。
まとめ
・全体を通じて、致命的なミスをしたとは思えない。

◯全体を通じて
・刑事実務基礎は比較的良くできていたので、民事実務基礎における細かい知識の漏れが原因で、Eになったのではないか。

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