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第14話 鬼才・明智の推理

明智は誰にもバレないようにと、
神主から一冊の古文書を手渡されていた。

警官にもバレないように、普通に立ち振る舞い、
警察署まで送らせて、そのまま上司の元へ行き、
荷解きが残っているので早上がりしたいと伝えてから、
自分の家へと帰った。

カーテンを閉じて、玄関の鍵もかけて、二十ロックもかけた。
そしてワイシャツの中に隠していた古文書を机の上に置いた。

明智は神仏などは信じていなかった為、今回の事件に対して、
非常に興味を持っていた。

古文書を最初の1ページを捲《めく》ると般若の面の絵が描かれていた。

そして見ようによっては、確かに目があるように見えると思った。

彼はコーヒーを飲みながら、じっくりと読み進めた。
中間ほどに差し掛かり、外の暗さに気づいた。

熱中して、時間を忘れるほど集中して読んでいた。
古文書にしおりを挟み、息を深く吐きながら本を閉じた。

若手ながら今まで解決出来なかった事件は無かった。
そんな男でも、中間まで読んだだけで深い恨みや怨念のような
何かが潜んでいるような気がしてならなかった。

まだ読み終えていなかったが、この中の表紙に描かれている
❛般若の面❜は価値のあるものかどうか気になった。

明日、闇取引を扱う部署に行き、聞いてみるとしたが、無駄に
終わるだろうとも思っていた。
彼の性格上、可能性があるなら追求する癖がそうさせた。

古文書が残っている以上、これを記した者や、遥か昔ではあるが、
実際、連日、人が殺されている事から、般若の面の恨みとして、面を被り、
怨念の仕業だと思わせようとしているのなら、
とも思ったが、道理が通らなかった。

仮にこの事件が続くなら、犯人はまだ本命を殺していないということになる。
しかし、それではリスクが高すぎる。
捜査官が激増し、大規模な事件として扱われる事になる。

テレビ局や新聞や雑誌関係はこのようなネタに殺到する。
そうなると、犯人の本命はこの町の町民では無く、
警察の上層部の人間か、テレビ等の業界関係者の中にいて、
その何者かが出てくるまで待つ気でいるのか?

いや、その線は薄い。仮に私が犯人なら警察関係者を狙う。
現時点ではこの面を盗んだ者は、大規模な捜査にしようとしている。
もしそうなら数人の本命まで絞るのは簡単だ。

しかし、特別捜査本部となれば話は変わる。
今回はおそらく特別捜査本部が設置されるだろう。
犯人がそれを仮に知っているとしたら、どうなる?

明智の頭脳は迷宮から出るように、犯人が手がかりを落とした道を
進んでいた。

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