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きのことココダトレイル「トレイル1日目の試練」

2023年6月19日 月曜日


(1) 出発の時

3:30am 起床
4:30am ロビー集合
5:00am 出発

出発の朝、3:30amに目覚まし時計が鳴るのを待つ事なくすっと目覚めたと日記に書いてあります。最近は目覚まし無しで大体起きたい時間に起きられるようになりました。

この先8日間お風呂に入れないんだと思うと、意味ないと分かりながらも、未来分の汚れも意識してシャワーでゴシゴシ洗う…よし、1週間大丈夫!ということにはなりませんが、不思議なことになんとなく大丈夫な気がしてきました。

まだ月の明かりに照らされた真っ暗な中ホテルのロビーへ。パプアニューギニア側のボス、仮名はボスでいいかなを紹介される。そしてすぐに小型バスで出発。この出発時のときめき、目標に挑戦できる幸せに、世界に感謝を向けているこの感覚は大好きです。ポーター数名がバスの前方に、お互いに硬い笑顔で挨拶し、バスの後方へ。何人かのポーターを郊外でピックアップしてトレイル取り付き地点へ向かう。およそ2時間のドライブ。

バスの中

(2) 食べ残しを考える

バスに乗ると、まだ温かい、朝食用のお弁当を渡されました。食べ残した分は、ポーターに渡すよう軍曹から指示を受けたのです。かなりこの時に衝撃を受けました、、自分の食べたお弁当の残り物を家族以外の人にあげること。食べ終えて恐る恐る渡す客達。年配の面々は皆受け取りませんでしたが、若い子たちは少し躊躇しながらもお弁当を受け取り、俯いて静かにゆっくり食べ物を口に運んでいました。その様子に何か胸が少し苦しくなりました。中には明るくハイっ食べる?と渡す人もいましたが、ほとんどは躊躇いながら軍曹の方を見つめながら欲しい人を探す…性格が出ていました。

私はその光景に圧倒されてしまい暫く食べられず。前日夜にしっかりと食べていなかったこともありましたし、この先ちゃんとした食べ物は食べられないだろうと思ったのもあって、ゆっくり噛み締めて全部食べました。残すという選択肢を排除してました。

(3) 静かな時の流れを感じながら

次第に山道になり、切り立った崖を縫うようにバスは走る。これから始まる冒険に思いを馳せて、軽い緊張、目に入る情報を全てを吸収しようとしている自分、半分まだ寝ている脳の一部で目の前の現実を消化しようと、人と話す気にならない。トレッカーは誰1人として会話をしない静まり返る車内。皆無言。夜が開けるポートモレスビーの山並みをじっと見つめる。皆一つの目的に向かってベクトルを合わせ始める。

そんな中1人陽気なポーターがいました。バニラ畑のヒーローと呼びましょう。私たちの周りに漂う異様な緊張感をほぐすかの様に明るく振る舞い、質問を投げかけ、話しかけてきました。その人懐っこい彼のお声がけに車内の張り詰めた緊張が少し緩んだ気がしました。私はその時に、こんな陽気な方が私のポーターだったら良いなと思ったのはしっかりと覚えています。

(4) 出発地点

そしてバスは停まる。小高い丘、芝が美しく刈り込まれた公園のような場所。目の前は180度、険しく谷に落ち込むOwer’s Corner。トレイルのスタート地点です。朝日に照らされたアーチが見える。見渡す限りの山並み。パプアニューギニアなのに、何処で見た事ある懐かしい景色。

クルーとポーターの荷造りが始まる。クルーは8日分の全員の食料や機材を等分したものと自分の荷物、ポーターは担当の客の荷物と自分の荷物を纏めて荷造り。トレッカーはポーターに渡していい重量はテント、シュラフ等を含め13kg以内と指示を受けていました。

パッキングの様子を見ていたらなんだか気の毒になってしまい、、もう少し持てるかなと、ポーターの荷物を少し引き受けることにしました。

我々はデイハイクに必要な荷物を持ちます。中身は個人差ありました。簡易の雨具、渡河/徒渉用のサンダルだけの人もいれば、その他もろもろ、起こりうるトラブルを考え必要な装備を入念に準備している人もいる。私はガイドブック、地図、救急用具、慰霊用の750mlの日本酒とビールも一本背負いました。またギアについては最後にまとめようと思います。あれ、もう纏めたかな?と何処まで書いたかわからなくなっています。笑

そして、トレッカーに担当のポーターの紹介。私はあのバニラ畑のヒーロー!あのバスの中で陽気だった方でした!頼りになりそうな優しそうなおじさんという第一印象。なんだかちょっと嬉しくなりました。よろしくね。

荷造り

(5) 日記

日記を読みながら、初日の印象を思い出しています。初日は橋なき川を無数越えたということに尽きます。ポーターはツルツル滑る道をトレッカーを補佐する形で歩いてくれます。靴を脱がなくても良い川も含めてざっと大小30位の川を越え、山を越え谷を越え歩いたようです。50位越えたような気がするとも書いてありました。

ポーターをつけなかった天パ坊やとデンタルモデルは初日から辛そうでした。

最初の川かな…

(6) 悲しい決断を迫られる

1日短縮した分、歩く距離を稼がなくてはなりませんでした。ペースはかなり速くなりました。私は様子を見ながら大丈夫そうだと思い、グループ最後尾につく。暫くグループの様子を見ていたのですが、荷物も軽かったですし、1番後ろからゆっくり歩く事で、体力の無い方を気持ちの上でサポートする事はできるかなと思うようになったのです。

サメ子さんがどんどん遅れを取りました。サメ子さんの後方に入り、彼女を1番最後にしないようにしていましたが、途中どうしても足が進まなくなり、サメ子さんとポーターにゆっくり休んでもらい、私とらんま1/2は前方のグループに追いつき状況報告。

サメ子さんは皆に追いつくと、はにかむような笑顔で、精神的にはしっかりとポジティブなのが伝わりました。ほっと安堵しながらも、日没までにキャンプ地に着かねばならないので、サメ子さんが合流したらそれほど間も置かずまた歩き始める。

我々は川で足を冷やし、体を冷やし、待ち時間にしっかり体力温存、救われるというパターン。

それを繰り返しているうちに、断崖絶壁のような下りの連続の中、サメ子さんは疲れからとうとう足を痛めてしまいました。足首を固定してゆっくり歩くが、痛みはある。

皆、嫌な予感が過ぎる。残りの8日間歩けるのか、、このスピードで今晩の宿泊地に辿り着けるのか。

(7) 決断の時

16:45 、昼食も取らず歩き続け、ようやく最初の村に到着。お昼ご飯になりました。ここで、らんま1/2がサメ子さんと話す役目を引き受けました。皆悲しい表情。サメ子さんは言葉を丁寧に冷静に論理的に選びながら、今の自分の怪我の状態ではこれ以上アップダウンを繰り返す道を歩き続ける事は不可能、グループの置かれた状況も理解して、少し悔しそうな表情を一瞬見せたあと、きっぱりと撤退の決断をします。強い女性です。

男性陣はヘリコプター救助の為に衛星電話に電源を入れて、電波を繋げる。ヘリコプター搬送を頼み、1〜2時間位で迎えにきてくれることになりました。

(8) ヘリコプター搬送

このツアーでは必ず個別に緊急時の搬送付きの旅行保険に加入し、その書類を事前に提示する必要がありました。連絡手段も何もない未開の地で何かあった場合、ヘリコプターでの脱出しかありませんでした。

サメ子さんの搬送で分かったのですが、ヘリコプターに乗る際に4000ドル(およそ40万円)前払いしなくてはいけないという話に度肝を抜きました。よ、四十万円を前払い?後から保険会社に請求したら戻るらしいですが、いきなり言われても困りますよね…家族にも連絡がつかないですから、この時サメ子さんは仲良しのらんま1/2にカードを借りていました。

そして、村の子供達に用意したお土産を、女性3人で渡しにいきました。村人との交流のひと時を楽しむ。

この時、らんま1/2が悩んでいました。

私、歩けるのか、、、

険しい山道の連続、仲良しのサメ子さんのグループ離脱に、自分もリタイアしようかと真剣に悩んでいました。私の見た感じではクールにペースを守って歩いているように思えたので意外に思いましたが、予想以上にきつい山道、心が折れそうになっていたのです。

でも私頑張る…

皆ヘッドライトを取り出し、サメ子さんに別れを告げてキャンプ地を目指す。スピードは増す。

山道を1hr位歩いた頃でしょうか、ヘリコプターの音が聞こえてきました。皆が足をとめて、音の来る方向を見つめ、ヘリコプターを探す。我々の前の谷を通過するのが木々の間から少し見える、そして村に着陸。暫くしてヘリコプターが飛び立つ。また目の前を通り過ぎるヘリコプターに皆手を振る。サメ子さんには見えないけど一生懸命手を振る。

サメ子さんっ!!!
お大事に、気をつけて帰るんだよ!!!

そしてすぐに皆歩調を揃え、目的地を意識して歩く。
ザッザッザッザと谷に響く足音が良いリズムを作ってくれる。気持ちを一つに、残りのトレイルを皆で完歩する決意。

真っ暗闇の中たどり着いたのは
あのIoribaiwa イオリバイワ…

ポートモレスビーの灯りは見えますか……

(9) 後日談

実はヘリコプターに乗ったサメ子さん、操縦士が状況を聞いて気の毒に思い、よっしゃー今日最後の仕事だし、ツアーしちゃる。という事で、我々が歩くはずのトレイルに沿って飛行。解説してくれたそうです。

なんて粋なはからい。夜キャンプ地に到着した際に衛星電話で連絡したら、嬉しそうに話してくれました。皆その話に心から喜びました。良かった。サメ子さんにも心躍るような旅の思い出もできて。

(おしまい)
読んでくださってありがとうございます。

河原で。

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