【超短編小説】 barにて
バーの扉を開けると、カウンター席に一人の男が座っていた。
隣の席に座った女は男に向かってこう言った。
「あなたから連絡するなんて珍しいわね」
「吐き出せる場所が無くてな」
「タバコ、吸いながら言う言葉?」
「今回のヤマ、なかなか手こずっていてな」
「あなたは何でも情報を飲み込み過ぎなのよ」
「だから、こうやって吐き出してるじゃないか」と口から煙を漂わせた。
「馬鹿なこと言って」
「悪いが、代わりに払ってくれないか。そろそろ酔いが回ってきた」
「全く、もう。あなたは、いつもそうなんだから」
男は席から立ち上がると、ふらつきながら店を出て行く。
女は、男が飲んでいた酒を飲み干すと「会計、おねがい」と店員を呼んだ。
「また、こんな強い酒、飲んで」とため息と共に哀しさが込み上げたが、
会計を済ませると、急いで男の元へ駆けて行った(完)