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kipiri
【超短編小説】 チョコレートの海
これでいいのかと思ってしまうぐらいに、冷静な自分がいる。
物事はチョコレートのように甘くはないのだ。
嫌というほど聞いたことのあるセリフを頭の中で反芻する。
『このままじゃ、僕は・・・』
だが、その甘いチョコレートの海の中で溺れてしまいたい自分もいる。
外気を吸うため、僕は海から顔を出した。
やがて、白いワイシャツが茶色に染まっていくことを想像する。
「誰も君のことなど、気にしてなんかいないさ」
目の前を泳いできた魚達は言う。
「君が勝手に気になっているだけ。泳ぎたければ泳げばいい。泳ぎ疲れたら、休めばいい」
魚は僕にそう言い残して、どこかへ消えて行った。
僕はチョコレートの海を少しずつ泳いだ。
まだクロールぐらいでバタフライは出来ない。
そんなに簡単ではないのだろう。
だけど、僕は思った。
『この海で泳ぎたい』(了)