【超短編小説】 タイミングの悪い男
私はいつもタイミングが悪い。
バスが発車した後にバス停に着いたり、
傘を持ち忘れた日に限って雨が降ったりする。
自分だけで済むなら構わない。
問題は、他者が関わる時である。
例えば、レストランで注文に迷った挙句、ようやく選んだメニューが品切れであったりする。
上司の機嫌が悪い時に限って、ミスの報告をしなければいけなかったりもする。
たいてい、相手には嫌そうな顔をされてしまう。
私には全く悪意などないのだ。
しかし、何故かそうなってしまう。
どうすることもできず、ただ下を向いていた。
いっそのこと、タイミングを図れるように変わりたいとさえ感じていた。
とある求人募集を見つけるまでは…。
『みなさん、今日ご紹介する講師はタイミングがいつも悪いという先生です。先生はこれまで様々なシチュエーションにおいてタイミングが上手くいかないという場面を経験されてきました。それでは』
「えっと、もう講座、始めてもよろしいでしょうか?」
『先生、よろしくお願いします』
講座名「あなたは大丈夫?〜タイミングが合わない先生に学ぶ対処法講座〜」(完)