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春。

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息子が保育園に通い始めた。

お友達と遊ぶのが大好きで
人見知りもなく初めての場所でもいつも楽しく遊べる息子。

きっと保育園も すっと私から離れて教室に行ってしまうんだろうな、と思っていました。

でも予想とは違ってバイバイで毎日泣いています。
お家での泣き方、今までの泣き方とは違う。
保育園に行くんだ、行きたいんだ。
でもごめん、耐えきれないよと我慢して我慢して涙が溢れている。
新しい環境に馴染みたくて頑張ろうと思ってる。でも寂しい。だけどママも辛いよね、心配かけたくない。本当は泣きたくないんだって唇を噛み締めて唇をプルプルさせて、、
それでも溢れて涙を流している。
こんな息子を初めてみた。。
私も涙が溢れてしまう。

新しい環境で新しいお友達と過ごすことがどんなに不安で緊張することか。
新しい楽しみや発見も沢山待っている。
でも、
そこに足を踏み入れるのにはすっごい勇気がいるよね。
大人が進路を決める時、そこに向かう覚悟を決めて挑んでも、手に汗を握り、心臓の鼓動を感じる。
とても緊張して嫌だなあって思う。
なのに息子はこんなに小さい体で必死に前を向こうとしている。

ここに行くって自分で決めたわけでもない。
なのに置かれた環境に馴染もうと必死に闘っている。
夜中すやすや眠る息子の背中をさすると
少し安心した気持ちになる。

制服を着ると保育園に行くことを覚えた息子。
私が不安げな顔してるのを感じ取って
大丈夫だよ、平気だよと、にこーっとやさしく微笑んで
自分からお袖に手を通してお着替えをする。
いつもは服を見たら逃げていくのに。
どこに行くにも離せないタオルもソファの上にちゃんと置いて玄関にむかう。
まだ1人では履けない靴も履こうと試みる。

自転車の座席に乗ると
いつもと変わらず れっちゅ、ごーと言う。
いつもより小さな声で。
分かってるよね。
このリュックを持ってこの上着をきたらどこに行くのか
それでも頑張って行くことを心に決めている。

保育園に着くと自分で靴を脱いで ゾウさんマークの靴箱に、ぴったり揃えて靴を入れる。
教室は2階。この階段を登ったらバイバイ。
でも負けない。
私と手を繋いで小さい足をひとつずつ揃えてよいしょ、よいしょと言いながら一段一段登っていく。足に迷いはなくて、立ちとどまることもしない。ひたすら足を前へ前へ。
小さな足を、揃えながらひとつずつ上がっていく。

泣いて泣いてこの数日で気づいたこと。
あんなに体は小さいのに、私の心をいっぱいに埋めて満たしてくれているのは、我が子であること。息子の悲しみも笑顔も泣き顔も怒りも苛立ちもわがままも全てが愛おしくて私のエネルギーになっていること。
がむしゃらに過ごしてきた毎日
息子が潰れるくらい抱きしめた日もあれば
理由なくあたってしまった日もある。
決して誇れるような母親ではないけれど
それでも
息子にとっては他でもない
1番の母親になっていたこと

こんな私なのに こんな母親なのに
行かないでと、ちぎれるくらいの力で私の手を握る。
かか〜 あっこあっこ(抱っこ)と両手を広げて大粒の涙を流して求めてくれる。
私はいつしかちゃんと母親に、息子の心を落ち着かせられる存在になれていたんだと思った。

今日で慣らし保育4日目。
今日も涙は出たけれど 泣きながらバイバイと言い、私に手を振って 自分から先生の手を握りに行った。
また前に進んだ息子が逞しく、誇らしく、
でもやっぱり苦しくて
涙が溢れる。

しばらく経って学年も上がったりして体も大きくなったら、この階段も1段飛ばして登ったり、さささーっと私を置いて登っていくのかな。
日が経ったら泣かずに、かか、ばいばいって
教室に入っていくのかなあ。
お友達が沢山できて私じゃなく、お友達とお手手を繋いで登っていく日がくるのかなあ

いつかこの園を卒園する日がきたら伝えよう。
大きくなったね、
入園した時は
ママと小さな手を繋いでよいしょ、よいしょって言いながら小さな足で一つ一つ階段を登ったのにね。
毎日一緒に泣いたのにね。
強くなったね、大きくなったね。
でもいつまで経ってもあなたのママで居させてね。
大きくなったって変わらない。
辛いことがあって目の前の階段が登れない日が来たらまた手を繋いでひとつずつ登ろう。
服に着替えられない日が来たら温かい飲み物を入れてそっと背中をさする。
靴が履けない日が来たら また抱き合って一緒に泣いたらいい。
泣きすぎて腫れた目を見て笑いあったらいい。
昨日より少し前を向けたら、
少し大きな声が出たら、それでいい。

れっちゅ、ごー !
明日はもう少し大きな声で言えますように。

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卯月。新学期。

今年は桜の開花はゆったりだけど
時はそのままに
新しい門をくぐる人たちの風景や心情を
SNSを通してたくさん届けていただいてます。

息子が保育園に行き始めた3年半前。
息子を預け、一人になったお家までの道を
私は涙を堪えながら足早に歩き、
お家に着いた瞬間、溢れ出す涙を手で一生懸命にぬぐいながら。
シーンとしたお部屋でワンワン泣いている自分の声を聞きながら。
涙で見えなくなりながら、
この気持ちをひたすらに書き留めました。

毎日先生がぎっしり書いてくれる
お帳面の記録。
(みんなで見ていた鳥さんが、一匹だけピッピと鳴いていて、
さくくんが『ママに会いたいのかなあ?』とお話ししてくれました。
鳥さんの心配をしたけれど、
サクくんもママに会いたくて、お昼寝から目が覚めて、たくさん泣いたサクくん。今日もたくさんたくさん頑張りました。)

(今日は皆で公園にいきました。
桜が咲いていたので花びらで遊びました。
みんなが袋いっぱいに花びらを入れる中、
サクくんはふたつ。
何故か聞いてみると
「かかにひとつ。 ととにひとつ。
ふたつでいいのよ。」と言っていました。)

お帳面を読んで 涙し、ほほえみ。
息子の様子を思い浮かべながら
一生懸命に読んで、感じて。
息子の世界が少しづつ広がっていくことに
戸惑いながら、感心しながら。
少しづつ私は安心していきました。


息子が持って帰ってきてくれた 
ととの桜

かかの桜

そんな息子もこの春から年長さん。
一年後の卒園式の日
息子は、わたしは、
何をおもうだろう。

どんな色をした どんなにおいをした
どんなカタチをした 気持ちになるだろう。

その時も2人で手を繋いで
保育園を見上げて
またあの日のように
涙を流していたいね。
次は胸を張って誇らしい涙でね。

皆んなが新しい環境に足を踏み入れるこの時期。
ぐらぐらと気持ちが揺れるこの時期。

私のこの文が。
誰かの背中を少しだけ押したり、
誰かの心を包めたらいいなと思います。


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