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【読書日記】 「ルネサンスの世渡り術」を読む

ルネサンスの芸術家(職人)たちが、どのようにして仕事を手に入れ、実績を作っていったのか、興味があり、読みました。

第1刷:2018年5月25日
発行元:芸術新聞社
著者:壺屋 めり
内容:みんな必死に生きている!抜け駆け、サバ読み、炎上商法……。
彼らが巨匠たる所以はなりふりかまわぬ仕事ぶりにあった! 制作秘話より胸躍る芸術家たちの必死の駆け引きを、 ヴァザーリ研究の逸材・壺屋めりが活写します。
著者自らが描く漫画&イラストも理解を助けてくれます。 ルネサンスを舞台にしたたかに生き抜く芸術家たちの姿を ちょっと覗いてみませんか?(Amazonより)


12のエピソード、どれもおもしろい

ルネサンスの超有名な人から、初めて名前を聞いた人まで、12人のエピソードが素敵なイラスト入りでわかりやすく語られていました。

それは、15世紀から16世紀にかけて、芸術家が、手仕事に従事する職人から、社会的に高い地位をもつ知的職業へと変貌をとげていく過程のでのことです。
今は巨匠と言われている人でさえも、注文を求めてかけずり回ったり、パトロンに取り入るために策略を練ったりと、制作だけではない、世を渡るための大変な努力をしていたことを知りました。
その努力は、まっとうなものもあればよからぬものもあり、それが生々しくてドラマを見ているような感じがしました。


レオナルドダビンチのエピソードも


ちらっと知っていたことが、「そういうことだったのか!」

ギベルティとブルネレスキが洗礼堂の門扉のコンペで勝負したことは知っていました。
この本では、審査用に両者が制作した作品の写真が掲載されており、その違いが詳しく書かれていました。
また、芸術品としての出来だけではなく、コスト面が審査結果に大きく左右していたということです。
ルネサンスと言えども、やはりお金の問題は大きかったのか、なるほどと思いました。


フィレンツエを舞台に



メディチ家がパトロンとして多くの芸術家をサポートしたことが、ルネサンスが花開く大きな要素だったことは知っていました。
しかし、なぜそんなにサポートしたのかがよくわからずにいました。
この本を読んでよくわかりました。

当時のキリスト教は、金貸しで儲けることを禁止していました。
そこで、銀行家のメディチ家は、教会の装飾や祭りといった、都市を飾るという公的な事業に寄付をすることで、その罪を軽くできると考えたとのことです。
メディチ家にとっては、都市に貢献するという、よいイメージを市民に植え付けることになったでしょう。
また、罪は軽くなり、大きな富と力をもつという、プラスの側面がたくさんあったのですね。

この本は、私の知りたかった、芸術家たちの制作の裏側・背景といったものを教えてくれた、とても面白い本でした。

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