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89歳の母の「自己選択」について再び考えてみる


閉じこもり(*)の生活を送っていた母が、車椅子に乗ることで、好きなものを選び、自分で決める機会ができつつあります。「母らしさ」が垣間見られ、嬉しく思っています。
(*)外出したがらず家の中にいる高齢の方をを「閉じこもり」と表現している書籍がありました。母の様子を表すのには「引きこもり」よりも「閉じこもり」の方が合っていると思いました。

タイトルに「再び考えてみる」とあります。1回目に考えてみた記事は以下の通りです。よろしければご覧ください。

母とのエピソードをもとに、「自己選択」についてもう少し考えてみました。

そもそも「自己選択」とは

私は、普段、障害のある子どもさんと関わる仕事をしています。重い障害のある子どもさんに対しても、認知レベルに合った働きかけをすることで、できるだけ自分で選んで自分で決める、「自己選択」「自己決定」を大切に考えています

同じように、高齢の方にとっても、自分で選んだり、自分で決めたりする機会をできるだけ設けることが、本人にとっても、関わる人にとっても幸せなことだろうと思うようになりました。

高齢の方の福祉施設のスタッフブログに、まさにそのような記事が書かれていたので、とても共感しました。

介護保険制度は、本来、自己選択・自己決定を大切にした制度なのですね。介護サービスを選び、自分で決定することは個人の尊厳につながるとあります。

母は、介護認定を受けていますが、介護サービスを受けることについては消極的です。これまではなんとか介護サービスを受けてほしいと考えていました。しかし、母は母で、自分の生活のイメージを持ち、できるだけ家で過ごすことを自己選択しているんですね。

自己選択・自己決定には責任が伴う」ということから考えると、単に自分がしたいようにすればよい、という意味ではないということがわかります。高齢の母の希望を受け止めつつ、責任、QOL、幸福度についても見直したいとも考えます。

スーパーでの買い物・・・「何買えばいいかわからん」の母が「鮎、食べたい」と言った

「何食べたい?」「私、買い物に行くから、ほしいもの言って」と尋ねると、母は「食べたいものわからん」「何買えばいいかわからん」の返事でした。ずっと家の中に閉じこもっていて、出されるものを食べていた母。「わからん」を連発するのも仕方ありませんね。

そこで、「わからんね〜。お母さんがわからんかったら、私もわからんからね〜。お母さん一緒に買い物に行こう。色々並んでるの見たら、食べたいもの見つかるかもしれないよ。」と、じわじわ買い物に誘いました。車椅子で近くのスーパーへ外出することに成功。私の心の中では『よし!外に出られた』。

スーパーの惣菜コーナーへ行きました。母の車椅子をゆっくり押しながら「魚のおかずはこの辺。。。」と順番に惣菜をブラウジング。母は並べられている惣菜を身を乗り出して見入っていました。そして、しばらくして「鮎、食べたい」と。そこには、おいしそうな鮎の塩焼きがありました。

お菓子のコーナーでは、豆入り煎餅を手にしていました。「へえ、お母さん、こんなの食べるんだ」と、母の好みを知ることができました。

あんなに「何食べたらいいかわからん」と言っていた母が、鮎を選び、豆入り煎餅を選びました。どれも、私が一人で買い物に来ていたら買わなかったものでしょう。母が、並んでいるものを自分の目で見て、「食べたい」と思うことができたのです。

「痛い膝」の代わりは「車椅子」がしてくれる

母は膝が痛くて家の中でも歩くのがやっとやっとです。車椅子に乗ることで、膝の痛みは軽減され、楽に移動することができるようになりました。閉じこもりの生活の中では、食べたいものに対する意欲やイメージが湧きにくかったのだと思います。やはり自分で見たり匂いを嗅いだりしてこそ、意欲がわくのですね。


母の「自己選択」の機会を作るために私ができること3つ

少しずつですが、母が外出に応じるようになっています。「どっちの道から行く?」などと母の「自己選択」の機会を作りながら過ごしています。
「自己選択」できるということは自分で自分のしたいことができる、することを決めることができるということ、すなわち「自己決定」につながります。
これからも「自己選択」の機会を作るために、私にできることを3つを考えました。

  • 自由に移動できる手助けをする

  • 選びやすいように選択肢を準備してあげる

  • できないことがある時、代わりになるものがあれば積極的に使う

障害のある子どもさんたちに接する時に大切に考えていることと同じだなあ、と思います。みんな同じですよね。私たちも、子どもたちも、高齢の方たちも。

次の機会には、障害のある子どもさんの「自己選択」「自己決定」について記事を書こうと思います。


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