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山登りのススメ。義肢装具士視点から見た、初めての山行。

ども、義肢装具士の佑吉です
田植えも終わり、気のちの良い風が吹き抜けています

そんな気持ちの良い季節、新緑の山へ出かけていくのはいかがでしょうか?
私は高校生の頃、ワンダーフォーゲル部の部長を2年ほどしていて、この時期になると、新緑の中、気持ちよく山を歩いていたことを思いだします
そんな山登りは心身を鍛え、自然の美しさを満喫できる素晴らしいアクティビティですが、長時間の歩行や激しい地形での移動は足にとって負担が大きいものです
それと同時に、運動量の増加により心臓血管系が強化され、筋力や持久力が向上します
また、山の自然環境での運動はストレス解消にも効果的です
そんな登山、山登りを始めるのに最高の季節、始めきの基本的なお話をさせていただこうと思います


山登りの簡単な始め方、登り方

初心者の方にとっては、まずは簡単なコースから始めることが大切です
近くの里山などでもいいですが、意外と整備されておらず、道に迷って遭難事故を起こすこともあります
そのため、整備された自然公園などの道迷いしにくく、人の多い山がオススメです
また、一人で行くことは避け、その山に精通した経験者の方といくのがベストです
他に、スマートフォンだけでなく、紙の地図やコンパスも持っていくことをオススメします
自然公園などでは、管理棟に簡単な道案内のリーフレットなどがありますが、情報量が足りないため、そのリーフレットのみで山に入ることは避けましょう

山登りの足への負担

山登りは、様々な地形や急峻な斜面を歩くことが多く、足にとって大きな負担がかかります
そのため、なるべくスニーカーなど、街歩き用の靴ではなく、登山靴をオススメします

登山靴とスニーカーの違い

登山靴

  1. 堅牢性と耐久性: 登山靴は通常、厚いソールと強固な素材で作られており、不整地や岩場などでの使用に耐えるように設計されています
    これにより、足裏への衝撃や岩などの鋭利な物からの保護が可能です
    更に、岩場や礫場の場合、足の上に石や岩などが落ちてくることも考えられますので、アッパー部分もしっかりした構造のモノを選ぶことが必要です

  2. 足首のサポート: 登山靴は、足首をしっかりとサポートする設計になっており、不安定な地形での歩行時に足首を保護し、捻挫や靭帯の損傷を防ぎます
    ただし、登りと下りで靴ひもの結び方、締めこみ具合を調整することが必要です
    この事により、前後の動きは出しつつ、左右側面の動きは制限することができ、捻挫のリスクを減らすことができるのです

  3. 防水性: 多くの登山靴は防水性があり、湿地や雨天時でも足を濡らしにくい構造になっています
    これにより、快適な登山体験が可能となります
    仮に靴の中が濡れてしまった場合、長時間の山行により、水分に足の皮膚がさらされてしまうため、ふやけてしまい、マメや靴ずれを起こしやすくなります
    この豆や靴ずれは、山の中では致命傷になる場合があります
    山の中では電車もタクシーも無いため、仮に歩けなくなってしまった場合、遭難してしまう可能性があります

  4. 滑り止め性能: 登山靴のソールには、滑り止めのための専用のパターンや素材が使用されています
    これにより、湿った岩場や雪山などでの滑りを防ぎ、安定した歩行を支援します
    この滑り止めのパターンは、スニーカーに比べ溝が深く、一つ一つが大きなブロックとなっています
    これは、不整地をある事を想定し、地面の凹凸をしっかりキャッチする役割を担っています

スニーカー

  1. 軽量性と柔軟性: スニーカーは一般的に軽量で柔軟な素材で作られています
    これにより、日常の街歩きやジョギングなどの軽い運動に適しています
    また、アスファルトやコンクリートなどの、整地された硬い地面を歩く想定になっているため、クッション性もあります
    更に、登山靴と比べ大股である事も想定されており、かかと部分が斜めや丸くなっている靴もあります

  2. 通気性: スニーカーは通気性が高く、足を涼しく保ちます
    これにより、長時間の使用でも足が蒸れにくい特徴があります
    ただし、冬場などの寒い時期には通気性の少ないモノが多いので、3足ほどの靴を履きまわしていくのをオススメします

  3. デザイン性: スニーカーはファッションアイテムとしても人気があり、様々なデザインやカラーが提供されています
    これにより、スタイリッシュな見た目と快適な履き心地を両立しています
    ただし、完全に両立しているものは少なく、足にあった靴を探すのはなかなか難しくなっています

このように、登山靴は厳しい自然環境や悪天候に対応するための専用の靴であり、安全性と機能性が重視されています
一方、スニーカーは日常の街歩きや軽い運動に適した軽快な履き心地が特徴です

登山で気をつけたいこと

膝への負担

  1. 下り坂の負担: 下り坂では、膝関節に大きな負荷がかかります
    重力の影響で体重が膝に集中し、膝関節に加えられるストレスが増加します
    これは大腿骨と脛骨の関節面同士が、ぶつかることによります
    更に、膝のクッション性を使うため、膝周りの筋肉にも負荷が掛かります

  2. 不安定な地形: 登山コースでは、不安定な地形や急峻な斜面が多く、このような地形では、足の位置や姿勢を安定させるために膝関節が頻繁に使われます
    これは、階段などと違い、一定の間隔ではない事と整地されていないことが、大きな要因です

  3. 筋力不足: 膝周囲の筋肉が弱い場合、膝関節が過度の負担を受ける可能性があります
    特に太ももの筋肉(四頭筋やハムストリングス)の強化が重要です
    下りの場合、膝関節のクッション性を効かせるため、膝関節を少し曲げて下ります
    このとき、この肢位を維持するため、関節周りの筋肉を多く使うため、筋疲労が多く、下り終えるころに膝が笑う、といったことが起きてきます

膝への負担を軽減する対策

  1. 適切な歩行技術: 正しい歩行技術を習得することで、膝への負担を軽減することができます
    足を前に出し、踵から土踏まず、つま先へと体重を移動させるように歩くことが大切です
    また、登りでは足の裏全体で地面をとらえる様に足を運びます
    そのため、足関節を背屈(足首を中心に足先を上にあげること)しやすくするため、足関節から上の靴ひもを緩めます
    また、歩幅は小さくし、足関節や筋肉への負担を減らします
    下りでは、登山靴の中で足がずれてしまわない様に、靴ひも全体を締め直し、足関節の安定性を確保します
    更に、膝のクッション性を効かせて降りていきます

  2. 登山杖の活用: 登山杖を使うことで、体重を分散させ、膝にかかる負荷を軽減することができます
    特に下り坂や不安定な地形では、登山杖の効果が高まります
    登山杖がある事により、腕の力も使えるため、足への負担を減らすことができます
    ただし、あくまで補助ということを意識し、頼り過ぎない様に気を付けて下さい

  3. 筋力トレーニング: 膝周りの筋肉を強化することで、膝への負担を軽減することができます
    特に四頭筋やハムストリングスなどの大腿部の筋肉を重点的に鍛えることが重要です
    特に下りでは、遠心性収縮や等尺性収縮という筋肉の収縮の仕方を多くしていくため、それを意識して鍛えることが重要です
    これはブレーキの役割をする筋肉の動かし方で、とても重要な筋肉の働きになります

  4. 適切な装備の使用: 適切な登山靴やインソールの使用は、膝への負担を軽減するのに役立ちます
    また、軽量かつ柔軟な装備を選ぶことで、歩行時の負荷を軽減することができます
    荷物の重さは、そのまま直接膝への負担になります
    なるべく軽く、ただし機能的なものを選ぶようにしましょう

  5. 休憩とストレッチ: 長時間の登山中には、定期的な休憩とストレッチが重要です
    筋肉の疲労を軽減し、柔軟性を保つことで、膝への負担を軽減することができます
    筋肉は収縮させることで力を発揮します
    そのため、長時間収縮させ続けると、その状態で硬くなってしまいます
    そうなると、血流などの循環が滞り、酸素や栄養素が送られにくくなり、本来の機能が発揮されにくくなるので、休憩の時は、ストレッチをすることによって、筋肉の収縮をリセットさせることを意識してみて下さい

これらの対策を実践することで、登山中の膝への負担を軽減し、安全かつ快適な登山体験を楽しむことができると思います

まとめ

山登りは自然とのふれあいや健康づくりに最適なアクティビティですが、快適な歩行環境が欠かせません
最初は、普段の自分の体力や活動度合いにあった、山や行程を選び、無事に帰ってきて、「あ~楽しかった✨また行こう!」と思えるような山登りを楽しんでください
そのために、普段の生活を整え、身体・足の環境を整えていってもらえればと思います

いかがだったでしょうか?
義肢装具士として、解剖学や運動学を織り交ぜてまとめてみました
少しでも、山登りに興味を持ってもらい、一歩踏み出すきっかけになれば幸いです

その時、足・脚の負担を少しでも減らすために、オーダーメイドインソールを使っていただければと思います

ではでは

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