町田戦の備忘録

スタメン

前半

 オープニングのプレーは岡山がジョンウォンがロングボールを右サイド奥に送り込む。そこからボールサイドでのセカンドボールの奪い合いが続き、岡山の右サイド側でボールが行ったり来たりすること約3分。立ち上がりの振る舞いを見るだけで442のブロック全体をボールサイドに寄せて密集を形成して奪い取りたい、という同じ守備の意図を持つことが分かる両チーム。しかし、奪ってからのボール保持は両チーム異なる意図を持っているようであった。

 奪ってからはサイドチェンジを行わず、ボールサイドにFW(富樫や中島)を流して起点にして、そこからワンタッチでボールを動かしたり、ロメロフランクのドリブルで運んだりすることでボールをゾーン3深くまで運びたい町田。これに対して岡山は逆サイドのSHのアイソレーションを意識するするプレーが多かった。ボールを奪ってからのトランジションを素早く行い逆サイドへ展開する形を狙っており、これが決まった時町田はボールサイドに多くの人数をかけている分奪いに行けず、岡山は易々とゾーン3まで運んで行けるという寸法である。

 この形がまさにハマったのが6分の先制点。岡山の左サイドでの密集からセカンドボールを仲間が奪うと、赤嶺から逆HSにいた久保田に素早く展開、ワンタッチでクロスを入れた所にヨンジェが詰めて先制に成功した。久保田がクロスを入れる段階でペナ内に選手が3、4人入っていることからもチームとして狙っていた形である事は明白。立ち上がりにチームの狙いとする形で先制できたことは、岡山にとってこの先確信を持ってプレーできるという意味で非常に大きい展開となった。

 スコアが動いたのが非常に早い時間帯であったので、岡山先制後も両チームともにボール保持での狙いとする形は変わらず。そうなるとボール非保持での振る舞い、密集からいかにマイボールにしていくかの部分で差が生まれてくるが、この部分で優勢に立ったのは岡山であった。442同士マッチアップするのを利用して、ゾーン2にボールが入ったときにはボールホルダー近くの選手が強く詰めに行くことを徹底していた。

 これで明らかになったのがSBの人選の意図。前節は右に椋原、左に廣木だったのが、この試合では右に廣木、左にジョンウォンであった。サイドに起点を作りたい町田に対してボールホルダーに強く当たることのできる選手を起用することで、起点を作らせない意図があったと思われる。特に右サイドでは、廣木と久保田の2枚を中心に町田に自由を与えないプレッシャーをかけることができているシーンが多く見られた。

 どうにかして打開したい町田であったが、ゾーン2でのトランジションが連続する局面での球際で競り負ける場面が多く目立つ。そのために密集を打開できず、蹴り出して攻撃を切ってしまうシーンが多々。本職SBではないジョンウォンがいるためか、仲間との連係に若干の怪しさを見せていた岡山の左サイド守備を中島が流れることで突く形こそ単発的に見られるものの、ゴール前で濱田と田中の両CBが落ち着いて対応できていたので、岡山を慌てさせるようなシーンはほとんど見られない。頼みのセットプレーも、メインキッカーである森村のキックの精度が欠けていた。

 ゾーン2でのトランジションで優位に立ち主導権を握る岡山は、ヨンジェと赤嶺が縦関係の2トップを組むことで、赤嶺が上手くセカンドボールの起点になりつつ、ヨンジェのラインブレイクと仲間のアイソレーションで町田ゴール前に迫る形を作ることができていた。30分以降は、左SHの仲間のアイソレーションからボールを運び、CHの武田や関戸が左大外を回る形からシュートやクロスに持って行く形も見られた。ジョンウォンは基本的に攻撃参加することはなかったので、CHが高い位置を取ることで左サイドからも厚みのある攻撃を出そうとしていた。

後半

それだけに立ち上がりはもったいない試合の入り方をしましたし、前半は腰の引けた姿勢が散見されたことも、申し訳なかったと思います。

 上記の通り、相馬監督の試合後の会見にもあったが、前半は密集地域でのトランジションと球際の攻防で後手を踏んでしまった町田。ハーフタイムに活を入れられ前から積極的に行こうとする姿勢を出してくると有馬監督は読んだのだろう、岡山はそんな町田の機先を制するかのように、立ち上がりはシンプルに町田のハイラインの裏にヨンジェを走らせるロングボールを多用。そこから得たファールから町田ゴールを襲うシーンが見られたが、久保田のFKから46分の仲間のシュートは増田に止められる。

 後半立ち上がりの岡山は前述のヨンジェを走らせるロングボールと仲間のドリブルでゾーン3まで運び、高い位置でスローインやFKを獲得、そこから高い位置からの守備を行うことで前半に引き続いてセカンドボールを回収する形を作ることができていた。54分には左サイドのスローインからセカンドボールを赤嶺が回収、逆サイドの廣木に展開してのクロスに仲間が飛び込む形を作るもこれも増田にセーブされた。

 一方の町田は55分に富樫→ジョンチュングン、前線のパワーを強化する交代策で攻撃の姿勢を強めようとする。前半同様にサイドチェンジは使わずワンサイドで攻めきろうとする姿勢は変わらないものの、ジョンチュングンが入ったことで運べる選手が増えたからか、ドリブルで運んで行こうとするプレーが増える町田。60分頃になると、ゾーン2での密集を剥がして前に運ぶ回数を増やしていけるようになっていった。密集を剥がすことでサイドで高い位置を取ることができるようになった町田は、佐野→下坂でサイドからのクロスを増やしていこうとする。

 ここで、町田が密集から運べるようになっていった要因について考察をしてみる。まず一つは、町田が岡山の球際に対して慣れてきたということ。前半は球際の部分で岡山に競り負け、セカンドボールを岡山に拾われることが目立っていたが、後半になるとジョンチュングンや中島、土居などアタッカーが粘ってマイボールにする回数が増えていった。前半からのトランジションの連続で岡山の守備の強度が落ちていったというのもあるだろう。

 もう一つは、後半から岡山が縦に急ぐようになったところにある。立ち上がりにヨンジェを裏に走らせる展開でチャンスを作ることができたからか、町田の前からの守備の強度が高まったからか、恐らく両方の理由だろうが、岡山がボールを落ち着けることが少なくなり、すぐに前線に蹴るようになっていた。これによって岡山の陣形が縦に間延び、前半できていたゾーン2でのコンパクトが弱まったことで町田に運ばれるシーンが増えていった。

 徐々に町田に流れが傾く中、68分に岡山は赤嶺→福元、町田は森村→岡田。岡山の交代の狙いはシンプルに前線の活動量補填。赤嶺がかなり審判とバトっていたので警告の警戒もあったかもしれない。町田の交代の狙いはドリブラー投入で個人での打開強化。早くも町田は3枚のカードを切った。町田は交代と同時に土居と中島のポジションを交代、土居が前線に入る形となった。

 町田の攻撃的な選手交代が実ったのは76分。左ミドルゾーンでの仲間のドリブルをカットしたロメロフランクから岡田へ、岡田が自らドリブルでゴール前まで運んでクロス、ニアで土居が詰めたシュートを一森が弾き切れずに1-1の同点に。前半から町田はクロスはニアorマイナスというのを徹底していたが、それが実った形となった。

 同点に追いついて以降の10分間、町田は勢いに乗って猛攻を仕掛ける。交代して入った左SBの下坂が高い位置を取って、左サイドを中心に押し込む形を作る。オープンプレーで岡山のペナ内にボールを入れた回数は10分間で6、7回(手元調べ)。岡山はいつ失点してもおかしくなかったが、79分の岡田のCKからジョンチュングンのヘッドはポスト、81分、82分の左サイドからのクロスに土居がニアで詰めた形は一森のセーブや枠外に救われた。

 80分に久保田→中野(福元が右SH、中野がFWに)の交代で押し返したい岡山だったが、ここまで再三裏抜けを繰り返していたヨンジェの体力切れもあって前線のパワーは戻らず。オープンな展開でクロスにまで持っていくことはできても精度を欠き、87分のミドルゾーンで奪ってのカウンターから福元のシュートも枠外。試合はこのまま1-1で終了した。

雑感

・追い付かれたのは痛恨だったし、勝ち点2を落とした試合だとは思うが、失点後のピンチの多さを考えると負けなくて良かった試合だったと言えるかもしれない。

・前回の雑感でラスト15分の失点が10と書いたが、今回もまた更新して11に。ここまで多いとラスト15分のクロージング問題はたまたまで済ませて良い事案でないことは確実。個人的には最終ラインの耐久性よりは

①:時間経過による前線のパワー不足、及びパワー充填のできる人材不足(単独でゴリ押せる斎藤・レオミネイロの負傷が痛い)
②:ボール保持の錬度不足、特に相手ハイプレッシャー・パワープレー下では顕著

以上2点の問題が大きいのかなと思っている。様々なコメントから見ると有馬監督も選手たちも似たようなニュアンスで問題点を認識してはいるようなので、これをどう解決していくのか。ピッチ上での修正力の高いチームなので解決できるだろうという期待の一方で、ピッチ上での修正力の高いチームがここまで繰り返すということはもう解決は難しいのでは、という不安があるのも本心。

・解決できなきゃできないで得点取ればいいんや、3点取れば2点取られても勝てるんや、というケセラセラ精神で行くのもアリかも。

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