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製造業におけるSaaS活用の可能性と今後の東京ファクトリーの歩みについて

こんにちは。東京ファクトリー代表の池です。東京ファクトリーでは2022年8月にDIMENSION、SBIインベストメント、既存投資家のANRIを引受け先とする第三者割当増資により2.5億円のプレシリーズAの資金調達を実施しました。
今回の資金調達は2020年11月のシードラウンドでの調達以来、約1年9カ月ぶりの資金調達になります。
前回のシードラウンドは創業後約半年で、複数の製造業企業とPoCを実施しているという状態でした。その後多くのお客さまとの対話やプロダクトの利用・フィードバックを通して、改めて東京ファクトリーが解決したい課題や製造業SaaSに取り組むことの意義を再確認することができました。このnoteを通して、製造業におけるSaaS活用の可能性と今後の東京ファクトリーの事業の方向性について知っていただければ嬉しいです。

日本の製造業における課題

まず、東京ファクトリーが挑戦している製造業の課題について紹介をさせてください。
日本の製造業の抱える課題は様々ありますが、最も大きな問題は、製造業の従事者数の減少であるいえます。国内の製造業就業者数は2002年の1,202万人から2021年には1,045万人へと20年間で157万人減少しています。また、全産業に占める製造業の就業者割合は3.4%減少しています。
依然日本のGDPの20%(米国は12%)を支える製造業の競争力維持は日本の産業にとって非常に重要ですが、就業人口が減っていく中で、業務効率化の推進海外生産拠点との連携強化が喫緊の課題になると我々は考えています。
これまで、日本の製造業は「トヨタ生産方式」に代表されるように革新的なものづくりプロセスを生み出してきました。また、KAIZENのDNAは自動車産業だけでなく様々な業種・規模の製造業にも浸透しており、日本の製造業の競争優位性の源泉になっていました。
しかし、現場の改善活動は非常に高いレベルで長年行われてきたため、既存の方法での業務効率化はすでに飽和状態に近くなっていると感じています。

そのような状況の中で、私自身が川崎重工業で勤務した経験やお客様との対話と通して、現場データの利活用はまだまだ進んでいないということを強く実感しています。我々はものづくりの現場でこれまで活かされていなかったデータの活用を促すことで、デジタルを組み合わせた新たな”現場の管理手法”を提案していきたいと考えています。

製造現場におけるデジタル化の現状

世界の工場のデジタル化市場は2020年4.3兆円でありながら年平均成長率9%以上で伸びると推計されていますが、市場の8割以上を「設計・販売・計画システム」「ProcessAutomationシステム」が占めており、「生産現場システム」は2020年1,300億円とまだ全体の3%に過ぎません。(富士経済『2021年度DIGITAL DACTORY関連市場の実態と将来展望』より)

富士経済『2021年度DIGITAL DACTORY関連市場の実態と将来展望』より作成

しかし、上述の通り現場の業務効率化をデジタルを用いて合理化したいというニーズは非常に高まっており、2025年には3,500億円を超えるほど成長すると予測されています。
また、ERP(販売・計画システム等)やMES、SACADA、PLC(Process Automationシステム)については以下の図のように超大手企業が参入していますが、まだ現場向けシステムでは大手が市場を席捲しておらず、この領域での新規参入は今後進むと言えるのではないでしょうか。

ERP、Process Automationシステムの代表プレイヤー

製造業SaaSの現状と可能性

上記のような市場状況の中で、現場での利活用が導入のキーになる現場向けシステムはユーザービリティが非常に重要になることから、SaaSの活用の余地がとても大きいと我々は考えています。
しかし、様々な産業でバーティカルSaaSの浸透が進む中で、製造業向けSaaSについてはまだそこまで市場が確立されていません。
※他業界ではIPOや数十億円の大型調達をするSaaS企業が目立つ中で製造業SaaSでは10億円以上の調達をしている企業は数えるほどです。

製造業向けSaaSがこれまで浸透していなかった理由として、プロセスの個別性が高いためカスタマイズ要望が強いことや、業界全体のセールスサイクルが長いことなどが考えられますが、SaaS先進国である米国での先進事例が少ないということも大きな理由ではないかと思います。
米国では建設業やメンテナンス業ではグローバルスタンダードとなるSaaSが多数生まれている一方で、製造業現場(特に労働集約になりがちな組立系製造業)の海外移管を進めてきたため、他産業と比較して製造現場という領域で勝負する起業家が生まれ辛いのではないかと考えてます。
では、米国以外でどのような地域からグローバルスタンダードとなる製造業向けSaaSが生まれるかと考えたときに①製造業が盛ん②人件費が高く現場の効率化圧力が強いという二つの条件を満たす、欧州もしくは日本から生まれる可能性が高いと考えています。
特に、日本は今後数十年は製造業が発達するとみられるアジアに位置していることから大きなポテンシャルがあるといえます。

東京ファクトリーの目指すところ

東京ファクトリーでは今回の資金調達と時期を同じくして「日本発の世界標準となる製造業SaaSをつくる」というビジョンを掲げました。
現在提供しているProceedクラウドはこれまで活用されてこなかった写真データを活用することで、業務効率化と海外生産拠点との連携を強化することが出来るのですが、現在、EPCや商社、船舶メンテナンスなどのお客様を通して世界10ヶ国で活用いただいています。一方で、まだ海外企業との直接契約は無いという状態です。
Proceedクラウドは通常製造業向けソフトウェアが導入に長い時間を要することと比較してクイックに導入が可能でネットワーク効果も効かせやすいという特徴があります。そのような特徴を生かし、今後はアジアへの取引拡大を狙っているのですが、世界の工場と日本を繋げていくプロダクトに進化をさせていくことで、日本の製造業の競争力維持、ひいては世界の製造業のレベル向上に貢献することを目指しています。

最後に

目標を実現するためにも、現在は国内のお客様の海外での活用など進めながら、まずは、組織/技術面でのプロダクト基盤の構築、国内でのセールス再現性の向上のための組織構築などの土台構築を進めています。
東京ファクトリーはまだ正社員が8名と小さな組織ですが、だからこそ一人一人の活躍とそれを実現する環境の構築が非常に重要です。ビジョンの実現に向けて、製造業DXやレガシー産業の変革に情熱を持って一緒にチームビルディングをしていただける方を募集していますので、もしご関心のある方は是非、お気軽にお声がけください!

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