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星海天測団
2021年9月25日 22:10
天降り、それは静止軌道四万キロメートルから惑星表面まで一気に降下する惑星メインスの成人通過儀礼。 友と二人で行い、その友とは義兄弟として死ぬまで共に生きることになるとされていた。 見上げると黄色い星があった。惑星メインスは黄色砂漠と黄色海に覆われた惑星であり、動植物も擬態するために黄色に進化している。 陽芽の家はメインス静止軌道にあるステーションのメインス側だった。横の見れば無数の家々
2021年9月17日 19:20
「はぁ・・・・・・」 文学少女陽芽はため息を漏らしていた。 右手に握った落選通知書は作詞コンテストから送られてきたものだった。――これで何回目だ・・・・・・? 実のところ、わざわざ通知書を送ってくるコンテスト自体が珍しかった。 丁寧だな、と思う一方、改めて突きつけられる『落選』の二文字はなかなか心に来る。 学校一番の歌声との呼び声高い歌奈にどうしても自分の歌を歌って欲しい。陽芽は
2021年9月10日 18:59
平均点が高いこの街のカフェだが、ここは飛び抜けて不味かった。雨と霧の街で不味い紅茶に出会うことはそもそも奇跡のように感じる。 それでもそれなりに繁盛しているのは、この街の舌が良くないのだろうか。するとこの島のメシマズ伝説を証明することになる。 そんなことを考えていると奥からカズキが歩いているのが見えた。味は最悪だが、街角にあり古いレンガビルの一階を改装したこの店の見晴らしは最高だ。空襲を生き
2021年9月3日 15:30
扉を開けるとベビーパウダーのような甘い匂いがあった。「あ、お帰り」ピンクの毛布に包まった小動物が目をこすりながら言う。「陽芽はもう寝る時間でしょ?」 大きな隈を浮かべた歌奈が柔らかにたしなめる。「でも歌奈が心配で・・・・・・」 弱々しく発せらた優しさが歌奈の矛を緩めさせた。服を乱雑に脱ぎ捨て、ベッドに飛び込むと、陽芽と抱き合う。 そこは十二畳の部屋一杯にベッドが敷き詰められた秘密の花