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「DX成功の鍵:データガバナンス」

少し前(8月24日)、DWHを基盤にSaaSを使い倒し、DX-Readyを実現しましょうという主旨の以下の記事を書きました。

しかし、DWHは、おそらくはそのほとんどが非競争領域のための既存ソフトウェア資産に囲まれ、その維持運用に多くのIT人財を使ってしまっている、どうにも身動きのとれない人たちにとっても重要なことであり、決してSaaSと不可分の関係というわけではなく、「SaaSにとっては必要であるが、DWHにとってSaaSは必要なものではない」ということをご理解いただきたい思います。

そして、DWHを活きた経営資源(資産)として継承していくための前提条件が、データガバナンスポリシーであり、そのポリシーに基づくルールと適切な運用体制です。


ITガラパゴスの日本

一方、日本のITがガラパゴス化してしまっていることを知ってもらいたく、このnoteでも記事にしています。つまりITを活用すること、つまり、論理空間上にソフトウェア化することができないままコンピュータシステムを使ってきてしまい、日本だけが論理空間設計能力を置き去りにしてきてしまった要因として、大きく3つの要因をとりあげています。

時差の無い日本

拠点毎に日中のデータ入力と夜間バッチによるデータチェック&集計&帳票作成にコンピュータを活用していた時代から、一つの大きなコンピュータとネットワークで繋がったDAM端末のアーキテクチャーに移行する際に、時差を克服するために、業務処理の標準化だけでなく、夜間バッチをやめてトランザクションデータの一個流しの一貫処理に変えた米国と、時差を克服する必要がなく、標準化するだけで統合化できた日本との違いについて記載した記事ですが、いまだ気づいている人が少ないです。

理屈を嫌う日本人

道や思想を語るのは大好き、手っ取り早い手法は大好きなのに、理屈はほんとうに嫌いです。生活習慣病対策においても、運動や食事のコントロールは嫌いでも、薬は大好きな人が圧倒的に多いのがそれを物語っていますが、「理想はわかるけど現実はなかなかできないよねぇ~」の居酒屋トークで終わらせたいからでしょう。論理空間のデザインは理屈そのものですから、わかってもわかりたくないという現状維持バイアス(認知的不協和と不確実性の恐怖)が強くかかるのだと思います。

太平洋戦争による社会的非連続

太平洋戦争でズタボロになり、社会的連続性を失ったことが、1950年代から商用が始まったコンピュータ活用の歴史に大きな影を落とし、すでに行き場を失っているのにも関わらず、人工呼吸器と胃瘻で生かされている寝たきり老人のごときIT子会社に代表される無知で無責任なマネジメントの禍根は全く解消される見通しもなく、いまだにその影響を受け続けているということでしょう。

島国日本における同質性確保の必然

そして、無視できないのが、島国日本において人々が生きていくための集団生活の知恵である同質性の確保です。

日本は島国で、民族的にも同質性の高い集団によって受け継がれてきました。同調圧力とも言いますが、個人に着目すれば同調依存の人が多く、常に人目を気にする人が多い特徴があります。不慣れなノイジーマイノリティ対策に右往左往しているのも、残念ですが頷けます。

人の認識は、その個人の記憶と認知だけに依存しているものであり、他と直接共有することはできません。ともに暮らす家族であっても、言葉にし、形にし、文字にして、共有を図りますが、本当に同じように認識している可能性は低いと考えた方がいいでしょう。ただ、集団としての生産活動の生産性を上げていくためには、できるかぎり齟齬を最小化した認識で活動する必要があります。そのために、集団としての同質性の確保とともに、各人に同調行動を求めていく必要があったし、長い間それが脅かされることは少なく、国レベルで肯定され続けてきたと言えるでしょう。

米国においても、テレビシリーズで描かれる外部からの流入者の少ない田舎にも同質性を求める(異質を排除する)文化が見られます。

日本の伝統企業においても、それは同じです。コミュニケーションの齟齬を最小化するために採用レベルから徹底的に同質性を求め、同調を良しをする企業風土を前提にしたピラミッド組織で連綿と事業を行ってきたわけで、論理空間設計やら面倒なデータ論議などには価値を見出せなかったでしょう。

多様性の受容

二律背反の同質化(同一性)と多様性

繰り返しになりますが、人は個々の記憶と認知に基づいて情報を収集し、予測、判断、そして行動を行っています。しかし、個人によって認識は異なるため、デジタル化の進んでいない組織では、意図的な情報の同質化により、この認識の齟齬を減らし、組織行動をより効率化することが求められてきました。日本では、長らく同質化が経験的に重要なものであり、文化的同調性もこれを強化してきました。終身雇用というシステムも、社員は家族だという概念も、村での共同生活から自然に持ち込まれたものと推察できます。

しかし、グローバルな競争の場では、多様性を当たり前のものとして事業を行っている企業に比べると、同質性は組織の革新性が低く、変化への適応を妨げていることは、多様性の必要性を謳っている人たちにとっては充分理解していることでしょう。しかし、現状維持バイアスを打破し、創造的な発想の発展を促進するためには、多様性を尊重しつつも一貫性やコミュニケーションにおける認識齟齬の最小化を図る必要があることを忘れてはいけません。

多様性を受容するために

このバランスを取るためには、組織を構成する人の同質性を確保し同調性を求めていく代わりに、仕事を行う上で必要な齟齬なき共通認識を作っていくための明確なデータの定義と、その運用を統制するデータガバナンスポリシーが不可欠だいうことです。データガバナンスポリシーは、多様な意見とアイデアが交流する中で、一貫性のある情報基盤を維持するための基本です。組織としてこの方針を共有し、実行に移すことが、組織の革新性と効率性を同時に追求する鍵であり、データガバナンスポリシーやルールのないDXなどありえないことを理解して欲しいと思います。

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