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『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』⑪下半身の筋トレの頻度

筋トレの世界は、数多くのアプローチが存在しますが、最終的には同じような結果が得られる。
それが「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」です。

このシリーズでは、最低限の科学性を保ちながら、時には若干飛躍的な主張も交えつつ、読者がトレーニングを続ける意欲を高めるためのエビデンスを提供します。
筋トレ愛好家や初心者の方々にとって、本シリーズが新たな視点を提供し、トレーニングをより楽しく効果的にする手助けとなれば幸いです。

過去のシリーズ

11回目となる今回読み解く論文はこちらです。
Pedersen, H., Iversen, V. M., Vereide, P. F., Stien, N., Saeterbakken, A. H., Fimland, M. S., ... & Andersen, V. (2024). High‐frequency resistance training improves maximal lower‐limb strength more than low frequency. European Journal of Sport Science, 24(5), 557-565. https://doi.org/10.1002/ejsc.12055

早速詳細を見ていきましょう。

過去6カ月間筋トレをし続けている男女を対象として、下半身の筋トレの頻度が動的筋力(スクワットの1RM)、筋肉量(マルチ周波数体組成計で測定)、筋厚(超音波法で測定)などに与える影響を調べるために、性別の比率が均等になるように、対象者たちをランダムに次の2つのグループに分けました。
・低頻度群(週1回)
・高頻度群(週4回)

トレーニング実験の概要は次の通りです。
期間:8週間
種目:バーベルスクワット、デッドリフト、ダンベルスプリット、ダンベルブルガリアンスクワット
強度:6~12RM
セット数:4-5セット/種目
休息時間:2-3分

低頻度群は週1回、高頻度群は週4回の頻度で上記のトレーニングを行いました(高頻度群は各セッションで1種目のみを実施)。
したがって、当然ではありますが、各セッションの合計のセット数は両者で異なります。

結果をみていきましょう。
外側広筋の筋厚は両群で増加しましたが、群間差はありませんでした
つまり、トレーニンググループに関係なく、両群ともに筋肥大が起きたということです。
この結果は『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』を支持するものです。
なお、下半身の筋肉量は両群ともに有意な増加が起きませんでした。

一方、動的筋力は両群ともに増加しましたが、その増加は高頻度グループの方が顕著でした(高頻度グループ:15kg、低頻度グループ:8kg)。
この結果は、動的筋力の増加を最大化するには1回当たりのセット数を抑えて、頻度を高めた方が有益なことを示しています。

今回のトレーニングプログラムでは週当たりの4種目合計のセット数が10セットを上回っていたため、1回で全てを行おうとすると、疲労の蓄積が大きくなる恐れがあります。
また、多関節種目の動的筋力を高めるには筋肉の使われるタイミングなどの運動学習を最適化することが求められますが、その場合でも頻度が高い方が基本的にはプラスに働く可能性があるようです。

ちなみに、この実験では、トレーニング実験のプログラム以外の下半身の筋トレの実施は禁じられましたが、それ以外の部位のトレーニングについては禁止されていません。

個人的には、他の日に上半身や体幹の筋トレをしたか否かでも結果が変わる可能性があると考えられますが、この点は研究の限界でも述べられていませんでした。

いずれにしても、筋肥大を目的としてトレーニングをしている場合は週当たりのセット数を確保するために、どちらのやり方が自分に合っているのか、ライフスタイル上の他の制約を考慮して決めれば良いと言えそうです。

執筆家としての活動費に使わせていただきます。