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『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』⑦ドロップセット

筋トレの世界は、数多くのアプローチが存在しますが、最終的には同じような結果が得られる。
それが「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」です。

このシリーズでは、最低限の科学性を保ちながら、時には若干飛躍的な主張も交えつつ、読者がトレーニングを続ける意欲を高めるためのエビデンスを提供します。
目指す世界観は水戸黄門のような安心感。
筋トレ愛好家や初心者の方々にとって、本シリーズが新たな視点を提供し、トレーニングをより楽しく、効果的にする手助けとなれば幸いです。

過去のシリーズ


7回目となる今回読み解く論文はこちらです。
Sødal, L. K., Kristiansen, E., Larsen, S., & van den Tillaar, R. (2023). Effects of Drop Sets on Skeletal Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports medicine - open, 9(1), 66.


今回は、ドロップセットの効果について、一次研究(実験研究)をもとに再分析した系統的レビュー・メタ分析をもとに見ていきます。

そもそも、ドロップセットとは、所定の強度(重量)でコンセントリック収縮が疲労に至るまでセットを行い、その後強度を減らして次のセットを直ちに実施し、再び疲労に至るまで実施する方法です(その過程を3回以上繰り返す場合もあります)

一口にドロップセットと言っても、具体的な方法は多少なりとも個々に違いがありますが、上記の系統的レビュー・メタ分析でも選択されている次の研究をもとに、具体例を挙げたいと思います。
Varović, D., Žganjer, K., Vuk, S., & Schoenfeld, B. J. (2021). Drop-Set Training Elicits Differential Increases in Non-Uniform Hypertrophy of the Quadriceps in Leg Extension Exercise. Sports (Basel, Switzerland), 9(9), 119.

ドロップセットの具体例
①最大筋力の約5RMの負荷でMuscular Failure(MMF)まで実施
②直後に重量を約20%減らし、MMFまで実施
③直後に重量をさらに10-15%減らし、MMFまで実施

MMFは失敗するまで実施することを意味する
各セットで3-7回の反復回数になるように調整


話を系統的レビュー・メタ分析に戻します。
この系統的レビュー・メタ分析の概要を下記します。
■方法
・6つの一次研究(メタ分析は5つ)を対象に再分析

■結果
・メタ分析によれば、
①ドロップセットを実施したグループと従来のトレーニングを実施したグループの両方で筋肥大を確認した
筋肥大効果は、ドロップセットを実施したグループと従来のトレーニングを実施したグループの間で有意差がなかった

ここでの従来のトレーニングとは、例えば8-12RMの強度を数分の休息時間を設けて数セット実施するといった一般的に筋肥大を高めるアプローチのこと

■結論
この系統的レビュー・メタ分析の結果は、時間制約がある人々にとってドロップセットが筋肥大を最大化する効率的な戦略であることを示唆している。ドロップセットと従来のトレーニングの間で筋肥大に有意な差はなかったが、ドロップセットのいくつかのアプローチは従来のトレーニングと比較して半分から三分の一の時間しかかからなかった

②の結果は『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』を支持するものです。

また、結論の2つ目の部分は、トレーニング時間の確保に悩む人にとっては朗報です。

ただし、ドロップセットは短時間ですが、かなり疲れるトレーニングです。
なぜかというと、ドロップセットでは、最初のセットで筋肉を限界まで使い果たし、その後すぐに重量を下げて追加のセットを行うため、筋肉に著しい負荷が課せられます。
筋肉が疲れている状態で、追加的に無理やり限界まで駆り立てられるイメージです。

筋トレの方法がトレーニングの継続にどのような影響を及ぼすのかは人それぞれです。
時間の確保に悩むけど、強い疲労に立ち向かえる人はドロップセットが適しているかもしれません。
一方で、時間は比較的確保しやすいけど、追い込み過ぎると体調を崩しやすかったりする人は、ドロップセットではなく、従来のトレーニングがオススメできるでしょう。





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