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家族を見守る健気なあの子(被害・市場編)

今回のテーマは、タイトルからかなり遠回しな言い方になりますが、「火災」です。火災をつねに見張ってくれる、天井に引っ付いたあの子、火災の警報設備について、皆様に知っていただきたいと思います。

実は、私も社会人になり、仕事で建設業界に携わるまで存在を気にも留めたことがございませんでした。万が一のときにしか出番はないものの、法律で設置が義務付けられる重要な設備です。そんな設備に関する知見を今回は少しだけでも深めていただければ幸いです。

全2回のうち、初回の本記事ではまず、「なぜこのタイミングで、火災の警報設備について知見を深めてほしいか」を理解していただけるよう、近年の火災被害の状況や、COVID-19禍での住まいへの意識の変化についてまとめております。



1.日本の火災被害の分析

2017年のデータですが、火災が発生した建物用途としては、母数が大きいこともあり、住宅が約3割と最も多くなっております。なお、火災による犠牲者数は、住宅火災が約7割となっております。

火災発生件数は全体の3割なのに、犠牲者数が全体の7割となっていることから、火災がひとたび発生してしまうと、消火設備等が備わっていない場合が多い「住宅」という建物用途が最も危険であると言えます。

また、高齢化トップランナーの我が国では、火災による犠牲者のうち、高齢者が7割超を占めております。犠牲者に占める高齢者の割合も増加傾向にあるため、消火設備のない住宅では、いち早く・わかりやすく火災を知らせる警報設備の重要性が高まっております。

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さらに住宅火災を出火要因までブレイクダウンすると、居住者マターとも言える「たばこ・こんろ・ストーブ」が約半数を占めていることがわかります。最大の出火要因である「たばこ火災」について、さらに紐解くと、死亡率は驚異の3割超で、重篤な被害が出やすいと言えます。

寝たばこ、たばこ・こんろの消し忘れ、ストーブが倒れていることに気づかない…どれも高齢化が火災被害の増加に直結することは容易にイメージできるものばかりです。

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また住宅火災の犠牲者の半数超が、逃げ遅れにより発生しております。高齢者の犠牲者の割合が大きくなるのは、感覚機能の低下を考慮すると当然の結果です。家族が分散して就寝したり、寝たきりの居住者がいる住居では、特に対策が求めらます。

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2.Before COVID-19の住宅市場

少しスコープを引いて、建設業界の市場動向を見てみましょう。民間の建設投資額の推移をみると、2016年を境に新築市場への投資額は年々減少しております。オリンピック特需が終わり、この傾向は加速すると予測されます。

新築の市場縮小に反して拡大しているのが、リフォーム(補修)市場です。先10年の市場規模は、前10年と比較して拡大します。

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ちなみにリフォームを実施している年齢層は、50歳以上が約8割を占めております。これは住宅購入年齢層に30・40歳台が多く、その10~20年が経過してリフォーム適齢期を迎えた層と捉えることができるでしょう。

ちょうど高齢者に差し掛かるタイミング(失礼)でもあるので、内装や水回りだけでなく、火災の警報設備にもぜひ目を向けていただければという思いで、本記事をかいております。

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3.With COVID-19での住まいへの意識変化

この拡大するリフォームのトレンドが、COVID-19禍においてどう変化したかを見てみましょう。

日本でCOVID-19が目に見えて感染拡大しはじめた1年ほど前、急速な行動変容が起こりました。皆様にもきたかと思いますが、LINEを介したアンケートから1週間ごとに大きく人々の意識と行動が変化していたことが読み取れます。

東京での変化が特に顕著ですが、職種によってはテレワークが常態化した企業も多くあります。私もBefore COVID-19では、月に数回ほどしかテレワークをしておりませんでしたが、2020年3月以降は基本的にテレワークとなりました。

その結果、これまでは平日一日の大半を外(オフィス)で過ごし、10時間ほどの休息をとるだけだった「家」というものの定義が、ドラスティックに変わりました。

実際、私も丸一日自室で過ごすようになり、これまで気にしなかった不便が気になり、家具を総入れ替えしました。

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私はよく、世間の関心がどのように移りかわっているのかを、Googleトレンドを使ってウォッチしているのですが、リフォーム・リノベーション・改築への関心が、緊急事態宣言に対応して大きくなっていることがわかります。

日本の住宅がテレワークを念頭に置いた設計となっていないというお話がよくされますが、まさしくその通りだったことがわかりました。

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本記事では、高齢社会の日本において高齢者の住宅火災犠牲者が多いこと、また不可逆的だったリフォームのトレンドがCOVID-19により加速していることを示しました。

せっかく「家」を見直すタイミングがきているなら、火災の警報設備にもぜひ目を向けてほしい。そんな思いが少しでも伝われば幸いです。

次の記事では、集合住宅と戸建住宅の警報設備に着目して、最近のトレンドを含めた紹介をしていきます。


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