「星々の船」【ファファード&グレイ・マウザー】_ヒロイック・ファンタジーの思い出
本記事はフリッツ・ライバー「星々の船」のネタバレを含みます。恐れ入りますがご了承下さい。
男二人が、お宝求めて雪山へ。猫もいる。
フリッツ・ライバーの中編小説「星々の舟」(『妖魔と二剣士』所収、書誌情報は末尾に記載)は、おおよそこうした「つかみ」のお話です。
その昔、読んだときに思ったのは、登場する山「スタードック」の標高はどれくらいと、いうことでした。
冒頭に「連峰の高さは二リーグ」(「星々の舟」27頁、以下特記ない限り、ページ数は同作のもの)とあるので、だいたい9000〜10000mとみてよさそうです。
ところが、当時はこの1ページ目を見落としていたので、CASIOのウェブサイトにある、ユーザさんが投稿した数式を使って推測しました。
沸騰してるのに人間が飲用可能な域にまで沸点がさがるのは標高何mだろうと、適当な数字を入れてみたわけです。そうしたら、ドエライ標高である可能性が出てきてびっくりしました。
また、同じ場面でグレイマウザーが***を直観するも、結局口に出すことなく終えるのを読むと、読者としてはグレイマウザーを応援したくなります。
ちなみに、標高9600mだと、だいたい70度で沸騰するらしいです。70度の液体を「平気で飲める」(96頁)かどうか、ちょっとハテナですが、外気で冷えるのかもしれません。
のっけから揚げ足取りみたいになって恐縮ですが、読み手をあれこれと動かすだけのパワーのあるお話なのだと思っていただければ幸いです。
読んで何を思ったかとは別に、どのように書いてあるかと、いう読みをすると…。
さきほどの、標高が上がると大気は薄くなり、沸点は下がると、いう現象を描写する場面を推したいです。ファンタジーらしい用語だけを使って、読者に理解できるように、現象を描写しています。同じことが女王蜂の比喩(121頁)にも言えるでしょう。なお、同じくライバーが書いた中編「影の船」では、視点人物の状態からして妥当な用語だけを使った情景描写が多々あります。
目線を変えた話をすると、主人公二名と悪党二人組(どっちがどっちかはさておき)が、***をきっかけに宝探しと、いう点では、(執筆順でみて)シリーズ第2作の「森の中の宝石」と同じです。
とはいえ「星々の船」は「森の中の宝石」と同じかそれ以上に、重厚かつ軽妙で引き込まれます。とにかく素晴らしい。
悪党たちがつれている人足の正体は?
登場するヒロインの数は?
という問いを立てたとき、著者の技巧に敬服するしかありませんでした。
書誌情報
フリッツ・ライバー著 浅倉久志訳「星々の舟」(『妖魔と二剣士』2005、東京創元社、所収)
フリッツ・ライバー著 浅倉久志訳「森の中の宝石」(『死神と二剣士』2004、東京創元社、所収)
フリッツ・ライバー著 浅倉久志訳「影の船」(『猫は宇宙で丸くなる 猫SF傑作選』2017、竹書房、所収)
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