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妊娠する性、しない性
「出産を条件に奨学金の返済額を減免するというのは、奨学金利用当事者の自分には希望が持てる話だ」
というようなコメントが届いた。
コメントした方はプロフィールなど拝見したところどう見ても男性だった。
はっきり言って非常に不快だった。
当該コメントはすでに削除させてもらっている。
妊娠出産するのは女だ。
腹がふくらむのも、悪阻をふくめた心身の不調に苦しむのも、死ぬ思いをして子どもを産み落とすのも、女だけだ。
日本における妊産婦の死亡率は低いが、母子ともに絶対無事に生まれてくるとはかぎらない。
妊娠出産を神聖化しようとはまったく思わないが、人体の構造上非常に負担の大きな出来事であり、しかもその負担は女性にのみのしかかってくる。
借金返済を軽くするために子どもをもうける行為や、それを後押しする政治的提案の一切を、わたしは肯定できない。
そういった制度に「希望が持てる」と発言する男性など、端的に言って軽蔑する。
「奨学金は男女ともに利用しているのだから、返済額の減免で男女差が発生するのはおかしい」
「出産を条件に返済額を減免するというなら、子どもをもうけた男女両方が減免されるべきだ」
という発言もTwitterで確認した。
それらの意見には、妊娠出産にかかる具体的な心身の負担や、その後の子育てという点があまりに無視されている。
産むほうの性だけが得をするのは男性差別だという者がいるが、そもそも「借金を軽くしてほしかったら子どもを産め」と迫ることがおかしい。
高等教育を受けるための奨学金が「借金」である社会がおかしいというのに、さらにその返済を軽くしてほしければ生殖の自由を差し出せとのたまうなど、いかにもカルト的で、独裁的だ。
少しでも生活の金銭的負担を軽くしたいというのは、市民の当たり前の期待だ。
それに対して提案する内容が「じゃあ、子どもを産んでくれ」というのは、国政を担う者がすることではない。
それに乗っかって、自分が死ぬ思いをするわけでもないのに「希望が持てる」などと軽々しく発言するような男性がいる国で、女性が安心して子どもを産み育てることはますます難しくなるのではないだろうか。
参考:公益社団法人日本産婦人科医会
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