ものごとの順序
今日の夜ごはんはナポリタンだった。
たまに無性に食べたくなる、あのケチャップ味。
太めの麺を時間いっぱい柔らかめに茹で、ケチャップはパスタと和える前にじっくり炒めておくのが、旨味とコクのあるナポリタンに仕上げるコツだ。
最後にパスタとソースを炒め合わせる時、ほんの小さじ半分くらいの砂糖を入れると、味に深みが増す。
ナポリタンに入れるための具材はなんでもよくて、わたしはいつも大体ソーセージとタマネギだ。あとは、あればピーマンとかしめじ。
問題は、ケチャップと具材をよく炒めることだ。
具材だけ炒めたところにパスタを入れて、それからケチャップを入れたのでは、仕上がりの味はまるで違ってしまう。
トマトの酸味が残るし、甘味と旨味が出きらず、物足りない味になる。
わずかにこんがりする程度にケチャップに火を入れてから、すかさずパスタを加えて炒め合わせるのが重要なのだ。
一番頃合いのよい順序というのが、何事にもあるらしい。
今日の昼間、今後の就労の件で役所に面談に行き、その話をした。
「柊さんが無理なく、よりベター、もっと言えばベストな形で、生活再建できるようにしましょう」
「それにはまず、普段の暮らしが当たり前に安全で、のびのびできてることが大事なんです」
それはずっと、この場所で生活保護を利用するようになって以来、ずっと言ってもらっていることだった。
働くことに戻らなければ。
国のお金で生かしてもらった恩返しをしなければ。
2年ものんびりしたのだから。
そうやって焦りそうになるたび、ケースワーカーや婦人相談の方がわたしを宥めすかして、基本に立ち返らせてくれる。
そんなことを今のわたしが考える必要はないのだ、と。
自分の心の手綱を握れていないことが情けなく感じもするが、別にそれはわたしに限った話ではないし、たった今それを学んでいるのだから、まあいいか、と思い直す。
それも多分、順序立ててやらねば学べないのだろう。
一足飛びには叶わないのだ。
順序が大事で、今はどの段階なのか。
ケチャップを入れる順番。
パスタを炒め合わせるタイミング。
生きるうえで優先するべき順番。
医療や就労を始めるタイミング。
ひとりでいたら、またしっちゃかめっちゃかになっていただろうなと思うと、ありがたさも、夕食のナポリタンの美味さもひとしおだ。
何事にも一番いいタイミングがあるのだと、何度でも教えてもらっている。
では、また。
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