ひとりじめの罪深いおいしさ
いつの間にか眠っていたようだ。
優しく乱暴に揺れるバスに揺られる。開いた本の同じ活字を何度も繰り返しなぞっていた。目が覚めたからこそ、寝ていたことに気付く。
ここはどこだろう。窓の外を見た。
オレンジが目に刺さった。
心臓が大きく動いた。
海に沈んでいく夕日が、何も成長しなかった今日を余儀なく切なく仕立て上げる。
きっと美味しい重たそうな雲はオレンジの綿菓子。
背景の空は青から黄色のグラデーションを真似したカクテル。
海は豆電球に照らされたコーヒーゼリー。
関係ないけど金平糖を久しくたべていないなあ。
あ、いちばんぼし。
にしても、どうして。
こんなにも美しいゆうやけを独り占めしてしまったのか。
ほんとうは、君にも見てほしかった。
同じ時間に、同じものを見つめて綺麗だねって言い合いたかった。
誰かと一緒に見たかった。
210508(Sat)
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