断るのが苦手な人へ伝えたいテクニック
断るのが苦手なんである。
誰かに「NO」ということが、私はとても難しい。
なので、ライターの仕事が次々と入ってくるようになって、どうしても断らないといけない状況になったときは、本当に苦痛だった。
せっかく依頼をしてくれた相手に申し訳ない気持ちもあったし、断って嫌われたくもなかった。それに、一度断ってしまうと印象が悪くなって、もう二度と次の依頼がないのではないかという恐怖があった(フリーランスは皆そうなのではないかと思う)。
断るより無理して受けた方が楽なので、断らずに受けた。受け続けた結果、仕事を抱えすぎて体調を崩し肺炎になった。入院もした。その後も年に1回肺炎になるのが数年続いた。それくらい断ることが苦手だった。
※そんな恐ろしいくらい勝手に仕事が入ってくるようになった方法は、先日公開した有料noteに書いています(宣伝)
それほど断ることが苦手だった私が、断れるようになったのは、京都風のやり方を身に付けたからではないかと思う。
京都人は、なんせ断らない。断らずして断る。
意味が分からないかもしれないが、そういう高等テクニックを京都人は使っている。そんなの一体どうやってやるの?というのが具体的に書いてあるのが、この本。
県外の人に、「京都に住んでいる」と言うと、「京都人、こわくない?」とまず聞かれる。京都の人ってイケズなんでしょう?と。
私は京都に住むようになってもう27年になるが、京都人のあからさまなイケズには、まだ出会ったことがない。
いや、正確には私が気付いていないだけで、本当のイケズとは、イケズをされたと、相手に気付かせないものなんじゃないかなぁと思う。
よそさんである私ごときでは、その場では、なかなか気が付けない。あとあと、なんかちょっと違和感あるなと振り返ってみるに、もしかして、あれがイケズだったのかもしれないと気付く。
そういうもの、な気がしている。
京都人はあからさまに断らないし、
相手に決してイヤな印象を残さない。
そういう京都人っぽい表現が私はすごく好きで、そんな例に出合う度、心にメモをしてきた。
たとえば、自分に子どもがいて、毎日一生懸命に家でピアノの練習をしていたとする。あるとき近所の人にこう言われる。「お子さん、ピアノ上手にならはったなぁ」と。
京都では、何と答えるのが正解か。
私ならきっと「ありがとうございます」とでも答えてしまうと思うけれど、それは間違いで、「いつもピアノの音がうるさくて、申し訳ありません」と謝るのが正解。
近所の人にまで上手になったと分かるということは、 その人の家までピアノの音が聞こえているということ。つまり暗に、「うるさいなあ」と言われているのです。
まるで手の込んだ引っかけ問題のようで、私は普通に引っかかる!
遠回しすぎて全くもってその嫌味に私は気が付かないが、生粋の京都人である夫に言わせると、こんなのはすぐに分かるボーナス問題のレベルなのだそう。
なぜこうした言い方になったのか。本書では、京都と江戸の歴史から紐解いていくところもよかったし、こんな困ったときには、こういう風に言うといいですよという具体例がたくさん載っているのも良かった。
嫌な人、苦手な人に対して言いたいことを言って打ち負かす。論破するほうがよっぽどスッキリすると思うかもしれないけれど、時にそうはいかない関係性がある。
そんなとき多いに活用できるのが、この京都流の伝え方なのである。
あいまいにしておくことで、スパッと関係性が切られることはない。
断らないから角が立たない。
なんせ断るというのはエネルギーがいる。面倒くさい。しかも断ることで、嫌われたくはない。いい印象を持ったまま、引き続きお付き合いしたいというとき、この京都人的、断る方法はとてもよい。
たとえば日常でよく使われるのが、「行けたら行くわ〜!」というセリフ。イベントや飲み会などの誘いに対して使われる。
私は最初、本当に来れたら来るんだと思っていた。今はまだ予定がはっきりしないから分からないけど、予定が分かって行けるとなったら、来るもんだと思っていた。だから、あとから、あの誘いはどう?行けそう?と何度も確認したりしていた。
が、違う。
これを言った京都人は決して来ない。
「行けない」と言わない(角が立つし、印象が悪くなるから)。でも、行かなかったとしても、行けたら行くと言ったのだからウソにはならない。最高にうまい返事だなと思う。
今では、これを言われたら私の脳内では自動的に「行かない」に変換される。だから、たまにこのセリフを言った当人が現れたとき、「え、何で来たん?」と思うくらいに京都には馴染んでいる。
本には、こういう賢く面白い、いますぐ使えるフレーズがたくさん載っている。
仕事で、日常で、賢くNOを伝える具体例は、いますぐ取り入れられてとても勉強になるし、京都の文化を知る読み物としてもとても面白い。
誰かに話したくなる小ネタが盛りだくさんで、私もこうして熱量高く書評コラムを書いたりしている。
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